美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ39

「うおおおおおおおお!!」


 魔力を通した剣先が赤い光をまとって外殻に振り下ろされる。何物も阻むことは出来ないといわれる魔剣の一撃。だが――


「何!?」


 ――甲高い音と共に剣はその硬い外殻に弾かれた。赤く光る眼の一つがこちらを捕える。飛行ユニットを操作して緊急離脱で難を逃れる。どうやらこいつらは蜘蛛のような見た目をしてはいるが糸的な物は出さないらしい。今の所はその巨体を生かした体当たりと、牙を使った捕食攻撃しかしてこない。だが妙に思う事もある。大体は緩慢な動作なんだが、時折とても俊敏に動く時がある。まあこんな化け物が何を考えてるかなんて計り知れようもないが、何か理由があるのか? 


 だが今はそれどころではない。なにせこちらの切り札が簡単に防がれたんだ。


「隊長! 魔剣も銃も効きません!!」


 どこから入る声も同じことを言っている。だが効かなかったからと言って簡単にファイラルの奴らに譲る事は出来ない。我らには国防を担う義務と責務があるのだ。このまま全ての手柄をファイラルに持っていかれては王家の威信が揺らぐ。だからこそ、われらには実験段階の新造魔剣が与えられたのだ。


「ラーゼ様はご無事でしょうか。我らも救出に参加した方がいいのでは?」


 部下の一人がそんな事を言う。確かにこちらでも蜘蛛の一匹が彼女の乗った籠を攫ったのは確認してる。ラーゼ殿を救出したという栄誉は確かに捨てがたいが、我らはタイミング悪くこの蜘蛛共を引き受けてしまった。あと数舜、蜘蛛の動きが早ければ勢いに任せて我らが追えたが……我らよりもファイラルの奴らの方が動きが早く、結果的にこの蜘蛛共の相手を任されてしまった。ここでこいつらを倒さずに追いかければ、何を言われるか分かったものではない。


 だから選択肢は一つだ。


「いや、我らはこの二体の蜘蛛を速やかに殲滅。そしてラーゼ殿の救出に参加する!」


 それが最善だ。問題は、我らの攻撃が通らない事だ。そう思ってると、体を光が包み込む。とても暖かく、そして穏やかになる光だ。疲労も幾分か和らいだ? 下を見るとそこにはキララ嬢の姿が見えた。どうやら彼女の支援魔法の様だ。彼女の噂はよく聞く。魔道の申し子。慈愛の聖女、奇跡をもたらす女神……彼女が支援してくれるのなら、多少の無茶をやってもどうにかなるだろう。


「一部隊で一匹を引きつけろ。残りの部隊で手早く一匹を片付ける! 第一小隊は抜刀! 注ぎ込めるだけ魔力を魔剣へ注げ! 残りは銃で奴の眼を狙え!! 怯んで奴の口が開いた所へ突貫する!!」


 キララ嬢の聞き及ぶ奇跡の力なら、たとえ致命傷を受けたとしてもどうにかなるはずだ。恐怖を勇気に変え、我らは行く! お国の為に!!


「「「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

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