美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ108

 戦闘が始まって既に十分くらいが経った。私は出入口の所で高みの見物。だって私が前に出てもなにもできないからね。まあ攻撃を引き受ける事は出来る。だって私の防御を抜ける攻撃なんてここの魔物たちは出来ないだろう。だからまあ……わたしが前に出て、攻撃を一手に引き受ければかなり楽にだろう。けどそんな事はやらない。死んでもヤダ。何故に私がそんな身を捧げないといけないのか。


 私は偉いんだよ。奉仕するのは私ではなく平民の方でしょ? 私は利益だけかっさらう偉い人なのだよ。とりあえず楽をしたい……なので何もしない。


(みんなーがんばれー私の為にー)


 と心の中だけで思う。一応私を囲むように犬達が配置してる。魔物がいる方へ犬一と犬次が、そして後方へ犬さんが一人。まあ後方に魔物はいない。だって私たちが踏破してきた道だしね。けどだからってどこから魔物は現れるかわからないから、一応ね。犬達には戦闘する力はない。けど私の為なら肉の壁になる覚悟はある。私の防御力なら護衛なんて不必要だが、こいつらがそれを望んでるなら
私には止める権利はない。


「うーん」


 私は唸る。それは戦況があまり芳しくないからだ。私の加護を与えてるとはいえ、数は向こうが多い。そして何やら魔物らしからぬ動き。つまりは連携をとってる。ゴブリンとかはそんな事をするとも聞く。ゴブライダーもそうなのかも。ゴブライダーが乗ってるから、ガンマジロ達も連携が出来るみたいな? 機動力も向こうがうえ。ゴブライダーが乗ってないガンマジロが回転しながら突っ込んできて、その突破力の隙からゴブライダーが攻撃を仕掛けてくるってのが奴らの連携だ。


 ガンマジロの回転を止めれる奴はこっちでは赤線くらいしかいない。だからガンマジロの突破力はかわすことを前提に動いてる。けどあれを止めないとこちらの連携が壊される。フォーメーションもばらされるし、いいことがない。更にそいつらよりも上のゴブライダーキングが二体……はっきりいってやばい。戦力不足感がある。ここアクワイヤの冒険者が予想よりも弱いのも計算外。いや、さっきの戦いではまだよかった。


 それは拮抗してたからだろう。けど強さとは肉体とか技術だけの事じゃない。心も勿論関係してる。よく言うじゃん、心技体と。アクワイヤの冒険者は数年前のあの事件も経験してないらしいし、この辺りはあまり魔物は出ないらしい。それはそうだよね。仕事が沢山あるのなら、もっと冒険者が居てギルドも栄えてる筈だ。てかそんな問題ばかりの地が観光地になりえる訳がない。だって皆、癒しを求めてきてるんだ。


 最初の調査の段階ではこれでもなんとかなるという読みだったんだけどね。けどどうやらそれは読み間違いだったみたい。敵は予想よりも強大だったんだ。けどまだ踏みとどまってる。そう思ってると何体かのゴブライダーがこっちに来た。冒険者たちの壁を抜けて迫るゴブライダー。犬一と犬次が震える足を前に出す。私の盾となる気だ。その身を持って。ぞれが仕事だし、まあ仕方ないかなとも思うけど、こいつらを失うとプリムローズが困る。


 しょうがない、やっばり私が引き付けるか。私は前にでる。そして突かれた槍をその身で受ける。私はビクともしない。そりゃそうだ。けど次々と私の周りにはゴブライダーが集まってきた。冒険者達はゴブライダーキングを止めるので精一杯のよう。どうにかしないといけない。サポート用のカードしか使ってなかったけど……攻撃用のカードも実はある。けど攻撃用のカードは有限なのだ。カードを介して直接魔法を放つ関係で、カードが耐えられないんだよね。


 けど、躊躇ってはいられないか。私はカードをいくつか発動させて炎や雷を打ち放つ。それで幾十のゴブライダーが沈む。けどまだまだいる。使ったカードは燃え尽きていく。犬達は私の足元で震えてる。まあしょうがない。そもそもが動くなって私は視線でいったからね。だって下手に勇敢さを発揮されたら魔法に当たるかもだし。次々と消えていくカードに倒れていく魔物ども。


(やばい……カードが尽きる)


 どうしようか悩む。けどそろそろ面倒になってきたね。冒険者の中にも被害者が出てる。それに日も傾きかける頃あいだ。あまり遅くなるとプリムローズの皆が心配する。


(終わらせるかな)


 直接力を使うと体が持たないけど、私は再生できる。それに今はゼルラグドールの力だけではない。この世界のマナが私の物だ。私はカードを戻し、右手を前に掲げる。ゴブライダーとかガンマジロが突撃してくるけど、見えない壁がそれを防ぐ。空気が変わり、私の周囲にマナの光が輝きだす。


「全員伏せて。まとめて吹き飛ばす!」


 何やら不穏な空気を感じた冒険者たちは一斉に地面に伏せる。そうしないのはサイオスだけ。なにしてるのよ? さっさっと伏せろ。すると何かサイオスの体が分かれた。いや、何かが出てきた? それが私の所に一瞬で来て、そして触れた。


『力の開放、これを待ってた』


 その瞬間、この地が真っ白い光に包まれる。



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