美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#88

 何か悪寒がした気がする。両腕を抱えてさすってると、最後に残ってたユニコーンがまさにユニコーンになった。やっぱりというかなんというか、蛇が相対してた奴が一番強い奴だったみたい。まあ強者になれば、そういうのわかるって言うよね。強さダダ漏れしてくれてたら私にもわかるんだけど、隠されてると流石に私じゃ分からない。
 でも隠すのを止めたユニコーンはかなりの力を感じる。それこそ、地面が揺れる位の力を。他の奴等とはどうやら格が違うよう。アレが本物のユニコーンなのだろう。


(大丈夫なのかな?)


 そう思う。けど、私の視線に蛇が気付いたみたいでこっちを見てウィンクしてきた。気持ち悪。まあだけど、大丈夫ならそれでいい。私は私がやることをやりましょう。


「ねえ、カタヤだっけ? ネジマキ博士達と合流させてあげよっか?」
「仲間に何をした!!」


 そう叫んだであろうカタヤの声は音にはならなかった。なんとなく叫びそうだったから、音を消しておいたのだ。


(こいつすぐ切れるんだよねー、けしとこ)


 で、消えてくれた。力の元が私の思ってる事でも理解してくれてるとしか思えない配慮だよね。普通はこんな適当で魔法は発動しないらしいんだけど、私の場合は勝手に出来る。もしかしたら私の蓄えて来た魔術回路が勝手に最適化してるのかもしれない。それもどういうことだよって感じだけどね。少し叫んでたカタヤは自分の声が聞こえてこないのにようやく気付いたのか、喉をさすったりしてる。


「な」「を」「た」


 一文字ずつ声を戻してみる。うん、なんて言ってるか全然わかんないね。私は一人でクスクスする。するとどんどん顔が赤くなるカタヤ。震える拳。けど流石に女の子には手を上げないのかクルッと背中を向けて大きく深呼吸してるのか肩が上下してる。


「どう落ち着いた?」
「ああ、君にこちらの主張は通らない。全ては君の思いのままなのだろう」
「まあね」


 実際、そんな思い通りに動かしてるわけじゃないけどね。大体思いつきだし。そもそも私戦術とか戦略とか全然しらないし。こうしたいなーからこうされると嫌だなーを想像して、ならこうしてやろうと思うだけ。だから先の事なんてよくは分からない。まあ大体なんとかなるでしょ――の精神でやってるからね。


「それでどういうことなのかしら?」


 その年でも起伏の少ない身体をしてる女性がカタヤの代わりに聞いてくる。きっとこの人は自身の身体にコンプレックスを抱いて、全ての人が自身の涼やかな平原を指差してると思ってすごしてきたためにきっとこんなつり目になってしまったんだろう。可哀想に。大丈夫、好みは人それぞれだから。大きいだけが利点じゃない。ちっぱいを利点と感じる人も居るから! 


「がんばって、まだ諦めには早いよ!」
「うん? そ……そうね、まだ私達は諦めてないわよ」


 なんか噛み合ってない気がするけど、まあいいか。私はコホンと咳払いして語りだす。


「言った通り、ここからあなた達を逃してあの空挺に戻してあげようかって話」
「だけど、ガロンの軍勢が周りを囲んでるわ」


 確かにお姉さんの言うとおりだね。奴等はユニコーンに加勢しないが、動かないから集団で移動なんて不可能に思える。でも私なら可能なのだ。不可能を可能にする美少女と呼んでくれて構わない。


「転移させればいいだけでしょ? 今の私に不可能はない」


 多分。一つのダムが決壊するかも知れないけど、一つ位まだいいよ。それにそうなったら蛇たちも強化出来るでしょう。まあ彼等の身体への不可は半端ないだろうけど。お手軽パワーアップをしてる訳だけど、リスクは当然ある。それは限界値以上の力は普通に身体を壊すということだ。私が供給してる力は余裕で彼等の限界値を超えてる。
 だから淡々とダメージは受けてるんだよね。きっと次の日くらいにとてもだるくなるでしょう。過信しすぎると死ぬでしょう……天気予報みたいにいってみる。


「それで僕達が逃げていいのか?」


 ようやくカタヤが話に戻ってきた。まっすぐ見つめてくるカタヤ。なにこいつ、私のこと好きなの? 


「逃げてもいいけど、そうするかな?」
「どういうことだ?」
「行けばわかるよ。ここじゃ言えない」


 だって誰が聞いてるかわかんないし、慌てて逃げ出してもらっては困る。私は蛇がユニコーンを掃除したら、ここのガロン共を一掃するのだ。そして……まあここからはまだ良いよね。


「とりあえずダミーは置いとくから、安心して行っていいよ」
「君の言うことを信じれと?」
「信じなくてもいいけど、わかってるでしょ?」


 私はカタヤの服の袖を引いてその顔を近づかせる。そしてくっつきそうな距離で言ってあげる。


「あなた達に拒否権なんてない。だから……ね」


 私が微笑むと、カタヤはその目を見開く。これは落ちたな。自分の美しさが怖い。いやもう最高だけどね。とりあえず大人しくなったカタヤから離れてみんなを一箇所に集める。そしてなにやら適当な呪文を唱えて、いかにも魔法使ってますアピールをしとく。そしてカタヤ達を転送した直後にダミーを作り出した。


「ん? あれ?」


 何やらあの子が二人いる。私お気にの生体兵器、兵器っ子である。向こうも自分が二人いてびっくりしてるみたい。ダミー凝視して、そして私をみる。とりあえずダミーは消しとくか。同じの二つじゃおかしいし。


「ごめんミスっちゃったみたい」


 私は軽くそういった。めんごめんご。私自身よくわからずに使ってるから、こんなこともあるよね。けど何やら兵器っ子はご立腹みたい? 私を超睨んでた。

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