美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#56

 久々の生体兵器としての仕事が来た。最近絢爛豪華な生活ばっかりしてたから、自分がそういう立場だと言うことを忘れてたよ。だって、国の重鎮共を籠絡してたから戦争面ではそこまで進展無かったんだよね。向こうのなんだっけ? あの超格好いいロボットの『アンティカ』とかいうのを一体破壊した事がかなり効いたんだって蛇の奴は言ってた。


 どうやらあれは最終兵器クラスの切り札だったらしい。あれを倒せる兵器は他にはなかなか無いらしく、それこそ世界数人レベルの英雄か、神器クラスの武器を投入するかしないといけないとか? けどそんなの早々出来るわけはないし、人種があれをどこに投入するかはわからない。だからこそ人種と戦争してる国はアンティカに後手に対応するしか無かったらしい。
 しかもあいつら、必ず三機一隊として行動してるらしく、下手に英雄とか神器を持ち出しても必ず勝てるという保証が無かったってのもあるとかなんとか。それをきいて私は思ったんだけど……私かなりピンチだったよね? だってそんな超兵器と単独で邂逅したんだよ? これも私の不運が成せる技か? けど乗り越えたけどね。私じゃないとアレと出会って生き残るとか無理だったってのは、実感できる。


 アンティカを一機破壊した。それはきっと人種達にとっても予想外のこと。完全に私はライザップの生体兵器として認識されてるだろうか? きっとされてるよね? 私は敵じゃないんだけどな〰。しょうがないから生体兵器としての仕事してるだけだし。これは生きるためなんです。人種の同胞一杯殺してる……というか、消し飛ばしてるけど、彼等は死ぬ覚悟があるからセーフだと思ってます。
 そして私には死ぬ覚悟なんてないんで、容赦なく消し飛ばしてく所存だよ。壊したアンティカがどうなったのか私は聞いてない。力を開放して少ししたら私意識なくなっちゃうしね。でもアレだけの装甲とかしてたアンティカが消滅したか疑問だよね。人は簡単に消し飛ぶんだけどね。多分、ライザップは密かに回収してるんじゃないだろうか?


 パイロットが居たとしたら捕虜か、奴隷か生体兵器に落とされるかな? けど生体兵器の所では新入りは見なかった。いつもの面々。私が来てからきっと彼等はそんなに減ってないだろう。別に助けてる気もないけど、なんとなくね。


「ラーゼ様にこんなことをさせるとは……」


 そう言ってるのはグルダフの奴だ。今日はとても機嫌が悪い。私がこういうことしてると言ってなかったからね。私に危険が及ぶことが許せないみたい。さっきもここを管理してる人に突っかかってたしね。少し前は立場上の人に噛み付くようなやつじゃなかったのに、私がグルダフのなかで優先順位トップとなってからちょっと変わったね。


 けどこれは断れないことだしね。それに今回はちょっと目的もある。それは残りのアンティカである。まあ出てくるかわかんないけど、蛇の調べではまだこの大陸に居るとの事。蛇は私をあれと会わせたく無いようだけど、ちょっと人種のことも知りたいじゃん。それに私の目的も要求も一応は向こうに伝えておきたい。パイプがほしいんだよね。
 上に直通できる様なね。けどそこら辺の兵士はただの雑魚だし、指揮官とか偉そうな奴は現場まで来ないの物だと思ってる。となると、戦場で一番階級が高そうなのってアンティカに乗ってる奴って事になる。


 だって最終兵器クラスの物だよ? それを一般兵とかに乗らせないでしょ? きっと階級の高いやつが乗ってるはず。それかかなり将来有望で目をつけられてるやつとかね。


「戦場にアンティカの反応です!」
(来た)


 そんな報告を受けてガラス向かいは慌ただしくなってる。アンティカのデータとか色々集めてるらしいからね。アンティカが出てから私をわざわざ投入するのも、私にアンティカを破壊してほしいから。多分何処かからかこの戦闘にアンティカが投入されるかも? みたいな情報を掴んだんだろう。けど一機倒されても本国に戻らないとか、私に拘ってる? 
 まあ私にも都合が良いから良いけどね。


「それでは上手くやってくれたまえ」


 そんな事をいうのはここの責任者のカバだ。研究者で、生体兵器達を実験道具とかしかみてないクズ。けど中々に優秀だから殺せないんだよね。それにここに配属されるのは大体クズらしいから、こいつ以上のクズがきても困る。てな訳で放置してる。私の足元の魔法陣が光りだした。


「座標固定しました。転送魔法陣を起動します」
「ラーゼ様……どうかご無事で」


 跪いてそういうグルダフを一撫でして私は手をふる。そして視界が光に包まれたと思ったら、血の匂いと、悲痛な叫びが溢れる戦場へと私は送られた。さて……今度は挨拶くらい出来るかな?

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品