美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ22

 「ちょ、ちょっとあんた達起きなさいよ! このままじゃ、私かあいつにぬめぬめにされるじゃない!!  …………おい、なに赤くなってるのよ!」


 絶対にこいつら想像したよねその場面。私がこのぬめぬめ野郎にぬめぬめにされちゃう場面。きっと触手とかで絡ませられていろんな所まさぐられる所を想像して赤くなってるんでしょ? 


「それはたまらんものがあるな……」
「確かに……だが、力が湧いてきたのなら、立ち上がらん訳にはいかん!!」


 サイオスと赤線はなんとか立ち上がる。まあ立ち上がる理由が最低だが……それはまあいい。私を守るのなら、なんだってね。実際、あのぬめぬめ野郎の攻撃なんて私には効きようがないけどさ、それでもぬめぬめにされるのはヤダ。だってぬめぬめだよ? 気持ち悪いじゃん。


 ここは街から離れた森にある池だった所なんだけど、最近その池が黒ずんで異臭を放ち、そして森を腐らせてる……みたいな報告があったみたいで、私たちが受けたのはその湖の調査だったわけだけど……いかんせんその現況たるモンスターに見つかってしまって今は絶賛戦闘中というわけだ。いや、見つかったっていうか、この二人が飛び出したというか? こいつらはどっちが私を守るに相応しいかやってるからね。いい迷惑である。


「「「僕たち……だって……ラー――ゼラ様の為に」」」
「あんた達はいいから邪魔にならない所に転がってなさい」


 ゼラってのはこいつら間での私の呼び名だ。だってラーゼ言うとサイオスにばれるし。なので適当に名前を決めた。犬たち三人はただの一般人だけあってどうしようもなく弱い。一応なけなしのお金で防具と武器を買ったんだけど……効果はなかったみたいだ。新品だった防具はあのぬめぬめのせいでボロボロだしね。武器だって同様だ。皆私以外はかなりきわどい格好になってる。だからこいつらは私がこうなった姿を想像したんだろう。


 けどこのぬめぬめは別に服だけを都合よく溶かす訳じゃない。ちゃんと肌にもダメージ受けてるからね。だからこそこいつら倒れてたわけで……まあいまは気合でサイオスと赤線は立ってるけどさ、このままじゃ末路は同じだ。私なら……服は溶かされても体にダメージが入ることはない。でも下手に撃つと森事ここら一帯消滅させちゃうし……それにつかれることはしたくない訳で……


(けど、こいつらのどっちかが倒したら付きまとわれるんだっけ?)


 それなら自分で倒した方がいいかも? けどその心配はいらない? はっきり言って二人の攻撃はあのぬめぬめには効いてない。二人とも物理主体だから、相性が最悪的に悪い。二人とも既にパンツとアトラスだけしかない。この二人はそれなりに強い冒険者みたいで、その武器も案外特殊。なのでぬめぬめに溶かされるってことはないみたいだけど……分が悪いことに変わりはない。決定打に足りてないよね。二人で最大級の攻撃を核にでも打ち込めばどうにかなるかもだけど、競い合ってるあいつらにその発想はない。


(よし、すべてをうやむやにするためにちょっとは動いてあげよう)


 私はニヤッとして一歩を踏み出す。裸を晒す気はないよ。一撃で決める。けどその時だ。倒れ伏してた犬たちが動いたのは。



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