美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ57

「さて……」


 私は船に戻ってきて椅子の背に背中を預ける。ググーググーと椅子をいじめるかの様に背中を伸ばす。本当はまだまだ遊ぶつもりだったんだけど……なんかあのまま外に居たらサイオスに見つかりそう……というかバッタリと出くわしそうな気がしたから逃げてきた。実際そう簡単に会うなんてことはないとは思う。まだ私が連れてきた冒険者達と、ここの冒険者達か探してるし、とりあえずそれがいったん落ち着くまで、下手に動くことはできないはずだろうからだ。


「でもサイオスだからね」


 そうサイオスだから何が起きるかわからない。普通は今はまだ大人しくするべき場面だ。けどあいつにはそういう普通の事は通用しないじゃん? なんかこう私のヤな方ヤ方へ転びそうな気がした。あいつはそういう奴だ。けどあいつに怯えて行く先々でサイオスにおびえて閉じこもる……なんて事はしたくない。私は自分の都合を押し付けるのは大好きだけど……だれかの都合を押し付けられるのは大嫌いなのだ。


 私は楽しくこのツアー行いたい。ツアーをやって、行く先々での領で楽しく遊びたい目的もある。だって私は立場上、色々と制約というか、制限あっちゃうからね。自由にやってるように見えて、案外不自由だったりもする。まあ贅の限り尽くしてるし、不満があるわけじゃない。けど私の予定を乱すようなことを他人にされるとね……プチっと来ちゃうよね。


 いくら私が温厚で優しいからって……


「とりあえずあいつはさっさと見つけて捕まえないとね」


 でも想定以上に強かった。私はさっきの映像を自身の前に映し出すよ。私のピアスは多機能なのだ。肉眼で見てる時にはわかんなかったけど、サイオスは武器を持ち帰る時、何か言ってるようにみえる。そしてそれに応えるかのように武器が一瞬輝くような? そしてサイオスが手にとった武器は数えた結果やっばり三回か四回の内のどちらかで砕かれてた。これは一体どういうことなのか……自分で考えててもわかんないから私は言葉を出すよ。


「ねえ、これってどういうことかわかる?」


 すると誰もいないはずの部屋から突如として声が聞こえた。


「いえ……魔法……という感じはしませんでした」
「じゃあ魔法以外の何か?」


 私は動揺することなくその声に更に質問をぶつける。普通は見えないその姿……けど私には見える。蛇目状態ならその姿がはっきりとね。カメレオンは常に私の傍にいる。カメレオンの他にも見えない護衛はいるけど、直接口を開くのはカメレオンだけだ。一番偉いのがカメレオンだからね。他の奴らはこっちから指名しない限りはその存在を示すことはない。


「人種に……そんな力があるとは思えませんが……」


 確かに……人種はそんなになんでももってない。あるのは他種族よりも脆弱な体に、劣る魔力……そんなものだ。能力……と呼べるほどのものはない。人種はいくら頑張っても、その最高到達点は他種族に及ばない。そういう種族だ。もしもサイオスのあれが魔法だったとして……それならばもっと魔法陣とか、それこそ詠唱に時間がかかるものだろう。まあ詠唱無しで山とか吹き飛ばす私が言うのもなんだけどね。


 けどそれは私がゼルラグドールの力を持ってるから出来る事。普通はそんな事は不可能で人種は簡単な魔法の無詠唱くらいしかできない。そしてあれは簡単の部類に入るのか……私は魔法とかにも別段詳しくない。けどあれはそんな簡単な物じゃない気がする。そもそもサイオスが何をやってるのか……具体的にはわかんないんだけどね。


「どうやらあいつの事……もっとよく調べた方がいいのかもね」


 ただの厄介で馬鹿な奴って認識だったけど……どうやらそれだけじゃなさそう。けど一度の調査では別段おかしな所なんてなかったわけで……そうなると何かあいつが一層気味悪い奴に見えてくる。だって私の周りにいる奴らは優秀だ。つまりはその優秀な奴らさえもサイオスは騙し通したってことになる。まあ最初の調査結果は本物でサイオスが才能って奴を隠してたっ線も無きにしも非ずだけどね。


 どうだろうか? けどこのままじゃ、私が動きにくい。面倒だから船の機能も使ってあいつを追いつめることに私はしたよ。



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