美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ56

「うっわ……」


 目の前の光景を現すなら……それはもう地獄絵図……とはいわないけど、大乱闘って感じ。実際そうだしね。けどサイオスの奴……たった一人でかなり持ちこたえてる。私が知ってるサイオスの実力なら……あの隻眼の人が出てきたと同時に詰んでる筈だったんだけど……ボロボロになりながらもなんとか持ちこたえてるらかね。これは予想外。さすがにこの人数だよ? 一対五十くらいの差だ。普通ベッコベコになるでしょ? 


 実際私はそれが見たかったんだけど……予想外にサイオスの奴が持ち堪えてる。なんだか時々不自然な動きをするような? いや、私は戦闘面では別になにか言えるほどの経験も知識もないんだけどさ……でもこれだけもってるのは異常でしょ。サイオスは武器だって自身の武器じゃない。不慣れな武器をとっかえひっかえしながら使ってる。けど結構使い慣れてるようにも見える。私の知る限り、あいつが他の武器を使ってる所なんて見たことない。


 ずっと愛用の剣を使ってたはず。それなのに短剣も槍も斧も使ってやがる。あれかな? なんとなくで使えるものなのかな? 私にはそこらへんわからない。だって剣とか使ったことないしね。近距離武器って私と相性悪いからね。技術がどうとか、肉弾戦する奴らはよくいうけど、サイオス見てるとそんなのいらないじゃん。あいつ適当に扱ってるよ? でも不思議な事はあいつが握った武器は三回か四回打ち合ったら壊れてる処だね。


 流石に誰もがそんな軟な武器を使ってるなんておかしい。だって武器は冒険者にとってもっとも大事な物の筈だ。防具とかも確かに大事だけど、やっぱり最初に揃えたいのは良い武器の筈。獲物が上物なら安心もできるし、なにより自慢もできる。それなのに数回打ち合ったらぶっ壊れるって問題でしょ。しかも今回ツアー同行に伴って選んだ冒険者はBランク以上ののはず。冒険者はその強さとかなんやらで階級訳してある。Bランクは中堅って感じだね。


 実際問題、そこまで護衛に期待してるわけでもないから、その程度にしてるわけだけどさ……それでも中堅の冒険者の武器がそこまで軟な訳はない。その日暮らしの冒険者も、そのランクの奴らは安定した収入があるといわれてるからね。これはギルドのお姉さんが言ってた。だから現実的には皆さんBランク位を目指すとかなんとか。さらに上となると、才能が必要になってくるのだ。それに冒険者には個人のランクの他にパーティーでのランクがあるからね。


 個人では上に行くのが難しくてもパーティーでの総合力でなら上を目指せるってのがある。実際今回の依頼でもBランク総統はパーティーを対象とした。だから個人ではCランクって奴らがいるとは思う。そいつらの武器を運悪く引いてるとか? まあサイオスの奴は運……あるようにはみえないけど……私もそれはいえないけどね。


「やれ!」


 そんな隻眼の人の合図とともに、後方で詠唱してた奴らの魔法がサイオスの奴に向かう。そのほとんどが電撃系だ。それもそんな威力はなさげな奴。私も見たことある……確かキララが練習でやってた初級魔法だ。彼らはここの街の冒険者だからね。あんまり威力の高い魔法を使って街を傷つけるのも嫌だろうし、サイオスを殺すわけにもいかないだろうからね。まあ私的には……もうそろそろとおもわなくもないけどね。


 大量の雷撃がサイオスへと向かう。この魔法は威力はそんなないが、早い。雷撃だしね。これを全部避けるなんて不可能だ。チェックメイトかな? いくつか上手く交わしたけど、すでにそれか不可能な数と距離に魔法が迫ってる。まあ死にはしないよ。これで諦めて捕まって送り返されてけ。


「俺はやられはしねぇぇぇぇ!!」


 そういったサイオスは持ってた剣に雷撃をまとわせた。それには流石の冒険者面々もびっくり。そしてその帯電した剣を頭上に投げると同時にサイオスは距離をとる。その行動を見た隻眼の人はとっさに声を上げるが、遅かった。宙に投げられた剣は突如砕けて周囲に雷撃をまき散らす。そして冒険者の殆どは一時的に体の動きが止まった。数秒の後に動けるようになったけど……そのときにはすでにサイオスの奴の姿はなかった。


(はあ……面倒事がまた増えたじゃん)


 私はそう思ってこの場を後にした。



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