美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β34

 あれから三日が経った。あの後、ティアラ様を保健室に連れて行って、その後オルレイン様にその事を伝えて任せた。確かに元に戻ってたから大丈夫だった筈。三日経った訳だけど、あれ以来ティアラ様とは会ってない。多分向こうが避けてるんだと思う。焼却場での事はアナハが記憶消したけど、私に告白した事実は消えてないからね。
 多分、とても恥ずかしがってるんだろう。公衆の面前で告白しちゃっからね。それから私達は教員棟へいった。そこで使用人のトップの人に会った。なかなかに厳しそうなメイドの人だった。私たちにもとても事務的で、まさにメイドのプロって感じの人だった。どうやらかなり昔からいる人のよう。顔に皺がきざまれてたけど、そのメイド服にはシワひとつなかった。


 で、その人に取り巻き二人に教えてもらったその子の事を聞いた。すると何やら少し考えて、案内してくれた。それは私達が住む寮とは違う、結構古びた建物。それになんか日当たりもよくない感じの場所にひっそりとあるような建物に案内された。そこがどうやら使用人さん達の宿舎らしい。格差を感じたよ。私は恵まれてるんだなって思った。


 まあ分かってけど……私だって辛い時期一杯あったし。けど、幸せって慣れるんだよね。それは不幸も同じだけどさ……いつの間にか私は今の生活が普通になってるもん。でもそれは私が自分自身で掴んだものじゃないんだよね。私は与えられただけ。ラーゼの慈悲に甘えてるんだ。だから私はあいつに返したいものいっぱいある。


 とか何とか思いつつ、中に入って例の子の部屋へ。私達の寮は基本二人部屋だけど、ここはどうやら六人部屋とかみたい。ベッドが6つあったもん。天上から床に掛けて、三つずつのベッドが両端に備えられてた。てかそれだけしか無いみたいな……ベッドの質も私達のみたいにフカフカではなくて、結構硬い、しかも掛ける物は布一枚。


 そのベッドの一番下で彼女は眠ってた。顔と腕しか見えないけど、そこだけでも痣が複数見える。しかも顔とかはれてるし……唇は切れてるのがわかる。痛々しい……ラーゼと同じ位かな? なんだかこの娘を見てると、昔の自分を見てる様な気になった。私は事情を聞きたかったけど、彼女は目覚める様子はなかった。そしてメイド長の人は、あくまでも誰がやったかとか、憶測ではなにも話してくれなかったよ。それがメイドらしい。
 とりあえずお土産の品を置いてきたけど……あの娘は大丈夫だっただろうか? まだあの娘がサーテラス様のお世話をしてるのかな? あの後も何度か行ったけど、迷惑らしくて会わせて貰えなかった。どうやら主に無断でそういう事をするのは無礼らしい。
 本当なら先にサーテラス様にその許可を取らないと行けないようだ。けど……そんなことしたら……ね。ってなわけであんまりあの娘の事はわからない。


 それから放課後に亜子を訪ねた。軍事教練を受ける人達は寮から違うから、結構歩いた。そして亜子のクラスは野外訓練に行ってるって言われたんだよ。そういえばそんな事をラーゼがいってたなって思った。


 そして今日が亜子達の野外訓練が終わる日なのだ。幸いにして、この三日間サーテラス様に動きはなかった。逆に何をやってるのかとても不気味ではあるけどね。私とアナハは放課後を待って再び亜子の元へと行く。寮監に約束を伝えて部屋に案内してもらう。こちらは華やかではなくて、なんだか近代的というか……そんな感じの寮だった。中はね。外は周りに合わせて作られてるみたい。


 私達の寮はまさに貴族とかが使うために豪華で豪奢に作られてるけど、こっちはもっと機能美を追求してる感じだ。扉も寮監さんに貰った来客用のカードキーで開けた。そしてその先で見たものに私は衝撃を受けた。


「あ……亜子?」


 反応はない。ただ彼女は椅子に座って、机の上に広げた銃をメンテしてた。お……女の子の部屋で見る光景じゃないよ!? 一体亜子になにが!? それはそれはとても心配になる光景だった。

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