美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ152

「「きゃあああああああああ」」


 黒い剣線が私達が飛んだ後方を走ってく。そしてその跡はとても残酷に穿ってる。こんなのまともに食らったら私達はきっとぐっちゃぐちゃになるだろう。けどこんなのはいつまでも続かない。体力には自信がある方だけど、今日は色んな事があったせいで既にかなり足に来てる。それに精神的にも……ね。けど、ここで私が諦めたら、コランまで終わる。今は私とコラン、それぞれが別々に動いてなんとかかく乱? 出来てるみたいだけど、一人に集中されるとどうしようもないのは体感済み。


「魔法が使えればまだ粘れるんだけどな……」


 私はそう思って手首にある紋章を見る。わずかにだけど、力は感じる。けど魔法自体が発動してくれない。この空間のせいなのかもしれない。ラーゼ様から供給されてるマナが足りないのかも。そんな事を考えてると、コランが首根っこを掴まれて黒鎧に持ち上げられる。


「かはっ……」
「なぜ……戦わない? 届きたくないのか? この我に」


 この黒鎧がなにを言ってるのか、私達にはさっぱりだ。さっきから「戦え、剣になれ」とか訳わからない事ばかりを言う。戦えはまだわかる。けど剣になれってなにそれ? 何かの比喩? ちょっと理解できない。てかそんな場合じゃない。このままだと、コランの細首がポキッとされてしまう。


「やめろ! コランを離せええええええ!!」


 私はそういって黒鎧の後方からタックルをかます。けどダメージを受けたのはこちらの方だった。こいつ硬い。いや、見た目的にそうだけど!? 私の全体重をかけたタックルに一切よろめきもしない。私はそれなら……とたくさん刺さってる剣の一本を引き抜こうと……するけど抜けやしない!!


「なんで……なんでよ!!」
「あ……し……シシ……ちゃん」
「本当に……このまま死ぬ気か? まさか……まだ転身も出来ぬ者か? そんな者がここに……これる訳はなし。本当の力を見せてみろ!」


 更に掴んでない方の剣を掲げる黒鎧。首を絞めながらざっくりやる気? どんだけ容赦ないのよ!! それなのに、私にはどうすることも出来ない。


「やめ……て」


 とてもか細い声だった。けど次はあふれ出す気持ちがその大きさの分弾ける。


「やめろーーーーーー!!」


 その瞬間、力を込めて握ってた剣の感触がなくなった。そのせいで前につんのめった。


「けほっけほっシシちゃん」


 何故かコランが地面に落ちてる。何が起こったの? よくわからない。そう思ってると、黒鎧がこちらをみて「そのマナか」と呟いた。そしてその黒鎧の下にはさっき私が必死に引き抜こうとしてた剣がある。何がどうなってるのかわからない。すると今度は暗雲が立ち込めてる空の色が何やら変わる。青かったり赤ったりそれこそ虹色にだ。


「この試練に干渉をもたらすか……純然なマナの物よ」
「え? 私?」


 多分それは違うと思う。これはきっとラーゼ様だ。助けに来てくれてる。それを感じる。だったら……わけは分からないけど、まだ頑張れる。頑張ろう。そしていっぱい甘えるんだ。



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