美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
#62
「やめろ! 離せえええええ!!」
なにやら扉の向こうでドタバタする音がした。そして扉が開かれて、数人の人種が部屋へと押し込まれる。その中の一人がやたら叫んでる。無言で閉められる扉が閉まりきる前にと思ってか、彼は走り出す。凄いバランス感覚してるのか、両手を縛られてても素早く立ち上がってた。けど、それでも間に合わずに、彼は扉にぶつかってた。
「くそ! くそ! くそ!」
そう言って何度も何度も肩を扉へとぶつける彼。けどそれで扉が開くはずもなく。わざわざその手錠を外してくれる始末。それだけ自信がある扉なんだろう。両手が自由になったことで、更に彼はガンガンとするが、それでも開く気配ない。
「もうやめろ! お前の腕が壊れるぞ!」
そう言って大きな男の方が止めた。振り返った彼は金髪に碧眼で、王子様みたいな整った顔立ちしてた。トクン――と胸の鼓動が聞こえた。
(え? なにこれ?)
たしかに私が想像してた王子様だけど……王子様だけど……
「早くしないとミリアが……ようやくここまで来たんだぞ!」
「俺達は嵌められたんだ……あの娘に」
「……くそ!」
そう言って彼は床を叩いて、深呼吸をした。そしてようやく私達を見た。
「君達は……生体兵器か?」
その問いに答える者はいない。だから私が「そうです」と答えておいた。けど、アイツが来てから、私達が連れ去られる事も減った。だから最近はただ放置されてるだけとも言える。けどいつ死が訪れるかは結局の所分からない訳で……なにか希望があるかと言われれば何もない。余りにも暇すぎて、ぽつぽつと話す様にはなってたけど、それだけ。
「そうか……なら僕の妹……ミリアをみてないか?」
そう言って必死に特徴を伝えてくる銀髪の人。けど残念だけど、私達はずっとここに押し込められてるから、知る由もない。私は頭を横に振る。
「……そうか。大丈夫、君達も必ず助ける!」
助ける? 何を言ってるのかよくわからない。だって既に捕まってるのに? 私は素直にそういった。
「これは違うんだ! あのラーゼとかいう少女に嵌められた。協力してくれるという話しだったのに」
「ああ」
なんか納得行く。アイツならやりそうだし。それは災難だったろうなって思う。
「君はラーゼを知ってるのか?」
「あいつも生体兵器だから」
特別な……生体兵器だけど。私達とは違う。けどそれを伝えるのは何か癪だった。
「やはり彼女も利用されてるだけ? 彼女の裏に誰かが……」
「アンサンブルバルン様」
「「「なに!?」」」
新入りの人達全員が私に迫ってくる。ちょっと怖い。
「アンサンブルバルンとはあのアンサンブルバルンか!? この国の英雄……」
私はコクリと頷いた。
「最初にアイツがここに来た時、一緒に居た」
「そういうことか……英雄の事は知ってたのに、まんまとやられた」
悔しそうにする面々。確かにアンサンブルバルン様はアイツの後ろ盾みたいな感じだけど……多分この人達が想像してるのとは違うと思う。だってこの人達は、すべての糸をアンサンブルバルン様が引いてると思ってるよね? けど手綱を引いてるのはアイツだ。けどこれって言って良いのかな? うーん、まあいいか。別に口止めされてるわけでもないし。
「ちょっとまって。アンサンブルバルン様は確かにアイツに助力してるけど、アイツは好き勝手にやってるよ」
「まさか!? ここは獣人の国だぞ!!」
そうだね、私もそう思う。けどそういう常識はあいつには通用しない。そういう存在だ。
「アイツの事みたんだよね?」
私の問いに頷く面々。
「じゃあわかるんじゃない? アンサンブルバルン様もこの国の色んな偉い人たちもアイツにメロメロ」
「確かにあの娘はとんでもない美しさだったが……だが獣人は人に靡かないと聞く。確かに例外はあるが、そんな国の重鎮たちが揃って人種に落ちるなんて……」
そんな金髪に彼の言葉に一緒に来た人達は同意してる。けど一人だけ居る女の人は私の言葉に同意してくれた。
「あり得ないなんてことは世界にはなくてよ。アンティカだってあんなものが作れて稼働できるなんてありえなかったでしょ。それと同じ。私達は彼女の事をよく知らない。あり得ないなんて言える物ではないわ。現にあの美しさは認めるしか無い。私にはアレだけの美しさがあれば、種族の壁なんて超えてもおかしくないと思える」
そんなストレート黒髪で綺麗に切りそろえられた髪が美しい、全体的に細い線で起伏の乏しい女性の言葉を否定できる奴はいない。そんな彼女は、私に近づいてきてその膝を折って微笑みかけてくる。
「教えてくれない? 彼女の事」
「そんな事してる場合では……」
金髪の彼は一刻も早く妹さんを助けたいみたい。けど、黒髪の女性は優しく諭すように言うよ。
「焦っては駄目。あの娘は大人しくしててと言った。この子の話しとあの娘の行動……それを合わせて考えると、貴方に言った言葉はそのままの意味なのかもしれないわ」
「俺に言った言葉……この国を明け渡すとかいうやつか? そんな……あんな少女がそんなこと」
「貴方は理屈っぽいのに感情でそれを否定しますね。あの娘はただの少女じゃない。それは確実です」
皆さんの顔が思考の渦にはまってるように見える。それは幾ら考えても現状ではでない答えではないだろうか? そんな事を思いつつも、一番気になってた事を私は彼等につげる事にする。
「あの……」
「ん?」
「少女じゃなくて、美少女にしてってあいつはいうと思う」
「はい?」
うん、そんな反応になるよね? ごめんね。でもアイツ絶対にそこに突っ込むから、そこははっきりさせとかないといけないの。だけどお陰で少しだけ空気が和らいだ気がしなくも無かった。
なにやら扉の向こうでドタバタする音がした。そして扉が開かれて、数人の人種が部屋へと押し込まれる。その中の一人がやたら叫んでる。無言で閉められる扉が閉まりきる前にと思ってか、彼は走り出す。凄いバランス感覚してるのか、両手を縛られてても素早く立ち上がってた。けど、それでも間に合わずに、彼は扉にぶつかってた。
「くそ! くそ! くそ!」
そう言って何度も何度も肩を扉へとぶつける彼。けどそれで扉が開くはずもなく。わざわざその手錠を外してくれる始末。それだけ自信がある扉なんだろう。両手が自由になったことで、更に彼はガンガンとするが、それでも開く気配ない。
「もうやめろ! お前の腕が壊れるぞ!」
そう言って大きな男の方が止めた。振り返った彼は金髪に碧眼で、王子様みたいな整った顔立ちしてた。トクン――と胸の鼓動が聞こえた。
(え? なにこれ?)
たしかに私が想像してた王子様だけど……王子様だけど……
「早くしないとミリアが……ようやくここまで来たんだぞ!」
「俺達は嵌められたんだ……あの娘に」
「……くそ!」
そう言って彼は床を叩いて、深呼吸をした。そしてようやく私達を見た。
「君達は……生体兵器か?」
その問いに答える者はいない。だから私が「そうです」と答えておいた。けど、アイツが来てから、私達が連れ去られる事も減った。だから最近はただ放置されてるだけとも言える。けどいつ死が訪れるかは結局の所分からない訳で……なにか希望があるかと言われれば何もない。余りにも暇すぎて、ぽつぽつと話す様にはなってたけど、それだけ。
「そうか……なら僕の妹……ミリアをみてないか?」
そう言って必死に特徴を伝えてくる銀髪の人。けど残念だけど、私達はずっとここに押し込められてるから、知る由もない。私は頭を横に振る。
「……そうか。大丈夫、君達も必ず助ける!」
助ける? 何を言ってるのかよくわからない。だって既に捕まってるのに? 私は素直にそういった。
「これは違うんだ! あのラーゼとかいう少女に嵌められた。協力してくれるという話しだったのに」
「ああ」
なんか納得行く。アイツならやりそうだし。それは災難だったろうなって思う。
「君はラーゼを知ってるのか?」
「あいつも生体兵器だから」
特別な……生体兵器だけど。私達とは違う。けどそれを伝えるのは何か癪だった。
「やはり彼女も利用されてるだけ? 彼女の裏に誰かが……」
「アンサンブルバルン様」
「「「なに!?」」」
新入りの人達全員が私に迫ってくる。ちょっと怖い。
「アンサンブルバルンとはあのアンサンブルバルンか!? この国の英雄……」
私はコクリと頷いた。
「最初にアイツがここに来た時、一緒に居た」
「そういうことか……英雄の事は知ってたのに、まんまとやられた」
悔しそうにする面々。確かにアンサンブルバルン様はアイツの後ろ盾みたいな感じだけど……多分この人達が想像してるのとは違うと思う。だってこの人達は、すべての糸をアンサンブルバルン様が引いてると思ってるよね? けど手綱を引いてるのはアイツだ。けどこれって言って良いのかな? うーん、まあいいか。別に口止めされてるわけでもないし。
「ちょっとまって。アンサンブルバルン様は確かにアイツに助力してるけど、アイツは好き勝手にやってるよ」
「まさか!? ここは獣人の国だぞ!!」
そうだね、私もそう思う。けどそういう常識はあいつには通用しない。そういう存在だ。
「アイツの事みたんだよね?」
私の問いに頷く面々。
「じゃあわかるんじゃない? アンサンブルバルン様もこの国の色んな偉い人たちもアイツにメロメロ」
「確かにあの娘はとんでもない美しさだったが……だが獣人は人に靡かないと聞く。確かに例外はあるが、そんな国の重鎮たちが揃って人種に落ちるなんて……」
そんな金髪に彼の言葉に一緒に来た人達は同意してる。けど一人だけ居る女の人は私の言葉に同意してくれた。
「あり得ないなんてことは世界にはなくてよ。アンティカだってあんなものが作れて稼働できるなんてありえなかったでしょ。それと同じ。私達は彼女の事をよく知らない。あり得ないなんて言える物ではないわ。現にあの美しさは認めるしか無い。私にはアレだけの美しさがあれば、種族の壁なんて超えてもおかしくないと思える」
そんなストレート黒髪で綺麗に切りそろえられた髪が美しい、全体的に細い線で起伏の乏しい女性の言葉を否定できる奴はいない。そんな彼女は、私に近づいてきてその膝を折って微笑みかけてくる。
「教えてくれない? 彼女の事」
「そんな事してる場合では……」
金髪の彼は一刻も早く妹さんを助けたいみたい。けど、黒髪の女性は優しく諭すように言うよ。
「焦っては駄目。あの娘は大人しくしててと言った。この子の話しとあの娘の行動……それを合わせて考えると、貴方に言った言葉はそのままの意味なのかもしれないわ」
「俺に言った言葉……この国を明け渡すとかいうやつか? そんな……あんな少女がそんなこと」
「貴方は理屈っぽいのに感情でそれを否定しますね。あの娘はただの少女じゃない。それは確実です」
皆さんの顔が思考の渦にはまってるように見える。それは幾ら考えても現状ではでない答えではないだろうか? そんな事を思いつつも、一番気になってた事を私は彼等につげる事にする。
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