美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ26

「どうして?」


 私はいきなり首にしてくれって言ってきた犬一号君に理由を聞くよ。まあなとなくはわかるよ。後の二人を首にするならって言ってるし、一人だとここにいづらいんだろう。まあこっちも一人で大丈夫かな? っては思ってた。だってそんな積極的な奴らじゃないしね。一人だと心細いんだろう。そう予想してる私に、犬一君は歯切り悪く言うよ。


「自分も……ももも、もう……限界なんです!」
「限界?」
「はい……やっぱり……こんな環境は自分たちには幸せ過ぎるっていうか……」


 そう言ってちらっとシシ達の方を見る犬一君。シシ達はさっきから何やら三人でこそこそとやってるけど、犬一君が来てからはこっちをキラキラした目でみてた。ハハーン、もしかしてシシの奴……犬一君の事、気にしてる? 私の女の勘がピーンと来ちゃったよ。この世界で女を磨いてきたからね。今や私の女の勘は予言の域に達してるかもしれない。全く、ますます私は自分が恐ろしくなるよ。でも一番落ちなさそうなシシを落としかけるなんて……犬一君もなかなかやるね。


 けどシシもファンたちとの交流でそれなりに対応を覚えてくれてたのはよかった。なんかとても愛想よくふるまってたしね。でもだからこそこの事態は私も予想外というか……まさか手を出しちゃうなんてね。まあ犬君ズは直接プリムローズのメンバーに何かできるほどの肝っ玉はない。それはまあ予想通りなんだけどね。けど、練習で使ったタオルとか、差し入れた飲み物の残りに手を付けるとはね。げど定番といえば定番ともいえる。


 犬一君以外の犬二、犬サンはクンカクンカにペロペロしちゃったのだ。今はそれだけで済んでたとしてもそれがエスカレートしていかないとは限らない。それにプリムローズのメンバーからの信用を失ったらマネージャーとして雇っとくのも無理かな? って思って首という事に成ったんだけど……私的には厳しすぎるかなっても思う。私はよく他のメンバーの使ったタオルとかクンカクンカしてるし……それで首ってちょっと後ろめたい気持ちがあるっていうかね。


 まあ立場も性別も違うから仕方ない部分もあるけど……けどこれがイケメンなら? もしかしたらシシ達もここまで厳しい処罰は求めなかったかもしれないと思うと、やるせないよね。けどなー


「うっ……ひっく……」


 さっきまで楽しくお喋りしてたコランがこのありさまである。男女の何やらとか、互いの気持ちとか、色々とあるけど、私的にこれが一番の問題。コランが男という存在を怖がってしまってる。まあもともと、他人を怖がる子だったけど、ライブを重ねるにつれてそれはいい方向にむかってた。けど、同じプリムローズのメンバーで家族のようなフィリーとミラがちょっとした被害にあったって聞いてこれだよ。男は怖いものって思っちゃってるみたい。


 こんなコランは見たくない。だからもういっそ全員首に? でもそれもなんだか色々とダメな気がする。コランの事は可愛い。目に入れたって平気だ。だから泣かせたくはない。けど……私は過保護なわけじゃないんだよ。私が一番嫌いなのは停滞である。美貌の停滞はバチコイだけどさ、人として……そして一生を通して停滞って無駄じゃない? 私は成長する姿って好きだ。だってその時、輝くじゃん。そういうときってもしかしたら、私よりも輝いてるかもしれない。


 まあ流石にそれは言い過ぎかもしれないけどさ……その可能性がこの子達にはあると思ってる。犬君達の存在はいい刺激になると思う。けど何もお咎めなしで鶴の一声はちょっとね。やっぱり皆が納得する解決策が必要……


「うーん……」


 私は唸る。なんか頭使ってると眠くなっちゃうよね。そもそも私はそんな考えるの得意じゃないのだ。けど皆固唾をのんで私の発言を待ってる。あんまり適当なことはいえないね。幸せ過ぎ……犬一君はそういった。本当は手放したくなんかないはずの立場。それは二人も一緒だろう。実際、問題が起きるまでは一生懸命支えてくれてた。互いのいい所だけを残せれば……


(男女ってのが問題なのかな……わたしがしてもわらって許してくれるし……あっ)


 私は妙案を思いついた。うんうん、これで行こう。私は椅子を倒す勢いで立ち上がり宣言する。


「去勢しましょう!」


 その瞬間、場の空気が止まったみたいな? 



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