美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ114

「仕方ありませんな」


 そんな事をふと言う周りを取り囲んでる奴らの一人。そして何やら視線を交わし合ったかと思うと――自身の胸に手刀を突き刺した。


「え?」


 その光景に私は一瞬頭真っ白になるよ。だって……ちょっと決断早すぎませんかね? 私的にはもっとこう……悩んで苦悩する姿がみたかったといいますか……それだけだったといいますか……


(これって私が悪いのかな? 冗談でーす♪ なんて言ったら怒られるかな?)


 血を流してその場に倒れ伏す四人のシャグリラン達。三人は既にマナが帰ってる。助かる見込みはないだろう。凄いね、確実に一瞬で死ねる場所を突くなんて並大抵の奴じゃ出来ないよ。普通はほら……あんな風に少しは苦しむことになるものだ。だって自分で自分を殺すんだよ? そんな思いっきりなんてなかなかいけないでしょ。私は無理な自信がある。てかなんでこいつらいきなり死んだの? こいつらだけ死んでも意味ないでしょ? 


 だって私は他の全てシャグリランは大樹へと帰るといったはず。これじゃ全然足りないよね? 取り合えず、まだ息がある一人に駆け寄ってみる。


「なぜ、こんな事を!」


 ふふ、女優になれるかもしれない。今度、ステージで演技でもしてみようかな? ミュージカルとかいいかもしれない。けどあのノリにこの世界の人達はついてこれるだろうか? まあなんとかなるか。とか血まみれで苦しみつつある一人に声を掛けながら考える。


「とう……ぜんの……事です。我ら……は……貴女に……賭けた……我ら……の……種の……未来を……」
「だからって一人で……なんて……」


 なんとなくで言葉を合わせる。演技派な私は目に涙をうかべちゃったりして……スーパースターラーゼと呼んでくれて構わないよ。レッドカーペット……は、良く歩いてたや。


「大丈夫……です。真龍様の力……があれば……復興出来る。貴方さえ……いれば、我らが……滅びる事は……ありま……せ」


 そこまで言って彼もまたクリスタルウッドへと還っていった。この場で動くのは私だけ。あっけない最後だった。てか結局なにが何やらだし……私は涙をぬぐって直ぐに立ち上がる。別段本当に泣いてた訳でもないし、感傷もない。そもそもこいつら知らないし。私はこの体が眠ってた場所に腰を下ろして最後の奴の言葉を考える。


「こいつらがいきなり自分達を殺したのって……もしかしてシャグリランは既にこいつらだけだった? だってそうじゃないと、ゼルの力を得られる条件がクリア出来ないよね? ここにいる奴らだけがシャグリランの全てだからこそ、こいつらは自分たちを殺すことで、その条件を満たしたんだと思うんだよね」


 だって他にもシャグリランがいるのなら、ここでいきなり死ぬなんて事は普通しない。まあ、そんな条件飲めるか! ってならわかるよ。命を持って抗議するとかね。私には意味不明だけどさ。けどその線は最後の奴の言葉によって否定されてる。こいつらは、自分たちが死ぬことでこの体の持ち主がゼルの力を得られるとそう信じてた。つまりはここにいる……というか、今死んだ奴らプラスこの体の持ち主でシャグリランは全員だってことになる。


 数体しかいない種はいるらしいけど、それは種の中でも最上位に位置する種だけみたいだし、こいつらがそれに該当するとは到底思えないよね。そもそもそんな強くないとか言ってたし。数体しか存在しない種なんてのはもう規格外の強さだろうし、こいつらの訳がない。じゃあなんでシャグリランがこんな少数になったのか……けどそれも淘汰されたと考えれば納得できる。この世界は平和じゃない。


 沢山の種が覇権をめぐって争ってる。これまではそれほど激しくなかったみたいだけど、昔はそれこそすごかったらしいしね。そして長く停滞してた時代は終わりを告げようとしてる。それは世界規模でそうなんだ。動き出した世界中の種達はどんどんとその動きを活性化してる。沢山の種がぶつかってそして当然消えてく種もある。シャグリランもきっとそんな種の一つ。


「とりあえずここにはもう様はないかな? 血生臭い所は私に似合ってないしね」


 てな訳で帰る事にした。目覚めた時と同じように横になって、そして目を閉じる。そしてゼルに頼むと、意識が体から引きはがされる。そして再び、私は二人のいる約束の大地へと戻ってきた。


「ただいまー」


 そんな事を言いながら彼女の体から出てくる私。そしてそんな私を驚愕した目で見てくる彼女……


「つっ……一体何を?」


 厳しい顔でそういってくる彼女。いや、曖昧な存在だから表情はわからないけどね。なんとなくそう感じるだけだ。てかよく考えたら私も精神体の筈なのにはっきりしてるよね? なのに彼女は曖昧だ。この違いはなんなんだろう? もしかしたら向こうには私があんな風に見えてるのかな? まあそんな事はどうでもいいか。私は彼女を見つめて言ってあげる。


「ごめんなさい。貴方の仲間、死んじゃいました」
「…………は?」


 てへっと舌を可愛らしく出したのが冗談ぽかったかな? 彼女は言葉の意味を理解できないみたいだった。

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