美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ29

 喧噪の中隅のテーブルに腰掛ける自分たち三人組。自分たちはこれらの為に集まった。周りでは酒をあおってる奴らがいっぱいだが、俺たちの席にはカラフルなジュースが置かれてる。飲むわけにはいかない。酔うためにここにいるわけではないのだ。今日はこれからの為に……ここにあつまった。そう目の前の二人の罪は一旦許され、復帰が決まったのだ。


「うおおおおおおおおすまない! 本当にすまない!!」
「お前にはもう頭が上がらねえよ! ここのお代は奢らせてくる!!」


 自分からの報告を聞いて残りの二人が咽び泣いてる。首を宣告されたときは、後悔はないとかかっこつけてたが、本音ではあの空間が名残惜しかったらしい。まああそこ……天国だからな。美少女たちがキャッキャッウフフしてる所を一番近くで見てられるんだ。こんな極楽は他にはない。


「お代って言ってもジュース代だけどな……」


 この程度なら収入をすでに得てる自分なら余裕で払える。それになんやかんやで冒険者登録をラーゼ様のごり押しでさせられたて、あれからあのメンバーで何回か依頼を達成したからな。それはこいつらも同じだから、こんな簡単に奢るとか言えるんだろう。前までごくつぶしだった自分たちでは奢るなんてなかなかできることではなかった。それにすべてはプリムローズのグッズに使ってたし。けど今はそのプリムローズの皆と居れる。
 この幸福を手放すなんて……おしすぎる。たしかにこいつらのやったことは許されないことだ。彼女たちをきっと傷つけた。だから自分もやめようとしたんだが……ラーゼ様はチャンスをくれた。


『去勢しましょう!』


 昼間の言葉が頭をよぎる。あれは……うん、つたえないでおこう。あの発言だけで、結局あれは曖昧になったし。まさかラーゼ様も本気ではなかっただろう。だよね? 本気……じゃないよね? わからない。ラーゼ様は掴みどころないからな。けどもしも次に不敬を働いたら本当にやられるかもしれない。やっぱり伝えた方がいいか? その方が抑止力になるかも……こいつらには前科あるし。


「いやー本当によかったよ。これらは心入れ替えて頑張るから!」
「おう、もう気持ちを先行させたりしない! 俺はミラちゃんと……ミラちゃんと!」
「そういえば今度変な事したら去勢だってよ」
「「え?」」


 二人の声が重なって動きが止まる。さっきまで安心してた顔が青ざめてる。どうやら去勢がかなり聞いてるようだ。


「おいおい去勢って本当に?」
「ラーゼ様はそういってたな。本当は二人を戻す条件が去勢させてからだったが、それは回避しといた」
「「おおおおおお同胞よ!!」」


 そう言って汚い顔を近づけてくる二人を自分は避ける。とりあえず少しの間こいつらが落ち着くのをまっとく。それほど去勢はいやだったようだ。まあそうだよね。そして落ち着いて三人でジュースをすすり、一つ気になることを聞く。


「それで、どうだったの? フィリーちゃんの味とミラちゃんの匂いは?」


 すると二人は拳を前に出して親指を突き出していい顔でこういった。


「「最高だったぜ」」


 ごく……自分ももしかしたらシシちゃんのを……でもそれはダメな事。やらなかった自分が誇らしいのは確かだ。けど……男として残念な気持ちはやっばりあって……


「けど、あれは無理じゃないか?」
「え?」
「いや、言い訳する気はないんだ。あの誓いも本物だった。けど、近かったんだ! とっても!」
「俺も……いや、俺はきっと通じてた! ミラちゃんと!」


 二人ともどうやらそうとう攻められてたようだ。無意識だろうけど、恐ろしい。シシちゃんもとてもかわいくて自分も何回手を伸ばしかけたことか……


「でも今度はそんな煩悩に負けないようにするぞ! 手を出したら去勢! それを思い出せ!」
「おう!」
「任せとけ!」


 俺たちは心に楔を打ち込んで明日からの生活に備える。天国と、そして試練の日常に。



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