美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ15

「はあはあ……」


 モニターの何処を見てもワイバーンだらけ……流石にもう見飽きたよ。


『来ます。正面と頭上、更に斜め左下からです』
「こんのおおおおお!!」


 私はプロト・ゼロを操作して、まずは正面から迫る奴の攻撃を後方に宙返りして交わす。その際に上に居た奴を蹴り飛ばす。そして左下に迫ったワイバーンの頭をレイピアで突き刺した。そして直ぐ様引き抜いて、真正面から追撃してきた奴の口に腕ごとレイピアを食べさせてあげた。


「はあはあ……」


 ズボッと腕を引き抜くと同時にワイバーンは地面へと落ちていく。けどまだまだだ……もう何体倒しただろうか? 全然減ってる気がしないんだが……


「ゼロ、後何体?」
『残り百三十です』


 おかしい……増えてる。一人の担当分は百体ではなかっただろうか? それとも私の方にきてるとか? でもそれなら、カタヤさん達を抑えとく事なんか出来ない筈だ。私が粘れば、二人が駆けつけて――


『ちなみに数は五百余りに増えてます』
「なんでよ!?」


 ここら辺はワイバーンの縄張りかなにかなの? いや、きっとそうじゃない……そうじゃないよね。だって、明らかにこのワイバーンは頭がいい。まるで操られてるか、それこそとっても優秀な上がいるのか? というくらいにだ。わざわざアンティカのカメラの死角を利用したりしてくるからね。それはただ闇雲に突っ込んでくるモンスターが出来る芸当じゃない。


 ちゃんと考えて、情報を整理して、そして次に活かさないと出来ない事。それをこいつらはやってるんだ。こんな魔物が大量に居たら、今頃人種は絶滅してるよ。


『原因は不明。同じ軌道を描く様に飛んでるワイバーンが複数体見られます』
「それってつまり幻覚?」
『コピーという方が正しいのでは? 一定の動きだけを真似るコピーを出して数を水増ししてると思われます』
「そんな能力がワイバーンにはあるの?」
『私の中の情報ではありません』


 だよね……これは多分……第三者の介入を疑ったほうがいい。ワイバーンの組織的な動きに、無いはずの力の行使……これらの目的はここで私達を潰すこと? けど、それにしては攻撃が消極的な気もする。だって数は圧倒してるんだ。それこそ間を置かずに波状攻撃でもされたら、いくらアンティカと言っても不味い。それをせずにじわじわとなぶるように……いや、確かめるように攻撃してる気がする。


 まさか、アンティカの事を知ろうとしてる? そして目的地への妨害も兼ねてるとしたら? 最悪の想像が頭をよぎる。


「カタヤさん! ベールさん! こいつら……もしかしたら!」
『ああ、分かってる』
『なんとか合流するぞ。それぞれのアンティカの意志で合流地点を算出しろ』


 カタヤさんとベールさんも流石に気付いたみたい。でもこれは大問題。確かめる為にも、ここでワイバーンの相手をいつまでもしてるわけにはいかない。それに手の内を全て見せる事も駄目だ。


「ゼロ……全部を出さずに私がやれて、二人に合流できる指示をお願い」
『了解ですマスター。今から胃の中の物は吐き出しておいてください』


 そこまで!? 冗談だよね? けど、この数を突破するにはそんな状態になるような事をしないと行けないのかもしれない。確かに私もこの中が臭くなるのは嫌だ。私は指を喉の奥に突っ込もうとして――


『冗談です。敵の眼前で操縦桿から手を離さないでください』


 たんたんとそう言われた。この場面でそんな冗談やめてよ! 私はヤケクソになりながらブーストを発動させた。

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