美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#63

 現状を整理しよう。今、この国は国王不在です。私がポッキリ……したとは公にはなってないが、とにかく獣王は死んで、今獣王の子供達から新獣王が選定されてる最中だ。ついでにその子達にも獣王の死亡は老衰ということになってる。流石にポッキリされて逝ったとは王である手前そんなみっともない死に方だとは公表とか出来ないみたい。
 まあだけど、そう簡単に選ばせる気はないし、大体の筋道はできてる。だって王が変わって色々と人員を総入れ替えとかされても困るじゃん。折角大体の重鎮は籠絡したのに、またし直さないとなんて面倒な事はしたくない。だから私にメロメロな奴が王になる予定だ。その最後の王は華々しくこの国を終わらせる役目を担う。重大な役目だよ。
 まあだけど、ちょっと妨害が入りそうな感じがある。カメレオンの報告では、ラジエルの奴が誰も存在知らないような、獣王の隠し子を担ぎ上げようとしてるらしい。あの獣王はほんとお盛んだったらしくて、そこら辺に隠し子が一杯いるようだ。だれか射精管理しとけと思う。


 王なんだから、そこは選り好みしてほしかった。あいつナニが反応した女は全部抱いてきたとか言ってたからね。認知されてないだけで、きっと現状の五十人くらいの選定者以外にも子は居るだろう。まあだけど、獣王選定に参加するにも子だけって事では不可なんだけどね。獣王が送った品が本物と認められれば、参加資格を満たしたとなる。


 だから子であってもその品は売りに出したとかも結構居たよう。なんせ獣王が直々に送った品だもん。価値は相当あるだろうからね。お金に困ったとかしたらそうするのもわかる。実際獣王はナニで判断してたから、そこらで見かけた女性とかも抱いてたらしい。貴族とかだけじゃないと、そうしちゃうのもしょうがない。


 まあだけど、ラジエル達が幾らそこらの王の子を持ち上げても、それだけで選定を通れる訳はない。そもそも出来レースだし。良い所まで来たとしても最終的に勝つのは私の息がかかった王子だ。そこは心配してない。けどそれと並行して隣国にも行ってるからね。まあ国外追放したのはこっちだし、それは普通なんだけど……選んだ国がなかなかにきな臭い。


 このライザップが獣人の国で最大だけど、何もここがこの大陸で最大国家って訳じゃないらしい。ラジエル達の別働隊はこの大陸で真に最大国家に行ったと報告が入ってる。そんなに近くは無いのに、それをわざわざ選択したのは、対抗できるのがそこしか無いからではないかな? うさぎっ子はもう一度来るって言ってたし、ラジエルは獣王選定に横槍入れてるし、まだまだ諦めてないのは明白。


 けどこちらはまだ放置でいい。ラジエル達を陥れる為に利用したアンティカのパイロットとその仲間達は、生体兵器施設に押し込めといた。ウロウロされても困るしなーと思ってたときピ~ンと来たんだよね。こいつら使ってラジエルの家貶めれるんじゃない? って。当初は適当な理由をつけて追い詰めようかと思ったんだけど、いい証拠が向こうから来てくれたからね。
 敵国である人種の奴等を匿ってたなんて、信頼も実績も全部パー。大変役に立ってくれた。そして合法的にパイロット達を捕まえて自由を奪っておく事も出来て一石二鳥とはこの事。


「もう既に最終段階だね」


 目の前には蛇が居る。ここ最近この部屋に戻ってなかった蛇は人種の国と密約に走らせてた。英雄クラスだからね。アンティカもない人種がこいつをどうにか出来るわけもないから最適な人選だったね。けどなんだろう……さっきから蛇がおかしい。私の対面に座ってる事からおかしいしね。いつもなら私に抱きついてくるはず。なのにそれがない。
 まさか離れすぎてて、少し正気に戻った? それはそれで不味いんだけど……密約はかわしてきたみたいなんだよね。お菓子をポリポリしながら、蛇をみる。きっきからなにやらずっとこっちを見てる。何か思い詰めた様な瞳でだ。


「どうしたの? やっぱりイヤになった?」


 そう聞いた私を見て、蛇はその目を細める。なんだその孫を見るおじいちゃんみたいな目は。


「そんなまさか……感慨深いだけですよ。貴女の為ならかつての故郷でさえ……」


 そういう蛇の眼はうっすらと潤んでる様に見える。大丈夫かちょっと不安だ。いつもはしないけど、私から舐めさせてあげようか? 


「あんたがそんなんじゃ困る。最後にデカイ花火打ち上げるんでしょ?」
「そうですね。最後を飾るにしても、華々しくは私の希望ですから。その為にもやはりけじめをつけたい」
「え?」


 そう言って蛇は私の唇にその唇を重ねた。あまりの事に何が起きたかわからない。そんな思考停止状態の私を蛇はお姫様抱っこする。


「ラーゼ、私を貴女の物にしてください。それで私は何も迷う事はないでしょ」
「へび……」


 たどり着いた部屋のベッドに私を寝かせる蛇。そして再び唇を重ねる。


「断ったら……どうなるの?」
「私は、敵に成るかもしれませんね。ですが、私はそうなりたくない。私は……貴女を愛してます」


 いつも心の奥底は隠してるような奴だと思ってたけど、それは本心だと思った。いつもの声と深みが違う。流れる涙は、こいつには似つかわしくないものだ。私を蛇の物に……蛇を私の物に……それはつまり……蛇の視線は私の下半身を見てる。その繋がりを確固たる物にしたいのね。蛇がここで敵に回るのは困る。蛇は獣僧兵団のトップだ。蛇が敵になるって事は、獣僧兵団を敵に回すこと。
 それはやっかい。それになんだかんだ頑張ってくれたし……見返りも充分ある……か。ずっと大切にしててもそこまで意味はないかもだし、ここで蛇を失うわけにはいかない。


「ちょっとまって」


 そう言って私は立ち上がって服を脱ぐ。下着姿の私を蛇は恍惚の表情でみてる。リードは握らせたくない。ただの女として落ちたくない。これは私のプライドの問題。獣王との出来事でそう思った。最後に残ったパンツに私は手をかける。そして意を決して脱ぎ去った。


「おお……」


 そんな声を出す蛇に更に近づいて、彼の顔の前に私は晒す。毛なんかない。そこを蛇はまじまじと見てる。


「いいわよ。私の初めてあげる。だから私の物になりなさい」
「喜んで!」


 押し倒された私は抵抗しない。成されるがままに蛇を受け入れる。いつもよりもねっとりとした舐め。長い舌が私の口から喉を犯してく。次第に熱くなってくる身体。聞いたことのない音が部屋に響く。


「怖かったんですよ。獣王に貴女が食べられやしないかと……私はそれを拒否できない。ですが、それは嫌だった。身が引き裂かれる思いとはあんな思いを言うんでしょう。その時に、気付いたんです。貴女を本当に愛してると」
「うん……来て」


 私は獣王のナニを折った。けど、今度はそんな事しない。私は蛇が好きではない。けど、嫌いでもない。だって私には必要だから。だから離さない為には受け入れる。何を捨てて、何を拾うのかは私自身が決める。
 だから今夜、ここで私は処女を捨てる。悔いはない。だってこれは必要なことだから。私の身が引き裂かれる感覚がした……けど満たされると何か言い知れぬ幸福感もあった。


 でも……それでも……納得してた筈だけど、私の目にも涙が溢れてた。そんな涙を蛇は優しく舐めとってくれた。

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