美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ55

 迫りくるむさ苦しい男ども。こんな街中だというのに容赦なく振り下ろされる武器の数々。長剣に槍、短剣に時には盾までが俺に迫ってくる。こいつらどんだけの大怪我を負わせる気なのか……回復できる奴がいればどれだけの大けがを負わせてもいいとかおもってるのか? 本当にこれだから……俺は最初は反撃せずに立ち回ってた。迫りくる武器を交わして交わして……どうにかケガさせずに……とかバカな気遣いをしてた。


(でも、そんなの必要ねーか)


 煩わしくなってきたら、自然とそんな声が頭を占めてた。そもそも俺は気を遣うなんてことが苦手なんだ。自分のやりたいようにやってきたからな。自分が普通とはズレてる事なんて自覚してる。でもそれがなんだ? たった一度の人生だろう。やりたいようにやらないと損じゃねーか。だから俺は変わらない。変わる気なんてない。俺は英雄になり、そしてあの子の……ラーゼの隣まで駆け上がるのみ!!


「どけええええええ雑草どもおおおおおおおおお!!」


 正面の奴を殴り飛ばした。吹き飛んだ奴の手を捻ってそいつが持ってた剣だけ頂く。俺自身が持ってる物よりも大分劣るがしょうがない。


「こいつ、攻撃してきたぞ!」
「この数相手にやる気か?」
「正気じゃねえな……」
「そいつは元から正気じゃねえよ。頭おかしい奴だ」


 現地の冒険者たちが少し動揺する中、ファイラルの冒険者たちはやっぱりそう来たか――みたいな反応だ。俺という男をよくわかってるじゃないか。だが頭がおかしいとかは心外だ。俺は英雄へと至る男だぞ。カタヤとかいうアンティカ頼りの奴とは違う……俺が真の英雄となるのだ。それをしょうがないからここで証明してやろう。俺とこいつらの英雄力の違ういというものをな。


「俺は貴様らなどには捕まりはしないさ。時代が俺を求めてる……なによりもラーゼが俺を求めてるからだ!!」


 静まり返る冒険者達。どうやら俺の英雄力が言葉となって奴らを慄かせたみたいだ。格の違い……それを肌で感じたことだろう。これで引くのなら……


「ぷっアハハハハハハハ!!」
「「「ガハハハハハハハハハハハハハハ」」」


 一つの笑いをきっかけに、笑いの渦は冒険者一同に広がっていった。


「どうやら相当頭がヤバイ奴らしいな。ラーゼって奴を狙ってるようだし、さっさと捕まえた方が良さそうだ」


 何やら隻眼の男にヤバイ奴認定された。さっきまであいつは後方で指示するだけで動かなかったが、どうやら出てくるようだ。あいつが一歩を踏むたびに見えない壁が迫ってくるかの様な圧力がかかる。あいつは強い……それを俺の感覚が物語ってる。どうやらそこらの有象無象とは違うようだな。こいつの英雄力……俺には劣りそうだが、計ってやろうじゃないか。俺は思わずニヤリと笑う。強敵……それは男にとって、人生のスパイスなんだ!!



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