美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ15

ぴぴぴ……ぴぴぴ……


『マスター。マスター起きてください』
「う……ん」


 私は機械的な抑揚のない声で目を覚ます。眠かったのは最初の数秒だけ。私は直ぐに頭を冴えらせて映される画面を見る。けどそこはまだ空みたいだった。


(予定の場所じゃない? もしかして予定外の敵?)


 そう思ってマナ反応のレーダーを見るけど、別段探知内に敵の反応はない。まあ最近はこのレーダーもそこまであてにはできなくなってきたけど……なんせ全然違うマナの敵の現れたからね。私はそう思いつつ空を見る。底には三つの星がデカデカと鎮座してる。この星、昼でも夜でも変わらずにある。宇宙とかどうなってるんだろうか? 私が元居た世界では星は太陽を中心に回ってた。そして星自体も回ってた。だから昼と夜があった訳だけど……それはこっちでもいっしょだと思ってた。


 普通に昼と夜あるしね。そして季節によって星が変わるとも聞いてる。私は普段星を見ないからそこら辺が真実なのかはしらない。もう結構いるのにね。あんまり馴染みたくない……けど、もう結構馴染んでる。そもそもが既に三年くらいこっちにいるからね。私の記憶は……記憶は……むこうのこと、もう殆ど覚えてない。大雑把な事ならこうやってわかるというか、寧ろどうでもいいことが、ふと向こうと違うなって思う。メルさんが言っていたことは確かに起こってる。


 私の体内の向こうのマナはもう殆ど残ってない。残り時間が少なくなった時、私はガムシャラに約束の地を探した。けど……あそこはどんなレーダーにも映らなくて……空は広くて……衛星の事とかネジマキ博士に提案してみたけど……どうやらそれはむりだった。技術的な事もそうだけど……こっちでは星は神々の庭みたいな感じだった。だからそこを犯すなんて事は出来ないから、そもそも打ち上げ出来ないみたいな。あの時はなにバカな事を……なんて向こうの知識がある私は思ってた。


 けど……この空を見ると、それを信じる事も出来るかも。この世界は根本から前の世界とは違う。私は首にかけてるペンダントを握りしめる。すると向こうの光景が流れ込んでくる。これが私が出来た事。三年経っても
向こうの事を完全に忘れなくする術。私の向こうの記憶はこの中に入ってる。こうやって切り離して保護してるから、私はまだこっちの世界のマナに染まり切ってはない。私はとりあえず感知範囲を広げてみる。コクピットで色々と操作して現状把握。


 するとちょっと遠くに戦いみたいな物が見えた。


「あれ?」
『いえ、ただメッセージが届きましたので。ラーゼ様から至急との事です』
「そっち? こっちも忙しいってあいつもわかってるでしょうに何なのよ」


 アイツ、自分の興味ない事にはそこまで乗り気じゃないから、約束の地の捜索の時からちょっと怒ってるんだよね。協力はしてくれたけど、あいつ自身が動いたわけでもないし……感謝はしてる。けど、向こうの事を共有できる唯一の人間なのにそういうのあいつ全然共有してくれなかったしね。


『読み上げますか?』
「お願い」


 一応あいつは、立場が上だし……指揮系統外の存在だといってもあいつだけは特別だ。無視はできない。実質、この国を今支えてるのはあいつのファイラル領だから、王様よりも権力あるといっていい。だからいくら英雄とか呼ばれてても無視なんて無理。それにあいつから連絡来るなんて数か月ぶりだ。何かあるかも……


(でも前に来た連絡はアレだったなぁー)
『アイドルやろうよ亜子!!』


 その時の通信は速攻で切ったよ。また同じような……いや、すでにあいつアイドルやってるから、それはない……とおもいたい。そんな私の懸念を無視してゼロは連絡を読み上げる。


『亜子、約束の地に行くわよ。ついてきたかったらファイラルに来なさい』
「はいはい……ってえええ!? っつ!!」


 ガゴン――とコクピット内に鈍い音が響いた。思わず立って頭ぶつけた音だ。だって……だって……なに今更……しかもそんな気軽に言っちゃってくれてるのよ!!



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