美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ1

「集まったか……」


 薄暗い部屋にはこのファイラルの要となる者たちが集まってる。軍需から内政、はたまた研究機関の重要な者達だ。そのメンツは実に色々な姿の者たちがいる。それはひとえに、この領の特色と言える。人種の国の一つの領であるファイラル。だが、ここは……ここだけは王政の威光など届かない場所だからこそ、こんな色んな種達か交われる。それもこれもすべてはここの主、ラーゼによるものだ。彼女に魅せられな者などいない。彼女を一度でも見れば魅せられる。
 掴まれる。そしてここに集まってるのは特にそんな彼女の虜になった者たちだ。彼女無しでは既に生きられないといっていい。だからこそ裏切るとか、そんな事はあり得ない。まあ、彼女の寵愛を出し抜こうと考えてる奴らはいるだろうが……だが、果たしてそんなことができるものが居るかどうか。


 ここには上位に連なる種の者もいる。だがその者でもラーゼを物にするどころか、虜にされるくらいだ。


「皆さん、お集り頂きありがとうございます」


 そう言って視界を始めるハゲで疲れが見える人種の男は更に冷や汗で、その疲れが酷くみえる。だが、誰もそれを気にした風ではない。なぜなら彼はいつもそうだからだ。苦労性だからこそ、あんな頭皮になってしまったのだろう。いつも口癖で「私がなぜ、こんな役職に……」とつぶやいてる。そんな彼は自分で書類を回して、更には何やら机のボタンを操作して、机の中央に映像を映し出す。そして始まるのは色々と難しい話だ。それはそうだろう。だってここに集まってるのはいわゆる、この領の生末を決める面々。本当ならラーゼもいるべきだが、彼女は細々とした話は好かない。


 だいたいここで決まった事を話して、了承を得る感じだ。議題は当然、これからの領の行方。


「いっそ、王など排して、我らが主を女王とすべきではないか? 老齢の爺についていくよりも、美少女についてく行く方が皆いいだろう」


 そんな事をいう奴がいる。そして誰もがうんうん、と頷いてる。けどそれはハゲがやんわりと否定する。ラーゼはそんな事は別に望んではないからだ。近づいた三つの星の影響で地上は阿鼻叫喚となってる。交じり合ったマナに適応できなかった種は自我をなくし、ただの魔物になったり、更に力を得た種もいる。人種は多分、あの三つの星から流れ出るマナに耐える事は出来なかっただろう。けど、ここにはラーゼが、そしてクリスタルウッドがあった。


 この星の純なるマナの根源となるクリスタルウッドがこの人種の地には三つの星のマナを入れない様にしてるから、人種は無事で居られてる。


「問題はどこで攻勢をかけるべきか……」


 今はこの地に迫ってくる敵を打ち払う事に専念してるが、いつまでもこのままではいられない。それにファイラルはいいが、他の場所はそう持たない。けど、そんないい案が思い浮かべ筈もなし。なにせ最終的にはあの三つの星をどうにかすべきとなるんだ。


「今日もラーゼ様はライブか?」


 鋭い視線がハゲにささる。それにこくりと頷く。彼女達は文字通りの希望だ。人々の不安はラーゼが発案したアイドルの存在によってうやむやに出来てる。


「良いことだが、少し我々への相手が減ってるのが……悔しい。なんとかならんのか?」
「そういわれましても……」


 ここに集まってる奴らはラーゼなしではいきてけない。けど、ラーゼは最近はアイドル活動で忙しくしてて、夜の頻度が減ってて不満な様子。そんな声が口々にでる。そんな彼らに困るハゲ。


「お主はまだ知らぬから耐えられる。あの方の体を……そしてあの美を蹂躙できる至福を」


 恍惚という一人の言葉に少しばかり眉根をしかめるハゲ。だが、その時反対側に居る蛇が口を開く。


「確かにあの喜びは何物にも代えがたい。だが悲しくある」
「どうい事だ?」
「ラーゼは結局誰の者にもならないと、一夜経つと……いいえ、つぎの機会に悟りませんか?」


 蛇はそんな事を皆を見て言う。


「彼女は美しい。それはもうこの世に起きた奇跡というほかないくらいに。私達は一夜だけ、そんな彼女から許しを貰って彼女を汚す。ですが、彼女が汚れることなどないのです。私達が貫いた膜も何もかも、一夜経つと元通り。それは結局、彼女は誰の者にもならないと、言われてるみたいではないですか」


 見方によっては何回でも新鮮な体を楽しめる……ということだが、一時の征服感は次の悔しさに代わるらしい。そして更に蛇は続ける。


「もしも、もしも、本当の意味で汚れたら、その時……わたしたちはどうすべきなのか……考えてた方がいいのかもしれません」


 そんな蛇の言葉で今回の会議は終わった。皆が、それを成すのは自分だと、心で思いながら。いや一人だけ、違う。ハゲだけは、別の事を考えてた。


「ラーゼ……様」



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