美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β18

 ラーゼが来たその日の夜。私は連れ出されて学校の外に出てた。中々この学校から外に出るのは長期休暇くらいしか許可が出ないくらいに厳しいし、難しい。そう聞いてたんだけど……なんかあっさり許可が出た。この学園は王族も通ってるし有力な貴族の子女も沢山いるから、警備の為にそう簡単に出入りできない様になってるって話だったんだけどね。
 多分ラーゼの息がすでにかかってるんだろう。お願いしたら簡単だったよ――とかラーゼは言ってたけど、そんな訳ない。そんな適当な警備ではないでしょ。だって王族いるんだよ。何か問題があの学園で起きたら、警備の人達はきっと処刑とかだよ。そう毎回王族がいるわけではないだろうけど、今は居るしきっと警備だって最大レベルに成ってるはず。


 そんな緊張感を常に持ってる人達を簡単にラーゼは落すんだから……ほんと恐ろしい。しかもラーゼはまだまだ子供って見た目。普通の大人なら、理性が働く物だ。けど、そんな理性をラーゼの美は簡単に崩壊させる。てな訳で私達は、学園から出て大きな建物へとダンプで来てた。そして二人共御めかしして、ドレスを着てる。私は水色のシンプルな奴で、ラーゼはやっぱり黒を基調にしたやつを着てる。けど、前の奴とは違う。どうやら新調したみたい。
 まあ貴族にはドレスがいっぱい必要だってアミーさんが教えてくれたから、領主であるラーゼはやっぱりドレスがいっぱい必要なんだろう。けどやっぱり黒なのは、それが一番自分を引き立てるとラーゼは思ってるのかな? 


 後は単純に目立つってのもあるかな? ラーゼ目立つの好きだし。それにシミもホクロも全く無い、真っ白な肌が黒い生地にほんと映える。明るい色の髪もそうだよ。神々しいとさえ思える。やっぱりラーゼの隣には立ちたくないね。私の存在が霞に成って消えそうだよ。化粧もすっごく気合い入れてやってもらったのに、ほぼ素のラーゼに注目は集まるんだもん。


「ラーゼ様、今日も人知を超えた美しさ、ありがとうございます」
「ん、こちらこそこんなパーティーに呼んで下さって光栄です」


 そういうラーゼの周りには大人の男性たちがいっぱいだ。広い会場に沢山の食事……そして皆さんしっかりした服装だ。いかにもお金持ちだろうなってわかる。こんなパーティーによく出てるのだろうか? ズルいねラーゼは。食事もめっちゃ美味しいじゃん。学食の食事も不味くはない。けど高級感はこっちが上だね。


「ラーゼ様、そちらの初々しい女性は?」
「彼女はキララ。私の秘蔵っ子なの。可愛いでしょ?」
「ええラーゼ様と違って親しみやすい感じですね」


 それ褒めてますかね? 私には褒めてる様に聞こえないんだけど……親しみやすいって普通ってことだよね? 


「キララは王立学園に通ってるの。将来の為にね。それになんと生徒会よ」
「おおー王立学園の生徒会ですか。それは凄い。あそこの生徒会はとても優秀でないと所属できない筈ですよね」
「まあ、私の秘蔵っ子だからね」


 何故か私の事でラーゼが鼻高々してる。そこは私にさせてよって思うも、こんな大人ばかりのところであんな堂々と私は出来ないから、まあ良いのかな? それにラーゼが私の事を誇ってくれることがなんだかとても嬉しい。そう感じてた。


「そういえばあの方も王立学園で生徒会をやってらしたんですよ」


 そう言ったその視線を追うと、パーティーの隅で壁によりかかりグラスを傾けてるちょっと薄汚れたスーツの人が居た。髪もなんか伸びてボサボサだし、悪いけど私以上に場違い感がある。


「ああ、それじゃああの方が?」
「ええ、お望みの方です」
「ふむふむ、ありがと」


 そう言ってラーゼは唇に当てた指をその人の鼻先に当てた。それだけでその人の瞳の中にハートが見えた気がしたよ。そしてそんな事をしてもらったその人は顔を真赤にしながら最上級の礼をラーゼにしてた。普通は王族にしかしないような礼だよ。それをラーゼに……しかも年端も行かない少女にするって絵面がやばい。そんな事を思ってるとラーゼは私の手を引いてくる。


「さ、ここに来た目的を果たしに行くわよ」
「目的?」


 訳がわからないまま、私は壁で一人飲んでる人の傍まで連れてかれた。私達の気配に気づいてたのか、その人は座った目でこっちをみてくる。やばいよこの人。絶対にそこらのチンピラでしょ!? と私は思った。

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