美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ24

「私には責任があるみたいなの」


 二人を招きいれて、部屋に備え付けられてるオシャレなテーブルに人数分の紅茶が用意され、それを一口啜って、そして私はそう口にした。まさにそれは意を決して……って感じだったんだけど、何やら亜子とキララの反応が芳しくない。


「「はあ」」


 二人ともそんな声を出してそして表情は「何を今更?」とか語ってるように見える。


「何言ってるのよ今更」


 ほらね。亜子が口に出したセリフはまさに私が表情から読み取った物そのままだ。凄くない私? まあ私の凄さなんて今更だけどさ……二人の反応が気に入らないよね。


「なによそれ?」


 私はふくれっ面してそういった。すると亜子もキララも互いに視線を交差させてため息を吐く。さっきまでそんな仲良くなかったでしょ。なんなのよあんた達。


「ラーゼは立場的に偉いんだから責任があるのは当然よ」
「ラーゼ、大きな力にはそういう物がついてくるんだよ?」


 なんだろう。亜子はまだ許せるけど、なんかキララに哀れんだ目でいわれるとそこはかとなくムカつく。なのでキララのティーカップを奪い取り中身を飲み干してやった。「何すんのよ!?」とか言われたけど気にしない。そこに控えてるメイドの子が既に入れなおしてるしね。この行為に何の意味があったのか? ただの私の癇癪だ。


「私は責任なんて知りたくもない。楽して楽しく生きたいんだもん」
「生きるってそんな簡単じゃない」
「ラーゼは甘いのよ」


 二人とも全然私の考えに共感してくれないじゃん。何故だ? キララはまあ、境遇を考えれば仕方ない。案外壮絶な人生歩んでるしね。けど亜子は元は平和な世界の住人じゃん。確かに既にほぼマナが染まり切ってるからこっちの考えになってるのかもだけど、向こうの記憶はちゃんと保管して時々浸ってる筈。なら私のこの願望だってわかりえる筈なのに。


「そ、それは凡人の領域ではそうでしょうね。でも私クラスになると面倒事は全て他の奴がやってくれるようになるもん」
「本当にそうなら、こんな急いで約束の地へなんか行かなかったんじゃない? ラーゼに乗ってる責任……それに気づいたからでしょ? それか気づかされた」
「う……」


 鋭い所をついてくる亜子。確かにそのうち行こうと思ってた約束の地だけど、そこまで明確に目標とかあった訳じゃない。こんな強行軍みたいにしてるのは一重に亜子の言う通り……


「ラーゼ、私はあんたから力を貰って色んな人を救ったよ。それは私の為でもあったけど、今では私が人種の安心を与えられる存在であれたらいいなって思ってる。それは沢山の人達に触れ合って、求められて、そしてそんな期待に応えられたから思えることだよ。ラーゼにはないの?」


 キララがなんかまともな事を言い出した。そんな事思ってたのか。変な野心でもあるのかな? とか思ってたけど、案外ちゃんと成長してたみたい。びっくりだよ。そしてそんなキララに続いて亜子も言う。


「私も今は頼られる立場だよ。こんなの向こうの世界じゃ想像できなかった。逃げ場なんかなかったけど、今は私、満足してる。大変だけど、生きてるって思える。そして皆一生懸命生きてる。それを感じれる。だからそんなこの世界の人達を守るって今なら心の底から思える。ラーゼは沢山の人に慕われてるでしょ? そういう気持ちない? そしたらきっと自然に自分の責任が受け入れられるよ」


 何々? 二人して何なの? なんで私が説得されるみたいな立場になってるの? 二人とも知らない間にすっかり成長しちゃったんだね。なんか遠くに行っちゃった気がするよ。まあ元々そんな近くもなかったかな? とりあえず二人の意見を参考にちょっと考える。二人が言いたい事、分からない事はないよ。大切な人や場所は確かにある。けど……


「私は……私に与えられるものって全部当然だと思ってるかな? だから私に向けられる心も物も当たり前過ぎて、責任だなんておもえない。だってそれは私にとって当然だもん。世界は『私』の為にある。そうでしょ?」


 うん、やっぱりこれだね。けど何故か二人は声を発せずに目をむいてた。いやいや、分かってたでしょ? 

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く