美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ10

「そう、アレはお前から試練を与えられてからの事だ」


 誰が試練だ。なんかその試練をクリアしたら私と結ばれるみたいな感じで言ってるけど、そんな事はないからね。そもそも試練でもなんでもないから。仕事だから。いや、ケジメ? こいつは利用されてただけとはいえ、そもそもがそんな状況に陥って私を危機にさらしたって事が問題だからね。だからこそをそれを償う為の処置がこれだったわけだ。なのでハッキリ言って今評価はようやくゼロだからね。マイナスをゼロにする為の行いがこの仕事だった訳だから、ようやく評価ゼロで好感度ゼロだよ。


「俺は振られた仕事はきっちりとこなす男だ。俺は自分の記憶を頼りに奴らと共にした道をたどった訳だ」


 ふーん、案外まともな事してるんだって思った。けど、こいつの記憶……ね。大丈夫だったのか心配だ。けど一応こうやってアジトの場所は見つけた訳で、なら頼りにはなったって事かな。


「まあだが、俺もそんなに奴らと関わってた訳じゃない。といか、奴らの術の影響かなんだか記憶が曖昧だったからな。なかなかに思い出すのも苦労したぜ。ほら、俺って後ろを振り返らない質だからな」


 それはバカって事かな? 確かにその通りだけど……よくわかった。こいつのおかげでシャグリランを見つけれた訳じゃないって事がね。多分、他の皆が優秀だったんだろう。


「俺の記憶と、こいつらの懸命な捜索で、いくつかのアジトを発見した訳だ。そしてそこで発見した情報でシャグリランのさらなる痕跡を辿る事ができた。そうやって領を跨って捜索していったんだ」
「案外順調じゃない」


 流石私の部下たちは優秀である。痕跡とか言ってもそんな簡単じゃないと思うけど、そこをちゃんと出来るってのが流石だよね。多分、サイオスの言葉以上に苦労してるんだろうけど、こいつはバカだからトントンといったと思ってそう。


「順調という程じゃない。山賊にあったり、魔物に襲われたり、それに違うマナの影響を受けた奴もいた。まあ全て撃退したがな」


 それは撃退したじゃなく、せざるを得なかったって事じゃないかな? 多分そこでトリップしてる奴とかは極力戦闘とか避けようとしてたと思う。だって秘密裏に調査を命じてた筈だしね。あんまり目立つ様な事はしないはず。じゃあなぜ、そんな戦闘を立て続けにやらなきゃいけなくなったか……わたしはその原因と思われる奴にジト目を向ける。


「よせ、なに怪我など大したことない。お前の為だからな」


 ダメだこいつ。私の非難の目を明後日の方向に解釈してるよ。


「てか違うマナの魔物って……領内にそんな直ぐに入り込んで奴が居たの?」
「ああ、だがアレは入り込んでた訳ではないだろう。多分最初の放出の時、影響を受けた動物が魔物かしたものだったと思う」
「まあ、それなら結果的にはよかったのかな」


 こいつらが倒してなかったら、多分近くの街か村が襲われてただろうしね。今は私の力の影響下ならそんな事はあり得ないけど、あの星が落ちてくるまではマナを特に意識何てしてなかったからね。今は意識して多少マナの濃度を挙げてるから、他のマナに浸食される事はない。


「そして俺たちはアスコット領に辿り着いた。そしてその街の外れにある森で魔力によって隠された建物を見つけた。だがこれを発見できたのは俺がマナを感じれたからだ。人種には無理だったろう」


 そこ、強調する必要ある? なんかほめてほめてと期待する犬みたいな仕草はやめろ。ほめないから。


「で、その中に入った時には既に死体はここにあるだけだったと」
「そういう事だ。勿論くまなく探した……だがついぞ見つける事はできなかった」


 魂の抜けた肉体が勝手に動く……そんなことがあるのか? それともやっぱりその中には何かが? そもそももしも本人が戻ったとしたら、ここの死体を放ってはいかないよね。それなら……いや、だれかが持ち去った説もあるよね。


「とりあえずこの事は保留ね。これでとりあえずあんたの罪はなかったことにしたげるから、冒険者にでも戻りなさい」
「いやだ! 俺は君の傍に――」
「間に合ってるから」


 迫ってくるサイオスを私はそういって交わす。とりあえずシャグリラン達の事は後でもいいでしょ。消えた肉体は気になるけど、直ぐ何かあるって訳でもないでしょ。なのでサイオスは用済みである。


「俺は役に立つ! 必ずだ」
「迷惑な事のほうが多いもん。必要な時だけ呼ぶわよ。だからそれまでは私の傍に来ないで」


 こいつが近くにいたらストレスになるんだもん。なのでサイオスはこれで放逐しないとね。そもそもサイオスの上位互換みたいな存在いるし……なのでバイバイ。私は復活したなかなか優秀なその人に命じてサイオスに退場願った。最後まで煩かったけど、これは決定事項。私は横たわるってるシャグリラン達の遺体を眺める。一人になった所で、私はこの部屋にマナを溢れさせる。すると、白い光が集まって、それが人の形になっていく。


「さて、あの時は碌に話も出来なかったし、少しお話しましょうか?」


 私はシャグリラン達の魂に向かってそういうよ。



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