美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ134

「幻影!」


 私はそういって自分達とは逆の方向へ走り抜ける自分たちの幻影を作り出す。そんな幻影に反応して、「いたぞー!!」という声が聞こえて、すぐそばをドタバタと大量の足音が駆けていく。気配消しをしてて獲物が目の前にいるとなれば、こちらが気づかれる心配はほぼない。だって意識の九割は前の方に向いてるからだ。けどそれがわかってても、怖いものは怖い訳で……さっきからずっと大丈夫って言い聞かせ続けてるよ。こんなの絶対に一人だと耐えられなかった。


 四人だから頑張れる。繋がれる手から勇気をもらえる気がする。


「上か……下か……」


 ミラが階段を見つめてそう呟く。私達の前には、下に続く螺旋階段と上に続く螺旋階段がある。転送陣はどっちにあるのか……どうせなら案内板でもあればよかったのに……どうやらそんな親切設計ではないようだ。どうやら、いまいる丁度間の空間が居住区的な所なのか、沢山の人達がいた。そして今いる場所が多分この建物の中心で、ここから上層下層となってるみたい。ここはちょっと広い場所で、なんかオシャレな感じだ。シャンデリアとかが空間を照らしてて、窓はステンドグラス。そして、何故か剣とか槍とか槌とかの武器が飾られてる。いや、実際ここだけじゃなく、色々と武器はみた。やけに物騒だなって思う。


 まあここにあるのは飾るようなのか、なんか華美だけど……でもこんなのでもないよりは……とかおもっちゃう。けど手を伸ばしかけたその手をフィリー姉さまに止められる。


「危ないよ~」
「でも……」
「使い慣れてない武器なんて、ない方がいいんだよ~。ね」


 ゆるい声色だった。けど、最後の「ね」の部分は有無を言わさない迫力があった。どうやらなにか感じ取ってるみたい? 私は武器を手にするのを諦めるよ。確かに、ここにあるのはどれも大きいし、扱えそうにないしね。最悪戦闘に鳴った時は……ミラに任せよう。攻撃系の魔法はミラしかないからね。


「上は、操舵室とかに繋がってるんだろうか?」
「じゃあ~下は倉庫とかが定番だよね~」
「転送陣はきっと重要な物ですよね? 重要な物は私なら、見つかりにくい下にする……かな?」


 コランが自分の考えを述べる。確かにそれはわかる。けど絶対にそうだとは限らないよね……偉い人たちって上が好きじゃん。それに神聖な場所とかも高い所にあるイメージがある。まあ転送陣がどんな物かわからないけどさ……どっちにも可能性はある。


「上と~下~、どっちも行くことは多分出来ないわ~」


 フィリー姉さまの言う通り、私達にはどっちかに行く時間しか多分ない。だからここで判断を誤ると、終わりだ。


「どう……する?」


 ミラがそう尋ねてくる。こういう時こそ、ミラがリーダーらしく率先して……といいたいけど、さすがにそれは酷だね。でもいつまでもここで悩んでるわけにはいかない。まだそこら中から、足音は聞こえる。少し前までは、こんなに慌ただしくなかった。けど、今はここにいる全員で私達を探してる感じだ。それだけ私達が重要なのか……こいつらは一体何をしようとしてるのか。気になるけど、それを探って逃げ出せなくなっては元も子もない。
 私は上と下へと続く階段を見て、口を開く。


「私はコランを信じる。この子結構持ってるしね」
「ほえ?」
「そうだな……少なくとも私よりは持ってる」
「ううん?」
「そうね~、コランちゃんが言うならって思えるものね~」
「えっえっ?」


 コランが何やらうろたえてるけど、私達は全員コランに責任押し付ける方針で行くことにしたようだ。いや、本当に信じてるけどね。私達の中で一番の幸運は絶対にコランだし、私達が選ぶよりは良いだろうって判断だ。そうと決まれば、善は急げ。私達は下へと続く螺旋階段を下りだす。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品