美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β20

「うう……頭が痛い」


 体調戻す為に連れ回された筈なのに、更に体調を悪くさせてどうするんだってラーゼには文句言いたい。ラーゼがシルル様と話す間、手持ち無沙汰になった私は、給仕の人が持ってるグラスを拝借。そして一口飲んだ。するとあら美味しい……と思ったんだ。なんだか普通の飲み物にない刺激があるなーって。それで一人ガブガブ飲んでたら……途中から記憶がない。
 気づいたら、寮の自室にいた。ごめん……ラーゼのせいじゃないね。今にして思えばアレは多分お酒だったんだろう。私はそうとは知らずにガブガブと飲んで酔っ払ってしまったんだ。


 起きたときにはすでにラーゼはいなくて、一体自分がどんな醜態を晒したのか……ちょっと怖い。お酒が入ると人が変わるって言うしね。自分はそんな訳ない……と思いたいけど……どうだろうか? ラーゼが何も書き置きとかも残してなくて、あれからどうなったのか一切わからないし、そもそもなんで私まで連れてったのか……建前として気分転換とかいってたけど、きっとそれだけじゃなかったはずだ。
 けど記憶がない私が何かの役に立ったのかな? 既に、寮の外はガヤガヤと音がする。皆さん既に起きて朝食に行ってるんだろう。寮にも食堂はある。てか寮毎にある。完全に独立してる食堂とは大きさとかは比較にならないけど、寮の生徒達が軽く朝食を済ませる分には問題ない作りの食堂だ。しかもこちらは生徒が自由に使えたりもする。


 まあ使ってる人はそうそういないけどね。なんせこの学校に通ってるのは貴族や有力な商人とかの子息子女達。皆さん自分で料理なんてするわけない。私は頭を抑えつつベッドから起き上がり、シャワーに向かう。着替えさせられてたけど、お風呂までは入れさせられてないだろうからね。私の部屋にはシャワーは無いから着替えとタオルを持ってコソコソとね。
 部屋にお風呂があれば良いんだけど、そこまでの設備は貴族の中でも大貴族位の人達の部屋にしかないらしい。たくさん居るからね……限定するのはしょうがない。私の部屋も本当は二人部屋だからね。けど同居人はいない。多分私が中途半端な時期に入ってきたからだろう。まあ助かってるけどね。二人部屋を伸び伸びと使えるのはありがたい。掃除も必要ない。だって授業を受けてる間にそこら辺は学園が雇ってる人達がやってくれるのだ。
 至れり尽くせりだよ。


 ガチャ――と扉を開いて脱衣所に入る。あんまり使ってる人はいないよう。私はいそいそと服を脱いで、タオルで前を隠しながら個室に滑りこむ。もっとプロポーションが良かったら堂々とできるかもだけど……私はまだまだ貧相なのだ。


「んー気持ちいい!」


 温かいシャワーが私の肌を打ち付ける。身体にたまったお酒を流してくれる様な感覚。けどそんなゆっくりもしてられない。朝食は今日はいいとしても、流石に二日連続で休むわけにもいかない。だって皆心配……


「心配してくれるかな?」


 不安になった。もう皆サーテラス様の事ばっかりで私の事なんて忘れてしまってるかも……そんな考えが頭をよぎる。キュッと締めてお湯を止める。ピチャンピチャンと私から落ちる水滴を少しばかり眺めてた。


「大丈夫……私にはちゃんと帰る場所がある。一人ぼっちじゃない」


 そう言い聞かせて私は顔をあげる。するとその時、聞き慣れた声がシャワー室の一角から聞こえてきた。


「ええ、わかってますわ。大丈夫、貴方の言うとおり……この学園はもうすぐ私の物です。感謝してますわ魔王さん」

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