美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#72

「ネジマキ博士、プロト・ゼロ使わせて貰うわよ」


 アンティカが格納されてるドッグまで来て急いでプロト・ゼロの所まで来た。適当にそこら辺に居ると思って声を掛けたネジマキ博士は丁度プロト・ゼロの所にいた。何やら装置をいじってる。何やってるのかは知らないが、取り敢えず動かすからどけてもらわないとね。


「使うじゃと? プロト・ゼロはまだメンテも解析も終わっとらん。動くかどうかもわからんぞ!」
「なんとかなるでしょ。ピカピカじゃない」
「そういうことではない!」


 全く、何がそんなに心配なのか。素人目には完璧な状態にしか見えないんだけど? でも何言われても使うんだけどね。だって今は緊急事態だ。


「いいからさっさと退きなさい。これは命令よ」
「ええっと、私が操縦するの?」
「他に誰が居るのよ」


 アホな事を言う亜子にきっぱりと言ってやる。すると呆然としてアンティカを見上げたあと、じっくり数秒使った後にこういった。


「むりむりむりむりむりむりむりむりむりむりむり! 絶対に無理!!」
「大丈夫大丈夫。多分、どうにか出来るから」
「ふわっふわっ!? なんの自信にもならない言葉だよ!」


 ふむ……考えてみればそうかもしれない。でもこっちも別に根拠があるわけじゃないからね。説明しようがない。本当にただなんとなく出来るんじゃね? てな感じだし。そんな事を考えてると再び大きく船が揺れる。この船それなりにデカイし、良い的だよね。どのくらいの耐久性があるかわからないが、今はもうそこまで獣僧兵団も来てるだろうし、取りつかれたりしたら厄介だ。中にまで入られたら人数差的に終わっちゃう。


「取り敢えず一回やってみましょう。大丈夫、自分に自信を持って。確かにちょっと地味だけど、メイクとかすれば亜子も結構いい線いくから!」
「なんのフォロー!? 逆に自信なくなるから!!」


 あれ? 駄目だった? 決してブスじゃないよって言いたかったんだけど。


「待つのじゃ! アンティカに乗るなら攻めてアクティブスーツを着るんじゃ! その子ならミリアのスーツが合うはずじゃ」
「ミリア……」


 なにやら亜子がその名前に反応した様に思えた。けど今はそれどこじゃないし、スーツなんて着てる時間が惜しい。


「それ何か意味あるの?」
「アクティブスーツは操縦者のバイタルチェックにアンティカとのシンクロを上げる効果もある。生存率も上がるんじゃ」


 なるほどね。実際バイタルチェックとか生存率は今はどうでもいい。けどシンクロ率的な物は重要かもしれない。だってやっぱりソレが高いほうが良いんじゃないかな? 少しでも上げてた方がアンティカが動く確率が高くなるだろう。


「それじゃあさっさと着替えてきてよ」
「うむ、こっちにこい」


 そう言って亜子はネジマキ博士に連れられていった。外を覗くと、デッカイ鳥に乗った獣僧兵団が弓を射って来てる。それぞれ魔力で強化されてるのか、色とりどりに光ってる。ただの矢なんて思えないね。あれは結構不味い。しかもこの空挺、武装とか無いのも不味いよね。打たれ放題。多分迎撃はアンティカ任せなんだろう。


「お待たせ……」


 そう言って現れた亜子は真っ赤で体のラインが丸見えなピッチリしたスーツに身を包んでやってきた。どうやらほんとミリアって子と同じサイズだったらしい。やっぱりどう考えても何かある。繋がりが。
 私は取り敢えず、恥ずかしそうにしてる亜子に言ってあげるよ。


「凄く似合ってるよ。なんかエロいし」
「エロい言うな!」


 でもこんなエロい服を合法的に着せるとか、ネジマキ博士もやるわね。てかそのネジマキ博士はいない。あんまりウロウロされたくないんだけど……きっとアンティカの様子とかパイロットの状態とかがわかる所にいるんだろう。


「じゃあ行くわよ」


 私達はプロト・ゼロへと乗り込む。想像よりもかなり窮屈。だけど何とか収まった。


「どう? いけそう?」
「……」


 なにやら亜子は反応しなくなった。プロト・ゼロに乗り込んでから、ちょっと雰囲気変わった感じがする。大丈夫かな? こっちが不安になってきたよ。


「わかる……」
「え?」
「いける気がする」


 そう呟いた亜子。私はニヤッとして言い放つ。


「よし! 発信!!」
「了解!!」


 歩きだすプロト・ゼロ。ハッチの前に来たらネジマキ博士の声が響いた。


『待つのじゃ、今開ける。じゃが気をつけろ、外は獣僧兵団で溢れておるぞ!』


 そんな通信の後、ハッチが上下に開いていく。青い空がみえる。プロト・ゼロは床から僅かに浮いた。そして予備動作も無しに、一気に大空へと飛翔した。眼下に空挺と獣僧兵団が見える。あの一瞬でここまで上がるとは……アンティカ恐るべし。


「あの宮殿まで送ればいいのよね?」
「ええ、出来る?」
「どうせ、やれって言うんでしょ?」


 プロト・ゼロは腰に差してたレイピアの様な武器を手に取った。亜子の横顔に恐れはない。私は心置きなく言ってあげるよ。


「ええ、やれ亜子!!」
「行くわよ! ゼロ!!」


 迫る矢を回転とひねりで交わす。そしてそのままスピードに乗って手前の獣僧兵団を突き殺す。私に取ってはただの駒だけど、亜子も平気でやったね。まあなんだか自分のやってること、わかってない感じはあるけど。取り敢えず今は余計な事は言わないでおこう。躊躇われても困るしね。プロト・ゼロは赤い線を空に描きながら獣僧兵団を叩き潰す。
 地上からの砲撃はウザイが、あたることはない。あらかた獣僧兵団を片付けたら、一気に地上を目指して急降下する。案外簡単なミッションだったね。ここからは私の仕事か……


「ありがとう。助かったわ」
「大丈夫……なの?」


 降りてく私にそう声をかける亜子。確かに私みたいな少女が一人て戦場を駆けるのを不安に思うのは当然だね。でも私は普通じゃない。


「もちろん。それにここは既に私の物だから」


 余裕を見せて私は宮殿を目指す。勿論体中に力を張り巡らせてね。私を見送ったプロト・ゼロは再び空に上って撹乱をしてと言ってある。何もしないよりはマシでしょ。さて、おいたが過ぎる子にはお仕置きしないとね。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品