美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ107 

 報せの光が上がった。魔物たちの行動が止まったのだろう。あの光が上がった傍に魔物たちが大量にいるという事だ。あんなの上げて大丈夫かって? まあ何とかなるでしょ。いまは昼間でそこまで目立つって訳でもないしね。こっちはいつ合図が来るかと待ち構えて空を見てたからわかったのであって、周囲を照らすわけでもない灯りなら、たまたま上を見てないとわかりはしないだろう。なので心配はしてない。いや寧ろ……


(現場についたら行方不明とかになっててくれないかな?)


 仲間だから視界にいれば助けるし、目の前で死なれると目覚め悪いからなるべく手助けはしてる。けど、ほら……戦場では何が起きるかわからないからね。しょうがないって事はある。けどあいつとってもしぶとそうだからね。そもそもあいつなら一人で突っ込んでくれる――とかちょっと期待してるけどどうだろうね。流石にそこまでバカじゃない? でもあいつ自分が死ぬとか本気で思ってない感じがあるから、結構無謀な事をしそうなんだよね。


 それもよくも今まで一人でやってこれたねって感じで。今まではただの悪運で生き残ってきたのかと思ったけど、その自信の源は多分あの謎の力なんだろう。特殊な力はたまーに人種にも現れるらしい。けどそういう前例がある人は貴族とかに召したてられるみたいだから、記録には残ってるはずなんだよね。そこらへんは蛇やハゲが調べてくれたけど、サイオスに該当しそうな力を受け継ぐ家はなかった。


 突如強力な力に目覚めた? ありえなくはない。だって可能性はゼロじゃないからね。まあちょっと現実的ではないかなーとは思う。それなら後は……あれは人種ではない……のかもしれない。人種に見える他種族っているしね。私的にはその疑いが強くなってる。だからこそ、サイオスの事は何もわからないのかもしれないしね。


 そんな事を考えつつ楽して移動してサイオスが待ってた所まできた。勿論サイオスに見つかる前に籠から降りる。


「状況は?」


 サイオスは案外大人しくしてたみたい。ちょっと意外だね。まあ気になる事がないと言えばウソだけど……


「奴らは奥の洞窟に移動したみたいだ。少し覗いてみたが、かなり広い空洞に立てこもってる。迎え撃つつもりのようだぞ」


 何か策でもあるのかな? 魔物なのに? 魔物が策を使うってのも聞かないけど……でもこっちも討伐依頼を受けてきてるから、残党を残してさよならするわけにもいかないんだよね。けどわざわざ策があるような所に馬鹿正直に行くってのもね。洞窟なら生き埋めにでもすれば一網打尽じゃね? それか入り口を塞ぐとか?


「ねえ、本当に出入口はあそこだけ?」


 大きく口を開けた穴……そこには見張りとかはいない。まあ招き入れるつもりだろうし、それは当然か。だから実際に出入口が一つならあそこさえ潰せば外に出れなくなる。たくさんの魔物を相手にするよりも絶対にそっちの方が楽だよね。


「じゃああそこを潰してしまえば……」
「いやいやいや、魔物はかなりの怪力だぞ。それにゴブライダーの中でもデカい奴があの巨大ガンマジロに乗っているんだ。あのデカいののタックルなら、多少の瓦礫なんて吹き飛ばせる」
「ぐぬ……サイオスの癖にまともな事を……」


 確かにそれは一理ある。てかまだあの巨大ガンマジロいるの? 大きなマナを使えばあの洞窟を崩すことも可能だけど……わたしだけそんなことやるのもね。今、ここにいる魔術師だけじゃ、絶対に洞窟を崩す事なんかできない。と、なればやっばり最初のプランで行くしかないか。


「サイオス、とりあえずわかるだけの情報を吐きなさい。それを使って犬達が作戦を立てるから」
「よ、よし! 任せろ」


 そう言って胸をなでおろすサイオス。私はそんなサイオスを注視しながら、用意させたお茶をすする。皆は水とかだけど、私はお茶だよ。だってほら身分違うし。まあこのくらいならサイオスも気にしないだろう。いつもの私だし。私はサイオスを見つつ、後方を見る。ここに来る間に大きな魔物の遺体があった。それは巨大ガンマジロとデカいゴブライダーの物だ。あれは一体? あれはどう見ても戦闘があったことを示してる。


 けど、サイオスは無事ここにいる。そして魔物たちも洞窟の中……うん、なんかおかしい気がする。ここからは慎重にいこう。



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