美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ118

 ガバッと私は起きる。そのさい私に回復魔法を掛けててくれてた冒険者の女の人と額がゴツンした。


「つうう」


 そんな声を出して蹲ってる彼女に悪い事したな……と思って声を掛けようとしたら、凄い勢いで声を掛けられた。


「「「ラーゼ様!!」」


 それは犬達だった。生きてたんだ。こいつら戦う力ないから真っ先に死んだかと……てかこいつらがいるって事は戻ってこれたみたい。私はとりあえず涙で汚い犬達を無視して自分の体を確認してみる。


(なんともないね。完璧に可愛い)


 傷なんて一つもない。犬達に結構傷があるみたいだけど……こいつらも頑張ったのかな? てかいつの間にか外にいる。けど、あの洞窟の場所から出た場所のよう。洞窟の入り口は瓦礫でふさがれてる。多分脱出したのちにあそこを塞いで時間稼ぎをしてたんだろう。任務は殲滅だしね。このまま帰ったら依頼は失敗だ。


「どんな状況?」
「行き成り倒れたんですから起きては――」


 そう言ってくる犬一は無視し立ち上がる。ついでに頭をぶつけた彼女に手を差し出した。すると彼女は顔が茹蛸の様になってた。女の子まで私にドキドキしちゃうからね。困った容姿だよ。そして彼女にありがとう……とみあげる様にいうと、もう足元もふらついて「どどぢょういちゃしまして!」とか噛み噛みながら言って離れていった。少しからかいすぎたか。彼女は貴重な回復魔法の使い手だ。戦闘では決して無くしてはならない戦力。


 けどまあ大丈夫でしょ。辺りを見回すと、皆さん結構怪我追ってる。私が気絶したことで私が掛けてた魔法とか解けちゃったのかな? それなら悪い事をした。


「ラーゼ!」
「サイオス……」


 そういえばこいつからあの子は出てきてたなと思い出す。するとサイオスは平伏して頭を地面にこすりつける。


「すまん! これは全て罠なんだ!!」
「そのようね」


 てかそういう事になるよね。あのシャグリラン達が仕掛けた罠と考える方が納得できるもん。アクワイヤの近くでは魔物はそんなに発生しない。けど行き成りの魔物の大量発生。それが私たちがいる時というのもタイミングいいしね。けど普通は私が出てくるなんて思わないよね。よく調べてたみたい。


「あんた、どこまで操られてた訳?」
「自分でもよくわからない。いつも通りだと俺は思ってた」
「じゃあ、あいつらに匿われてたのは覚えてたんだ」
「それっは……」


 サイオスの奴はどうやら自分から意図的に隠してたこともあるみたい。けど、計画の全てを知ってたとは思えない。だってこいつは私……というかラーゼを心酔してるし……あれ? まさかばれた? いきなり倒れたりしたし、そしたらこいつ私の顔見てるんじゃない?


「ねえ……私の顔……みた?」
「顔? いや、そいつらがお前を介抱したからな……俺はしんがりを務める事で罪滅ぼしをした」


 なるほど……グッジョブだ犬達。けどシャグリラン達が私を狙った事とか少し考えればわかりそうな……いや、サイオスの奴はバカだからね。そんなやり取りをしてると、場の空気がかわる。どうやらそろそろ洞窟に閉じ込めてた魔物達が出てくるみたいだ。確かにさっきからドカンドカンうるさい。


「後で、あんたには全部話して貰うわよ」
「ああ、約束する。ただし、ここから生きて帰れたら……な」


 洞窟を封じてた瓦礫の山が吹き飛ぶ。そこから出てくる大量のゴブライダー達。そして威圧を放ってゴブライダーキングがくる。こちらは負傷者多数だし、疲労も濃い。みんな結構絶望に染まってる。しょうがない。休んでた分、働いてあげよう。


「大丈夫、全員生きて帰るに決まってるじゃん」


 そう言って私は前に進み出る。既に私の体内からはマナが漏れ出してて淡い光を放ってる。魔法を使うコツ、少しはわかったからね。私は舌なめずりして、腕を振るう。それだけでよかった。



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