美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ21

 何とか危機は去った。だけど、うざい取り巻き共がなにやらギルドで幅を利かせてやがる。


「おうおう、かの方の席をゆずらねぇか! この方をどなたと心得――ぐえ !?」
「あんた何? 私の敵なの?」


 私はひっそりと実力者を教えてほしいのに、何やってくれてんの? ただでさえさっきの騒ぎのせいで私は注目浴びてるんだよ? 虎視眈々と獰猛な冒険者たちがわたしを狙ってる目してるもん。


「め、滅相もございません!! われらは御身の忠実な犬でございます!!」
「「「わんわん!」」」


 うわ……めっちゃ変な目で見られてるよ。絶対特殊なプレイ中だと思われてるでしょこれ? この赤線はまだ戦力になりそうだけど……犬どもはどうあっても戦力になりそうにない。つまりは……


「いらない」
「そんな殺生な! なんでもしますぞ我ら同志! 全てを捧げる諸全でございます!!」
「「「くーーん」」」
「ちょっ、そんな捨てられる犬みたいな目をするな!」


 赤線はいかつい顔だからなんとも思わないけどさ、このなんの役にも立ちそうもない三人組がヤバイ。なんの力もなさそうだからこそ、弱者の雰囲気をまとって庇護欲をそそってくる。つぶらな瞳を売る閏させて……あんたたちの押しは違ったでしょっていいたい。まあ、私に落ちちゃったものは仕方ない。だって私だもんね。この童貞そうな奴らならこうなっちゃうのもうなづけるというものだ。


「はは! いいじゃないか、こいつの子分ということは俺の子分ということだな!」


 ちょっとーもう一人変な奴がおかしな発言してるよー。まじこの集団から逃げ出したいんだけど……でもこいつら私を囲う様にいるんだよね。絶対に逃がさない態勢だよ。まあ逃がすというよりは守るって意味合いが強いんだろうけどね。けど私にとってはどっちも同じ。うざいことに変わりはない。私はただギルマスだけに事情を話して、よさげな冒険者を教えてほしかったんだけどな。こいつらどこまでもついてきそうでそれもできそうにない。


「貴様、今の発言はどういうことだ? 貴様は御身の何なんじゃ!!」
「ふ、俺は英雄だ!!」
「そんな事きいとらんわ!!」


 ああもううるさい。バカとアホがそろって収集つかないんだけど。


「あのーそこの皆さん? あまり騒ぎすぎないでお願いします」


 怒られた。しかも良い笑顔で。私は謝らなかったけど、犬三人は土下座してた。


「仕方ない、なにか依頼でも受けるか。奴らは依頼を受けないと出てけというからな」
「じゃう解散で。もう二度と会うこともないでしょう」


 いまこの空間にいるよりも屋敷に戻った方がいいと思える。それに依頼って何よ? 今の編成でやるわけ? 戦力的にいびつでしょ? そもそもこの犬君達は冒険者ではないような? 一般人だよね? 


「まった! まだ俺たちは何も成してないぞ!」


 なにそれ? 何かする約束でもしたっけ? してないよね? こいつの言ってることはいちいちわからない。


「お前たちもこれでこいつを逃がしていいのか? 俺は運命力があるから会えるが、貴様らはもうないぞ!!」


 運命力って何? そんなものが私とあんたの間にあるとはおもえないんだけど……てかあって欲しくない。てかこいつ私の正体に気づいてないよね? なんでこんな私にこだわるわけ? そんなことを思ってると、サイオスの発言に犬と赤線は蒼白してる。特に犬たちがね。


「確かに自分たちなんて……あの人と関われるなんて今しか……冒険者でないとかなんて関係……ない!!」


 いや、あるよね? 一般人が依頼受けるとかできないし。けどあれか、赤線かサイオスが受けたのに便乗すればいいだけか。それで死んでも自己責任……けど犬たちは三人そろってポジティブシンキングしてる。やる気になるよな……とおもう私。


「貴殿か我、どちらが御身に相応しいか決めようということか! 受けてたとう!!」
「勝つのは俺しかいないがな!」


 火花散る二人。いやいや……いやいやなんでそっちはそっちで行く気満々になってるわけ? なぜか事態に私だけがついていけてない。そしてなんやかんや……私の前にはドロドロと蠢く気持ち悪いモンスターがいた。そして地面に倒れ伏す哀れな男ども……いったい……どうしてこうなった? いや、寧ろ何がなんで……うん、なんなのこれ? 私の記憶も欠落してるよ。



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