美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ161

「じゃあ、準備はいいわね?」


 私は船の甲板へと続く階段の下で後ろに控えるプリムローズの皆をみる。みんなおめかしして準備は万端。流石私の選んだ子達。皆可愛い。


「勿論です」
「大丈夫、行けます!」
「うん!」
「準備~ばんた~んです~」


 皆ちゃんと気合入ってるね。コランとシシの手には例のマイクがある。これが何を起こすのか……参事か奇跡か……それとももっとべつの何かなのか。一応何が起きても対処……できるかはわからないけど、人員は配置してる。私はちらっと犬達に視線を送る。彼らはコクっと頷くよ。彼らは今回のライブを楽しむ余裕はないかもしれない。けどしょうがないよね。だってマネージャーなんだから。


「やるわよ。今回も最高で!」
「全力で!」
「全快で!」
「輝く!」
「ステージを~!」


 私が向けたマイクの先端に皆のマイクが小突かれる。そして一斉に上にあげて締めだ。


「「「皆の心へ!!」」」


 私達は階段を掛ける。迎える甲板は煙で満たされてた。私達はそこを進み、そして派手な花火と共に、一斉に煙が晴れる。そしてかかる音楽と共に歌いだす。空中に浮かぶ文字がサンライズの青からプリムローズのピンクへと一斉に変わってく。そして最初から観客のボルテージは最高潮へと達するよ。


 変化は割と早く始まった。コランとシシが持つマイクは普通に使えてたけど、次第に魔力を放ち始める。歌に、曲に、そして雰囲気に呼応するようにその輝きは強くなる。そして何やら空がうねりだす。それは空の星が近づいてるって事だった。落ちてきそうな程に星が近く……そしてその星達の中で特にひと際輝く三つの星。それからは強大な……とても強大なマナが感じれる。けど私達は負けないよ。歌い続ける。観客たちも演出か何かだと思ってそう。


 この場できっと私だけに聞こえる声が届く。


『隔たりを超え――』
『世界を超え――』
『響く歌――』
『『『始まりの鐘は――歌と成ったか』』』


 三つの星からあふれ出すマナがこの場に……いいや、世界へと満ちていく。私のクリスタルウッドを通さずにそのマナは世界を包む。これは……こんなことができるのは……序列トップスリーって事? 彼らが目覚め、この下々の世界と交わり……そして始まるのかもしれない。終末大戦が。その鐘を……歌で響かせた。もしかしたら私達のこの歌は、本当に世界中の種が聞いてるのかもしれない。


(上等! わくわくしてくるよ!)


 私はそう思って更に気合を入れて踊って歌う。それこそこの世界のすべての種に宣戦布告する気持ちで――だ! そんな私の気合に気づいたのか、皆一生懸命ついてくるよ。落ちる程に近い星々からマナの光が降ってくる。それは白くはなく。トップスリーの色を持ってる。けど今は、それは良い演出。この地を満たさせることはしないけど、受け取っておくよ。私は地面からこの地上のマナを一斉に放出する。そして生まれる幻想的な光景。夢の様な開戦のライブは明日から始まる地獄を生き抜く希望。


 そう……なることになった。



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