美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ21

「ん……うん……」


 まぶたが開いて、眩しい日差しが視覚を刺激する。一瞬真っ白になったから天国なのかな? とか思った。けどどうやら違うよう。私はまだ……死んでない? 


「大丈夫……ですか?」
「……ここは?」


 声を掛けられた。見てみると周りには兵士がいた。多分駐留軍の人達だろう。その数数十人。これで全部な訳ないけど……流石に全員生かすなんてことは鋼岩種もしないだろう。


「ここは奴らのアジトの様な場所のようです。私達は捕まって、閉じ込められます。貴方のその格好はフェアリー部隊の?」
「はい、私はフェアリー部隊所属の亜子 小清水です」
「「おお」」


 なんか皆さんの期待の眼差しが痛い。変に希望をもたせるのも不味いよね。だからってここで絶望してもらっても困る。まあこの人達が絶望する前に、私が絶望しちゃいそうだけどね。だってね……状況が状況だよ。私達は捕まってて、この肉体一つで鋼岩種を倒すのは不可能に近い。外では多分まだカタヤさん達が頑張ってると思うけど……腕のデバイスを見てみると、あれから十分程度経ってる。
 十分は普段なら短い……けど、戦闘での十分は長い。決着がついててもおかしくない時間だ。大規模な戦闘では流石にそんなに早く決着なんかつかないけど、今戦ってるのはカタヤさんとベールさんの二人なんだ。
 相手は何体いるかは知らないが、鋼岩種はそこまで数は多くないと聞いてる。数百規模だったかな? 幻獣種クラスと同じくらい……けどそれだと安心も何も出来ない。


 まあ幻獣種よりは種としてのランクは落ちるらしいけど……見た目頑丈そうなこいつら相手にはアンティカでも苦戦しそうだ。私は腕のデバイスに向けて言葉を発する。


「カタヤさん! 聞こえますか!?」
「無駄ですよ。ここから通信は通じません」
「でも、さっきは……」
「見てください」


 そう言われて私は自分の閉じ込められてる籠をみた。太い幹を円錐状に並べた牢屋っぽいのに私達は閉じ込められてるようだ。そしてその幹、一つ一つにはなにやら印? いや、鋼岩種の文字なのか……それが刻まれてて、淡く光って。


「これは結界なんです」


 そう言って一人の兵士が足元の小石を幹の隙間に投げる。するとバチッと言って小石は消滅した。どうやらこの場所プラスこの結界で通信は完全に遮断されてるようだ。


「逃げる事は不可能です」
「そうなんだ……」
「けど、フェアリー部隊が来てくれたのなら大丈夫ですよね!」
「ああ! だってあのフェアリーだぜ! 俺たち助かるんだ!!」
「えっちょ……」


 やっぱりそうなるよね。だってアンティカを皆最強みたいに思ってるし。けど実際はそんな事無い。確かに圧倒できる種もいるけど、他の種だって必死なんだ。だって誰だって死にたくないだろうしね。それぞれの力を出し切って向かってくる。そこに簡単な事なんかない。私達は弱い。それを忘れちゃいけない。必要以上に卑屈になっても困るけど……思い上がるのは別だ。


 けど今は変に負けるかも……とかは言わないほうがいいよね。その可能性は匂わせて少し冷静になってもらったほうがいいけど、こっちはこっちで頑張る……みたいなそんな方向性に持っていきたい。だって私がまだ絶望しないでいられるのはこの人達の期待があるからってのもある。


「皆さん、落ち着いてください。アンティカは確かに強いです。鋼岩種にだって簡単にやられたりはしません」
「ですね! 希望が出来たぞ皆」
「死を待つだけじゃないんだ!」
「でも、私達がここに居るのはとても不味い。どうにか脱出しないと、アンティカも本気を出せません。協力してください!」


 これでどうだ? 希望がありつつ、他力本願にならない感じで行けたと思うけど……皆さんの反応はあまり芳しくない。多分既に脱出しようといろいろとやったんだろう。でもそれでも無理だったから、もう後はアンティカ頼みになってるんだ。けど、自分たちの存在が足手まといであるとも彼らはわかってる。


「自分たちでは無理でした……が、貴方ならどうにか出来るかもしれません! 指示を下さい」


 多分この顔に傷がある三十代位の人が階級的に皆をまとめてるんだろう。この人の目はまだ死んでない。私はここでの足掻きを聞いたよ。


「なるほど、魔法では壊せなかったと。けどここを気にかける鋼岩種はいない」


 多分、自分たちの結界が人種程度に破られることなんかないと高をくくってるんだろう。確かにそれは正解だ。普通なら他種族の強力な魔法は人種では防ぎようも破壊しようもない。けど、それで仕方ないって思う種なら、今を生きてないよ。とっくに滅びてる。


 私はホルスターから銃を……銃を……あれ? 銃無いよ? 


「装備は取られてますが? 流石にそこまで不用心でもないようです」


 ですよねーー!! 私は今度こそ絶望した。けど何故かそれでも皆さん私ならなんとか出来ると思ってる。そんな視線が痛い。痛いけど……こういう期待が私に諦めるって事を許さないんだよね。ある意味脅迫だよ!!

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