美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ2

 光と共に現れた私達プリムローズに皆さん見惚れてるみたい。背中なんてバックリ見えてるしスカートも大きく広がったフリフリでとても短い。おへそも見えてるし、光の中から現れた私たちは、ファイラル領で開発した大スクリーンに投影されて見えてる。だからだね。これだけの人が何も発してない。沢山の人々が居るのに喧騒が全く無く、それは不気味なほどだ。


 その理由は簡単。皆が私に見惚れてる。それだけ。ごめんね。規格外の美少女で。でも、なんの盛り上がりも無いのもヤだからね。どこからともなく聞こえてくる演奏の音。そして私達五人は視線をかわし合わせて自然とフォーメーションをとる。沢山沢山練習をしたんだ。汗と涙を流し合って……まあ流石に涙までは流さなかったけど……でもいっぱい練習したことは事実だ。


 その成果が今ここで!!


 最初は私の美貌に見惚れてた観衆達も次第に音楽に合わせて身体が動き出す。一曲目はエネルギーが弾けるような激しい曲だ。疑問なんて挟ませずに、私たちの虜にするような、そんな曲。美少女達が可愛い格好で際どく踊ってそして笑顔を向けてるんだ。さらには感情を高めるノリのいい曲。誰も抗えずに観衆の身体が揺れてる。


 そして一曲目が終わった頃には……


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 こんな感じでボルテージがめちゃ上がってた。激しい曲だったから私たちは既に汗だく。けど、美少女の汗は美しいから問題ない。自信がなかった子もこの盛り上がりに安心したよう。私は後ろの彼女達だけに見えるようにグッと親指を立てる。それに皆頷いて返してきた。そして続けざまに二曲をお披露目。その頃にはもう皆ハイになってる。


 さてさて、そろそろMCの時間かな? ちゃんと私達を紹介しとかないとね。


「みなさ~ん盛り上がってるかぁーい!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 うむうむ、いい感じである。観衆達の目がギラギラしてるよ。もう私たちに夢中だね。私達しか目に入ってない感じ。こんな事、この世界にはなかったから、一種の麻薬なみに刺激が強いのかも。まあ美少女から抜け出すなんて事出来ないから、ある意味麻薬以上に危険かもね。だって生き物は美しい物を本能的に求めてしまうのである。


 私たちは再び視線を交わして横並びになる。そして声を揃えて――


「「「私たちはアイドルグループ『プリムローズ』です!!」」」


 ――と決めポーズと共に言った。勿論センターは私です。この決めポーズも一杯試行錯誤をして完成させたのだ。一番気合いれた部分と言っても過言ではない。もう私達が一言発するだけで、叫び出す観衆達。もう彼らは抜け出せない。私達の魅力からね。アイドルグループとか意味分かってないだろうけど、そんなのはもう皆には関係無いのだ。


 私達の一挙手一投足……それが大切なのだから。

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