美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ63

「ようこそ我が屋敷に」


 そう言って成金趣味みたいな奴か私たちを出迎えた。こういう奴はプライドだけは高そうだから家の前で待ち構える……なんてことはぜったいにしないはずだけど……やっばり美女を一早く見たいという衝動は抑えられなかったみたいだ。まあ男だしね。さっきから私たちの事、いやーな視線を向けて見てる。何を想像してるのか……筒抜けな感じの目。そういうのって女の方はわかるんだけどね。明らかにエロい事を考えてるその視線にミラとかは少し引いてるけど……自分が可愛いからと思えば多少留飲も下がるってものだよ。


 それにそんな視線にいちいち不快感感じてたら私なんてストレスで禿げちゃうよ。だから私は想像の中まで規制する気はない。誰が何を思うおうと勝手だしね。だって私なんて高嶺の花なんて言葉では収まらない存在だからね。普通は想像するだけでしか私なんて犯せないんだよ? 哀れな下民共にもそのくらいの権利は残しといてあげないとね。可愛そうじゃん。


「お招きどうもローデリア様」


 私はドレスのスカートを少しつまんで貴族風の礼をする。その瞬間、ゴクリと喉を鳴らすローデリア。いま頭のなかでは私……どんなかっこうさせられてるのやら。とりあえず中に通された私たちは食事が用意されてた広い会場に通された。そこには周辺の貴族とかもきて会食みたいな感じになってる。私を横に従えてわざわざ扉を開けて……その行為は今ここに集まってる貴族達にはどう映るのか……まあそういうことだよね。


 てかどこに行こうと、貴族ってあんまり代わり映えしないんだよね。そこがつまらないと自覚してないのがダメだってことに気づいてほしい。そんなんだから国自体が停滞するんだよ。弱者の人種なのに停滞してどうするんだって話だよ。こいつらは自分たちの利権を守ることに必死なんだよね。人種全体の事……までに目が届いてない。三年前の災害で被害を負った領には王宮とかそれこそファイラルとかからも支援とか色々としたわけだけど……どれだけ民達にまで行きわたったかなんてわからない。


 私たちがライブするまでここの領の人達はなかなかに酷い顔してた。それなのに……ほら、ここはこんなに豪華絢爛だ。まあファイラルに比べればこの程度でしかないけどさ、それでも平民との差は明らかだ。ファイラルでの贅沢は溢れる樽みたいなものだよ。いくら使っても溢れてくるから贅沢にも余裕がある。けどここの贅沢は多分そうじゃない。絞った雑巾みたいな感じだ。絞りすぎると……雑巾自体が破ける。


 まあ蛇とかハゲの言い分だと、結構の領がその状態らしいけどね。だってあれから立て直せてる領の方が少なくて……そして一部の領に利益が大量に流れてる。そのせいで厳しい……と。その利益をバカ食いしてる筆頭がファイラルなのは置いといてね。だからこういう所の貴族たちは少なからず私に恨みがあるのだと。けどまあ……利権だけをむさぼってたつけでもあるから私的にざまぁでしかないんだけどね。


 それで損するのはここの領民というね。弱者ってのはどこでも悲惨だよ。けど私は救世主でもなんでもないからこの目の前の脳内お花畑の貴族達を粛清したりはしない。けど希望くらいは与えようかなって思ってプリムローズをやってるわけだよ。


「ラーゼ殿……少しよろしいですか?」


 うざったい貴族共の挨拶を終えたと思ったらローデリアが何やらやってきた。空気読め、空気。私は少し休憩したいんだよ。そもそもがこんな場所面倒だからやなのにさ……けどこのツアーは私の我儘でやってるからね。最低限のその領ともめ事を起こさないためにもこういうことは必要と思って渋々来てあげてるんだ。ファイラルに引きこもってた頃からこういうパーティーの招待はごまんとあった。


 でもそれに応じた事なんかほとんどない。最初は物珍しさから言ってたけど、数回行けば気づく……なにも面白味がないってことにね。なので私がこんな所に……しかもこんな権力も半端な家柄に来るなんてないわけで……舞い上がるのはわかるよ。けどさ……義理だってわかろうよ。無理だろうな……だって誰も彼もテンション高いもん。とりあえずツンケンしない様に言葉を発する。


「なんでしょうか?」
「いや、内の息子を紹介したくてですね。ラーゼ殿ももうそれを考えてもいいお年頃と聞いてますので」


 ああーと私は思う。そしてちらっと成金の横にいる奴をみた。うん……なんかチャラチャラしてそうな奴だ。私の視線に気づいたのか、そいつは一気に顔を赤くして固まった。? 案外ちゃくないの? そんな事を思ってると成金ローデリア父が息子を肘で小突いてる。けど……息子の目は私しか見てなくて……たぶん脳ももう家族とかを追い出して私一色になってしまったようだった。ごめんね。罪づくりで。



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