美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β13

「ああーーーーもう!!」


 私は自身の枕を引きちぎり、憂さ晴らしをする。そこらに有ったものも投げて壊しまくる。一通り壊しまくって部屋の中は滅茶苦茶だ。私はメイドを呼んで、早く片付ける様に喚き散らす。こうやってストレス発散するのが貴族というものですわ。一体どうして……生徒会の皆様があんな田舎者風情を……私が正しい筈なのに。身分とは絶対。
 そこに綻びを自身からつけるなどと……国のもっとも重要な役職に着くであろうあの方々が一番やっては行けない事です。なにせそれは国を滅ぼすキッカケになりかねないもの。平民は平民。貴族は貴族。そうでないと、愚かな平民達はすぐに助長して国を傾ける。自分達にどんな不利益が起こるかも彼等は考えられない。そんな頭は無いのですから。
 導くのは私達の様な選ばれた者達でないと……けどティアラ様が選んだのは……


「――つっ」


 再びイラッとした私はメイドが床を拭くために持ってきてたバケツを蹴り飛ばした。飛散する水は私のベッドの下に敷かれてるカーペットにまで伸びた。私はそれを見て更にイラッとして「何やってるのよ!?」と言い放った。小さな少女であるそのメイドは私の張り上げた声にビクッと震えた。そして「申し訳ありません」と呟いて頭を床につけて這いつくばる。
 そうこれが平民だ。そして私はそれを見下げる立場。


「さっさと片付けなさい。私は食事を取ってるからそれまでに片付けるのよ。出来てなかったら、今日の貴女の食事は無しです」
「承知致しました」


 そういって私は部屋から出る。さて、戻ってきた時、もしも綺麗に片付いてても、何かを壊してあの娘のご飯は抜きにしよう。そう考えて憂さ晴らしにウキウキする。


 
「なん……ですって?」


 あれから数週間たった。日々、キララ嬢に嫌がらせしてた私に突き立てられるのは生徒会長でありこの国の第三王子オルレイン様のものだった。


「だから、君は貴族失格だと言ってる。やりすぎたんだサーテラス嬢」


 食堂という衆目の場で私は固まる。生徒会の方々が皆、私に強い視線を向けてる。そしてそんな中に彼女が……キララ嬢がいる。


「君のキララ嬢への行為は調べさせて貰った。本来なら退学も考えることだが、キララ嬢からの配慮もあって今回はしばらくの謹慎処分とする。君はもっと貴族というものを考えたほうが良い。私達は神ではないんだ」


 何をオルレイン様が言ってるのか……正直聞こえてなかった。王族の言葉を聞き漏らすなんて貴族としてあるまじき事。だが、この時の私の頭には彼女のキララ嬢の事しかなかった。


「皆さん……やはりあの女に……あの女はこの国を乗っ取るつもりなんですよ! あのライザップと同じように! その女は尖兵なのです! どうしてわかってらっしゃらないの!! なんで……なんで! 私は誰よりもこの国のことを思って行動してますのよ!!」


 そう言って私はズカズカと進みキララ嬢に向かって手を伸ばす。けどそれは許されなかった。傍に居た生徒会の人々に取り押さえられたからだ。そうして私は無理矢理、部屋に閉じ込められた。何も間違って無かった私が……


「こんなの絶対におかしい……」


 カーテンも締め切って明かりもつけずに何日も過ごした。ただ食事だけをバリボリと貪って、そしてあのメイドに無理難題をいって怒鳴る。それしかやることがないのだ。けどそんなある日だった。


「私は間違ってなんかない……」
『そうだね。君は何も間違ってない。悪いのはあの女。あの悪魔の女だよ』


 闇の中からそんな声が聞こえた。そして私を肯定してくれるその声に、私は心地よく耳を傾ける。

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