美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ23

 ドスドスドス――そんな音と共に鋼岩種が走ってる。そして集まってる仲間の中へと勢いよくと突っ込み、その拳を思いっきり振りかぶった。


 どがあぁぁぁぁん!


 爆発でも起きたかの様な音が響いた。そして一気に一体の鋼岩種が吹き飛んだ。地面を転がってピクピクと痙攣し……そして動きが止まった。するとボロボロと身体が崩れていく。あれがこいつらの死。この世界の生き物はマナに帰る奴らが多いね。どうやら死してマナに帰ってこそ、神という存在の元へ送られて転生出来ると言い伝えられてるみたい。


 人種の間でそれを聞かなかったのは、その言い伝えでは死して肉体が残る人種は神の元へ行けず転生出来ないって事になるからだ。意図的にその言い伝えは王家とか上流階級の奴らで情報規制してるみたい。隠す意味もないと思うけどね。そこは上の人達のプライドの問題なんだろう。


 そんな事を思ってマナに帰る一体の鋼岩種を見てた。そしてそれは他の奴らも一緒だ。ただ時が止まったかの様に動かない。多分頭がついてきてないんだろう。いきなり仲間が仲間を昇天させたんだからね。仕方ない。けどこれはチャンスだよ! 私は更に物陰から弾丸を撃って他の鋼岩種も錯乱させる。まあ直ぐには効かないんだけど、効くまでの間、さっきの奴に頑張って貰おう。


「※※※※※※※※※※※※※※」


 なにか分からない言葉というか空気みたいなのを発してる奴が一人。多分アイツに語りかけてるんだろうけど、無駄だ。そいつには既に私のマナという毒が回ってる。そういえば新たな発見があった。それはマナに頼ってる奴らほどに、マナの汚染に弱いみたい。まあ、ちゃんと対策とかしてたり、自身で浄化みたいな事を出来るのなら、マナの汚染なんて意味ないのかもしれないけど、どうやら鋼岩種は結界魔法一点しか使えないみたい。


 つまり奴らは私の攻撃への対処法がないのだ。影からこそこそとやらないと駄目だけどね。流石に真正面から撃っても結界張られたら通らないしね。どうやらそいつ自身が自身を守る為に張った結界は、装置自体がその術者になるから、汚染のためのマナが外に流されるみたい。てか多分自身を守る様な緊急の結界は結界としては不完全なんだと思う。


 ちゃんとした結界はマナが綺麗に循環してる。だからこそ強度も高いし、術者自身が離れても、その効果は維持される。でも不完全な結界はその循環が上手く機能できてない。そのせいで私の打ち込むマナが中にとどまれないってね。思わぬ対処方があったのだ。けど奴らはそれに気付いない。てか、なんで仲間同士でやりあってるのか、それすらも分かってないだろう。


 仲間の突然の暴挙に手をこまねいてる間に、こちらは更に二人毒で犯して上げた。これで更に混乱は極まる。でも問題は中央でやりあってることだね。あそこに私がここに来た時の祭壇? みたいなのがある。多分あれが外とをつなぐゲートだと思うんだよね。いまやそれは大混乱と共に壊されそうだ。あそこだけはあの荒野でみた形と似通ってる。祭壇の周りに石が積まれててさ……ソレだけだけど、何か一つでも欠けたら駄目とか言わないよね?


 そう思ってると、騒ぎを聞きつけてか、皆が一番最初に侵した奴の背に蔦とかで組んだみたいな網を使って背負われてやってきた。やるね……確かにアレなら一気に全員で移動できる。鋼岩種は大きいけど三メートルくらいでは色々と頑張っても三・四人くらいしか運べないだろう。でもあれならかなり無理矢理だが、移動できてる。
 どうやら鋼岩種は私達が思う以上に力が強いみたい。けどそれを見た一体から強いマナの波動が見て取れた。


「※※※※※!!」


 なに言ってるかわからないが、絶対にあれは怒りだ! 正気を失ってる仲間の背に乗ってる人種。これで原因ははっきりとしたようなものだ。普通よりもデカイ、五メートルはあろうかというそいつが皆の方へ走り出す。奴の走る振動が私の照準をズラす。誘導弾はマナを少しだけ多く使う。だから今はいいや……とか思ってた。的もデカイし、問題なかったんだけど、流石にそうも言ってられない! 


 私はあのデカイのを止める為に撃ちまくる。確かに当たってる。けど……止まらない。私に汚染されてる方も迎え撃とうと腕を後方に伸ばしてる。だけどその時、更に深く沈んだ一際大きい方。そして一瞬だけだけど、たしかに加速した。そしてそのデカイ腕を横に伸ばして、そのまま突っ込む。


「逃げてええええええええええ!!」


 それはラリアットだった。けど私の知ってるラリアットとは威力が違った。ぶつかった瞬間、皆が乗ってた鋼岩種は砕け散った。硬い鋼岩種を砕く程の威力だ。背に乗る皆が無事な訳ない。赤い鮮血が散ったのは一瞬。彼らの形はその一瞬で無くなった。



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