美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ20

 一体何が起きたのか……私は荒野に居たはず。なのに……緑が生い茂る場所で鋼岩種に囲まれてる。三メートルを超える巨体の腕と足がやけに大きくて胴体と頭が変に細い奴ら。しかも目は触覚の先みたいな所についててそれはとてもつぶらだ。口は蚊みたいにストロー状になってて、何かを吸うみたいな形状だ。まさか血か? こいつらの主食は血なのか? 


 そんな顔が周りに一杯。そして空気を吐き出すような音がゴウゴウと言ってる。実をいうと巨体だからその針みたい形状の口もでかい。でかい注射器みたいだ。多分刺されたら致命傷になると思う。それだけでかいのを近づけてきて、そのつぶらな瞳をパチパチとする。私はその目に照準を合わせる。だってこんなデカくて硬そうな奴らにただ銃を撃ったってきっと通用しない。


 大体どんな生物も目とかが弱点なんだ。だから目を狙っとけば問題ない。多分。私の額には冷や汗が浮いてる。だって四体は居る。奥には実はもっといる。これは……私一人でどうにか出来る数じゃない。冷や汗だって出ちゃうよ。ぱっと見……ここがこいつらの住処? 何かの魔法で飛ばされたか、それか空間がなにやらなったか……わからないけど、一つだけ確実な事は――


(絶体絶命のピンチって奴ね)


 後ろの人達が居るから逃げる事も出来ない。そもそも、人種の足ではこいつらから逃げるなんて不可能だろう。だって歩幅が全然違う。やっぱり罠だった。けどあそこで見捨てるなんて……そう思ってると突然奴らがその足をドタバタしだした。その巨体でドタバタされたら、私達なんてたってられない。なんだかはしゃいでるようにみえるけど……まさか私が罠にかかったのを喜んでる? 


『ザザ……亜子! ……応答……ザザ……しろ! 亜子!』
「カタヤさん!」


 私は腕の端末からカタヤさんの声が聞こえた。私は必死に呼びかけるけど、向こうの声が一方的に聞こえるだけだ。どうやら私の声は向こうまで届いてないみたい。


『カタヤ様――スターのバイタルは健在です。無事なのを……じて、現状の報告を』
『その……りだな。亜子……こちらは絶賛戦闘中だ』


 え? っと思った。戦闘中? まさか鋼岩種と? これは不味いよ。だって今、プロト・ゼロは動けない筈だ。そうなると、カタヤさんとベールさんはプロト・ゼロを守りながらの戦闘になる。それは……とても戦いにくい筈だ。どうにかして戻らないと……いや……でも……どうやって? そんな事を考えてると一体の鋼岩種がこちらに腕を伸ばしてくる。それだけで体全体を覆うほどの影が出来る。


『こちらは……なんとか……ザザ……だから絶対……諦めるな!!』


 そんな通信は頭に入ってこなかった。だってこのまま腕を降ろされたら……私達はぺしゃんこだ。私は連続で引き金を引く。けど、それはカンカンと軽い音と共に弾かれた。ダメージなんて期待できない。そして振り下ろされた腕の衝撃が身体を襲った瞬間……私の意識は途絶えた。


(あっこれ死んだな)


 そう思った。

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