美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Σ78
「踏みとどまったか……」
安心する私達の前に、何事もなかったかの様にオジサン鉄血種が降り立つ。傷も見当たらず、どう見ても全快に見える。私は幻を見てたのだろうか? 確かに彼の肉を先、この口に入れた筈だ。けど、そんな様子は微塵も見えない。本当におかしくなる前の状態のまま……
「どうした? ああ、我を追い詰めたと思ったか? 我は何百年と生きてる。血のストックなど、大量にあるのだよ」
つまりはそのストックの血で回復したと……いや……それよりも……
「貴方は……何がしたいんですか?」
それだよ。一体なんでこんな事をしたの? もしかしなくてもさ……私がああなるように誘導した? 最初に剣を簡単に刺したのに、それから追撃することもなくて……しかも私がああなってからは、こっちが優勢であるように見せてたってことじゃん。その気になれば、簡単に回復できて、あの状態の私も倒すことが出来た筈だ。
「何がしたいか……そうだな」
鉄血種のオジサンは周囲に視線を向ける。皆は私から鉄血種の方へと警戒を移してる。銃の先端は迷いなく鉄血種を捕らえてる。けど……それで臆する様なやつじゃない。寧ろ銃を向けてる兵士たちの方が震えてるくらいだ。
「私は見てみたいのかも知れない。我等の力に負けぬ人を」
「それはどういう……」
「これ以上は、我を倒せた暁に教えてやろう。まだやれるだろう?」
その瞬間、自身から大量の冷や汗が吹き出す。ヤバイ……こいつは……本当に不味い奴だ。てかやれないなんて言えない。その瞬間に私の命は尽きるだろう。こいつは確かに何かあるんだろう。それを私に期待してる節がある。けど、もうダメだと思われればきっと躊躇いなく殺しにくるだろう。
塔に張り付けた時……もしもあの時、あのまま牙を突き立ててたら……私は既に殺されてたのかもしれない。
「ここからが本番だ」
その言葉と共に鉄血種が私に向かって歩みだした。私はマントをギュッと掴む。これを使うのは正直こわい。ラーゼの力で押し込めたみたいだけど……またいつこの中に居る鉄血種が動き出すか……そうなるとまた……けどこれを外す事をこの鉄血種は許さないだろう。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
グルダフさんが先陣を切って鉄血種へと切り込む。その手には強力な斧が輝いてる。二つの斧は同じ軌道を辿って鉄血種へと向かう。あれで幾人もの鉄血種にトドメを刺してきた。それだけの威力がある。実証済みだ。流石にあれを無視は出来ない筈。グルダフさんの豪腕から振り下ろされる斧。けどそれを鉄血種は片手で止めた。その斧は赤い渦の様な物に阻まれてしまってる。
「バカな!?」
「鍛え方が足りないぞ獣人」
そう言った鉄血種のオジサンは片手で斧を押し戻し始める。身体はグルダフさんの方が大きいのに……そんなのは関係ないみたいだ。そしてグルダフさんが一旦離れようとしたタイミングで更に間合いを詰める。
「獣人は美味しく無いんだがな」
ゆっくりと伸ばされる手。それは実際にそうなのか、それともそういう風に見えてるだけなのか私に分からない。けど、これがとても不味いからこんな風に見えてるのだとしたら……あの手をグルダフさんに触れさせては行けない。私は意を決して二人の間にマントを滑り込ませた。グルダフさんを奴の視界から隠して、距離を取る補助にしたんだ。
「そうだ……君が出てこなくてはな」
恐怖に心臓が縮こまりそうだった。けど、逃げるなんて選択肢は無くて……立ち向かうしか……生き残る術はないんだ。私は唇を噛み締める。切れるほどに噛んで痛みで恐怖を少しでも紛らわす。血が甘い……なんて事はない。
安心する私達の前に、何事もなかったかの様にオジサン鉄血種が降り立つ。傷も見当たらず、どう見ても全快に見える。私は幻を見てたのだろうか? 確かに彼の肉を先、この口に入れた筈だ。けど、そんな様子は微塵も見えない。本当におかしくなる前の状態のまま……
「どうした? ああ、我を追い詰めたと思ったか? 我は何百年と生きてる。血のストックなど、大量にあるのだよ」
つまりはそのストックの血で回復したと……いや……それよりも……
「貴方は……何がしたいんですか?」
それだよ。一体なんでこんな事をしたの? もしかしなくてもさ……私がああなるように誘導した? 最初に剣を簡単に刺したのに、それから追撃することもなくて……しかも私がああなってからは、こっちが優勢であるように見せてたってことじゃん。その気になれば、簡単に回復できて、あの状態の私も倒すことが出来た筈だ。
「何がしたいか……そうだな」
鉄血種のオジサンは周囲に視線を向ける。皆は私から鉄血種の方へと警戒を移してる。銃の先端は迷いなく鉄血種を捕らえてる。けど……それで臆する様なやつじゃない。寧ろ銃を向けてる兵士たちの方が震えてるくらいだ。
「私は見てみたいのかも知れない。我等の力に負けぬ人を」
「それはどういう……」
「これ以上は、我を倒せた暁に教えてやろう。まだやれるだろう?」
その瞬間、自身から大量の冷や汗が吹き出す。ヤバイ……こいつは……本当に不味い奴だ。てかやれないなんて言えない。その瞬間に私の命は尽きるだろう。こいつは確かに何かあるんだろう。それを私に期待してる節がある。けど、もうダメだと思われればきっと躊躇いなく殺しにくるだろう。
塔に張り付けた時……もしもあの時、あのまま牙を突き立ててたら……私は既に殺されてたのかもしれない。
「ここからが本番だ」
その言葉と共に鉄血種が私に向かって歩みだした。私はマントをギュッと掴む。これを使うのは正直こわい。ラーゼの力で押し込めたみたいだけど……またいつこの中に居る鉄血種が動き出すか……そうなるとまた……けどこれを外す事をこの鉄血種は許さないだろう。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
グルダフさんが先陣を切って鉄血種へと切り込む。その手には強力な斧が輝いてる。二つの斧は同じ軌道を辿って鉄血種へと向かう。あれで幾人もの鉄血種にトドメを刺してきた。それだけの威力がある。実証済みだ。流石にあれを無視は出来ない筈。グルダフさんの豪腕から振り下ろされる斧。けどそれを鉄血種は片手で止めた。その斧は赤い渦の様な物に阻まれてしまってる。
「バカな!?」
「鍛え方が足りないぞ獣人」
そう言った鉄血種のオジサンは片手で斧を押し戻し始める。身体はグルダフさんの方が大きいのに……そんなのは関係ないみたいだ。そしてグルダフさんが一旦離れようとしたタイミングで更に間合いを詰める。
「獣人は美味しく無いんだがな」
ゆっくりと伸ばされる手。それは実際にそうなのか、それともそういう風に見えてるだけなのか私に分からない。けど、これがとても不味いからこんな風に見えてるのだとしたら……あの手をグルダフさんに触れさせては行けない。私は意を決して二人の間にマントを滑り込ませた。グルダフさんを奴の視界から隠して、距離を取る補助にしたんだ。
「そうだ……君が出てこなくてはな」
恐怖に心臓が縮こまりそうだった。けど、逃げるなんて選択肢は無くて……立ち向かうしか……生き残る術はないんだ。私は唇を噛み締める。切れるほどに噛んで痛みで恐怖を少しでも紛らわす。血が甘い……なんて事はない。
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