美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#79

「まさか……あの方が……そんな」


 そう言って驚愕に打ち震えてるラジエル。けどそれも無理はないかもね。状況は再び彼にとって絶体絶命へと転んた。あのお姉さんがどんだけなのかは私は知らないが、相当なやつだったのは間違いない。この私を一度は追い詰めたしね。


「ラーゼ酷い有様ですよ」


 そう言って来る蛇。私は自身に目を落すとその意味がわかった。なるほど、確かにこれは酷い。ひどくイヤラシイ感じになってる。血とかの跡は綺麗になくなってるけど、ダメージを受けた服までは戻ってない。だからその部分は破れてる訳で、おへそとか下乳とか見えてる。まあ私に恥ずかしい部分なんて皆無だから、問題はない。
 安売りする気は無いけど、このくらいはね。


「アンタが来るのが遅いから痛い思いしたんでしょ。反省しなさい」


 実際死にかけたし……なんとかなったから良いような物の、まじ危なかったから。


「そうは言いましても、まさかユニコーンを引っ張ってくるとは思ってませんでした。空間まで隔絶されると手のうちようが無いんですよ」


 いつもの調子でそう蛇は言ってる。けどそれって私が機転効かせなかったら本当に終わってた可能性大じゃん。しかもユニコーンって……


「なにユニコーンって?」
「幻獣種の一つですよ。幻獣種は上位種に数えられる程の力を有した種でして、我ら獣人の上位互換の様なものです」
「え? まさかこの大陸の一番デカイ国って……」


 その幻獣種とかいうのの巣窟? それはかなり不味いよね。けどどうやら私の心配は杞憂に終わりそうだ。


「そこら変は心配はないです。幻獣種は数が少ないですし、それにその国は彼等の国では無いはずです。幻獣種はそれぞれの種で村単位の数しかいないはずですから」


 え? それじゃあ私は今、天然記念物並の貴重生物殺したくない? 動物愛護団体が煩そうだ。いや、この世界にはそんなの居るのかしらないけど。


「つまりラジエル達は一番でかい国じゃなく、ユニコーン達に助けを求めたって事?」
「普通は幻獣種とはそうそう接触出来るものでは無いんですがね」


 運が良かったと? けど仲間殺されて、ユニコーンは損しかしてないね。てかさっきのお姉さんだけなのかな? あの人だけが助力してたの? 村規模の数は居るんだよね? 全員が全員戦闘タイプではないとか? 


「上位に数えられる種はどれも例外なく強いですよ。そういう肉体と力をもった種に生まれてるということですから。戦えない者などいないでしょう。まあ、戦闘が上手いか下手かは定かではないですが」


 私の思考を読んだのかそんな事を補足してくれる蛇。その種に生まれるだけで勝ち組とか、差別バンザイな世界だね。まあ世界なんてそんな物だと思うけど。


「さてラジエル殿、貴方のクーデターはここまでですか? 残念ながら貴方が担ぎ上げた前獣王の子という方には退去して頂きました。これ以上なにも無いのなら、自害された方が賢明かもしれませんよ」


 蛇は優しい声で死ねとそう言ってる。まあクーデターしようとしたんだし、殺されるのは免れないよね。私がうさぎっ子は助けるけど、他は知らないし自分一人で責任を全部被って死ぬ――その選択肢もあるにはあるかもね。てか蛇は既にラジエルが担ぎ上げて選定戦に出してた奴殺したんだ。中々に哀れそうな子だったけど……


「……まだです。まだ終わった訳じゃない!」


 そういったラジエルの指の先には小さな魔法陣が見えた。そして次の瞬間、宮殿に衝撃が走る。


「なに!? これ?」


 ちょっと立ってられない。それに瓦礫とかも飛び交ってこのままじゃ不味い。


「砲撃? まさかラジエル! 貴方こそこの国を売る気ですか!?」
「違います。私はただこの国を救いたい! 彼等もこの方達も協力者です!」


 何を言ってるかわかんないけど、いつの間にかラジエルの周りにはさっきのお姉さん同様の角を生えした老若男女が十人くらいいた。やっぱりユニコーン事態が協力してると見るべきのよう。そして彼等の瞳は全員私を向いてる。なんか目をつけられてるっぽい。


「彼女を倒せないのなら、全ての上をすげ替えてでも……この国を元にもどしてみせる」
「そして貴方が王に立つと……そういうシナリオですか」
「違う! 私は――」


 ラジエルの言葉は最後まで聞けなかった。何故なら周りのユニコーン達と共に消えたからだ。ラジエルの奴も相当追い詰められてたんだね。いつもイケメンスマイルしてたから案外平気だったのかと思ってたけど、それなりに壊れてきてないあれ? そもそも上を全てすげ替えて、それで元通りとはこれいかに? まあ全ては私のせい。
 甘んじて受けようじゃない。そして最後であろうラジエルの足掻きも潰してあげる。崩壊してく宮殿の壁が頭上に降り注ぐ。けど焦る事などない。


「蛇、退けて」
「わかってます」


 蛇は二本の鞭で持って全ての瓦礫を弾き飛ばす。ほらね。力を使うまでもない。私は使う側なんだよ。空には沢山の船が君臨してる。靡く旗はライザップの物ではない。あれはきっとこの大陸一の国家の軍隊だろう。やっぱりそっちにもいってたか。ユニコーンに大陸一の軍隊……それに寝返った獣僧兵団もいるだろう。私達は不利だ。けど……ラジエルは理解してないね。
 私にとってこの国は救うべき場所でも守るべき場所でもないって事を。自身で引き金を引いたこと、後悔させてあげる。


「楽しくなってきたと思わない?」
「確かに久々に血が沸き立つ気分ですよ。まああの夜程では無いですが」


 そんな軽い言葉をかわしつつ、私達はここでの最後の戦いを始める。

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