美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β1

 新しい風が吹く。大きな鐘から聞こえる綺麗な音が鳴り響き、五階建ての豪華な建物がいくつも連なる立派な建造物に向かって私は歩きだす。ここが私が……いや、私達がこれから通う『セルラテント王立学園」だ。服装は二人共お揃いの紺色の上下揃った地味な服だ。制服とかいうらしい。何の意味あるのか疑問な肩から背中側から胸のちょっと上までを覆う布が少しだけ特徴的。私的にはちょっと地味。けどとりあえずスカートを短くしておいた。
 亜子に聞いたら、これが亜子の世界では普通だったらしい。中々に過激だとおもうけど、可愛いからいいかな。ラーゼも可愛いは正義って言ってたし。それに私だって少しは見た目に自信がある。
 流石にラーゼ程じゃないけど、良い物を食べる生活をしてたら、髪も肌もとても綺麗になった。化粧水とか、ラーゼの奴はお試しに買って見てるんだけど、あいつには結局必要なくて、私に押し付けて来るんだよね。お陰で私は高級品を湯水の如く使うことが出来たおかげだと思う。亜子にも分けて上げてたんだけど、亜子はそもそも元が肌荒れも何もしてなかったから、私ほど変わってはない。
 けど、心持ち変わったとは言ってた。


「この世界でも制服で学校とか考えなかったよ」


 となりの亜子がそういう。亜子は結構辟易してるみたいだけど、私はこれからの生活にワクワクが止まらない。領地での生活も楽しかったけど、同年代ってあんまり居なかったし、いたとしても皆屋敷の奉公とか、それぞれの家の手伝いとか、今領地は仕事で溢れてるから、それらで関わる事なんか無かった。てか、関わったとしても、あそこでは私は聖女として崇められてるから、対等の存在なんかにはなれない。
 それが嫌な訳じゃない。そんな訳はない。だって誰かから頼られるのはとても気持ちがいい。感謝されると心が満たされる気がする。けど私は何もわからずに力に頼ってた。それじゃいけないと思ったんだ。
 だから私はここで沢山の事を学んで、そして立派な聖女となる。門の所で学生証を翳すと、自動でドアが開いた。流石は首都……ハイテクだ。そして中に入った所で見知った顔が待ってた。私はパアッと顔を輝かせる。


「やあ二人共。とても似合ってるね」


 そう言って私達を褒めてくれるカタヤさん。その金髪の髪が風で靡いて、細める目がとても優しい。惜しむらくはその殆どが亜子に向いてるって事。ラーゼが言ってた……妹と瓜二つの亜子にカタヤさんは依存してるって。確かにそれは見てればわかる。だっていつだって亜子の傍に寄ってくからね。けど……私的には亜子よりもラーゼのほうがね……ラーゼを見る目はなんか違う気がする。


「けど……その脚は……」


 カタヤさんは私達の脚に釘付けである。やっぱり刺激的過ぎたかな? けど、見られてるって思うとドキドキする。男の人は女の子の脚とかに興奮するのかな? 視線を感じるとそわそわしちゃうね。


「可愛いでしょ? てかこの位許してくれるよね?」
「まあ、校則にそういうのは無かったはずだが……貴族子女とかがこの学校には多いから問題になるかも知れない」


 亜子の言葉にカタヤさんはそう答える。最初の丈は膝が隠れる位だった。みんなそこで妥協してるって事だろう。貴族子女だって、可愛いをしたい筈。


「大丈夫、きっとなんとかなる!」
「謎の自信だね。まあ、男子からは歓迎されるんじゃないかな?」


 カタヤさんのそんな言葉に、私はもじもじしながらこう言うよ。


「カタヤさんは……脚見えるの歓迎してくれますか?」
「…………ん……そうだね。魅力的だと思うよ」


 彼の言葉に私は自信をつける。ラーゼの奴と比べたら、ちょっと太めかな? とかおもっちゃうけど、アイツが完璧過ぎるだけで、私の脚は決して太い部類ではない。そう確信した。


「とりあえず教員棟に行こうか。教職員の方々に二人を紹介しよう。その後に寮の方に案内してもらうといい。流石にそこまでは付き合えないからね」


 男子と女子は別の寮なのだ。別にカタヤさんなら来てもらって良いんだけど、それは私の一存で決めれる事ではない。確かカタヤさんはここの最上位生なんだよね。だからわざわざこんな世話焼いてくれる。まあ殆どの所は亜子が居るからなんだろうけど……それでも、こうやって迎えてくれる事は嬉しい。それから私達はカバンひとつを持って、職員棟へと向かって、そこでそれぞれの教員と会い、それから寮へと向かった。学校に本格的に参加するのは明日からなのだ。
 部屋は亜子とは別だった。そもそもが軍事教練を受ける人達とは授業内容も違うので、寮から違った。女子棟も幾つか有ったのだ。


 亜子と別れると一気に寂しくなった。けどここでやっぱり帰る! なんて言えない。私は案内された部屋で、届けられてた荷物の荷解きを始めた。

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