美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ68

「貴方は、今のご自身の立場が分かってないのですか?」


 そう言ってくるオウセリア。確かに今の私は圧倒的に不利だ。変な場所に飛ばされて二人っきり。いや、実際二人っきりとは限らない。だってここに飛んでくるのがわかってたのなら、仲間とかを忍ばせて置くことは可能だ。私は見える範囲の茂みや木の陰に視線を向けてみる。ついでに蛇目にしてわかりやすくした。けど同じサイズ感の生物は見当たらない。この目なら、どんなに暗くてもはっきりと見えるからね。


 とりあえず仲間はここにはいないようだ。


「私の事、殺さないでしょ?」
「そうですね。ですがもう少しおびえてもいいんですよ?」


 そういう姿が見たいのかな? 確かにかわいい子がビクビクするのは可愛い。守ってあげたくなるしね。それを私に求めるのもわかるよ。私もいつもコランを見ては「守ってあげる!」って決意を新たにしてるからね。でもそんな思いにこの目の前のオウセリアがなるのかは甚だ疑問だけど……まあ私の魅力なら出来ると思うけどね。なんせ私宇宙一可愛いし。


「殺さなくても、色々と出来る事はあるんですよ? 拷問とか。洗脳……とか」
「洗脳が出来るなら、私の了承なんて必要なくない? なんでしないの?」


 そんな強力な力があるのなら、さっさと使うべきだよね。わざわざ言葉を交わす必要なんてない。無駄じゃん。私なら速攻で使うね。だってそっちの方が楽だから。まあ私にはそんな力ないんだけど。いや、この容姿でメロメロにして言う事を聞かせてる事は洗脳ではないのか? ちょっと考え込む。


「そうですね。まあただの脅しですよ。洗脳なんてほんのちょっとしかできません。それに拷問も、我らの趣味ではないので。それに貴方には効かなそうですし」


 確かに肉体的なダメージには私はかなり強い。てか、私の防御を抜ける攻撃なんてそうそうない。それこそ上位種の全力全開の攻撃くらい? セーバレスという種がどの程度なのかわかんないけど、まあ基本大丈夫だと思う。つまり、私に危険はないのだ。


「ですがこれは我らの存亡の危機なのです。どうかご配慮を」
「うーんご配慮って言われても……今は人種全体がようやく盛り上がってる所だよ? それにプリムローズは貢献してると思ってる。そんな私たちが電撃解散なんてことになったら、またお通夜モードに国全体がなっちゃうかも。そうなったら間に合わない」
「間に合わないとは?」


 オウセリアは自分たちの周囲しかしらないのかな? まあこの話は貴族間でもかなり上位の貴族しかしらないしね……私は真剣そうな雰囲気を醸し出して口を開く。


「魔王の進軍にだよ」
「魔王!? そんなバカな!!」


 オウセリアは体をのけ反らせてびっくりする。なかなかにオーバーなアクションをする人だね。けどそれだけ魔王という単語は衝撃だったという事だろう。


「それは……事実なのですか?」
「事実だよ。確定事項。私は魔王の種にあってるしね。それに他に何人かもね。そして魔王が復活したとしたらどうなるかわかるでしょ?」
「神話の再誕ですね」
「うん?」


 思いっきり「うん」という気持ちでいたけど、なんかへんに?がついたよ。だって神話の再誕とか知らないし。けどなんかここで知らないって雰囲気だしたらまずいと思って取り繕う。


「そう、それね」
「なるほど、それでこんなショック療法的な事を……」


 なにやらオウセリアは勝手に納得してくれたみたいだ。まあただ単に私的にはやりたかっただけだけどね。勿論、その思惑もあってのこそだけど。


「それで納得してくれた?」
「確かに、必要な事はわかりました。ですが……われらは種の存亡に関わってるのです。どうにか活動を自身の領内に収める事は出来ないのでしょうか?」
「それじゃあ、エコ贔屓的だし、そもそもが人種全体を盛り上げる事が目的だから限定したら意味ないじゃん」
「それはそうですが……」


 ぐぬぬ……てな感じでオウセリアはどうにかして私に折り合いをつけてほしいらしい。確かに種全体がかかわってる問題だとしたら、簡単には引けないよね。話から察するとセーバレスという主は羨望を糧にしてるんだよね。それを今までは領主という立場で得てきた。けど、それがプリムローズへと向いたからやめてくれってことだよね。けどそれって実際、私のしったこっちゃないような?


「ねえ、そもそも今まで通りになったらあんた達はどうするの? ただ領を運営してくだけなの? 世界の行く末には興味ない?」
「出来ることはします。ですが、我らはそもそも戦闘に役立てる力は殆ど持ち合わせてません」
「つまりはやくたたずか」


 あれだよね。皆が盛り上がってる時に妙に冷静になってる奴がいると森下がる的な? それがこれから先起きると人種の国全体の足並みが乱れる気がするというか? 今のうちに間引きしといたほうがいいんじゃ? 薬にもならないんじゃ、結局毒じゃね? いや、待てよ。


「ねえ、ちょっとは洗脳とかできる訳で、実はその羨望とかも種族的に向けられやすかったりするの?」
「ええ、我らセーバレスは心を感化出来る種なので」


 うん、言ってる事がよくわからない。けどまあ、羨望を向けられやすいってことだね。よしよし、なら……


「じゃあ、あんた達もやればいいのよ」
「……なにを?」


 私の言った意味を理解できないでいるオウセリアに向かって私は最高の笑顔を送って言ってあげた。


「アイドル!!」

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