美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
#40
私はセルラテント師団オーラメント地方第三隊長の『トクサ・メーベス』だ。オーラメント地方は獣人国『ライザップ』との国境沿いに面してる事で、常に戦闘が繰り広げられてる。まあ大体がこっちが攻め入ってるんだが……だが流石は獣人国のなかでも大国なだけはあってその武力も侮りがたし。もともと人種よりも能力が高いと言われる獣人だが、こちらも本国からの兵器を持ち寄って進軍してる。
それなのにこれまでに落とせないとは予想外。こちらの想定以上に奴等の力は上だったということだろう。このままではこちらが不利。なにせこちらは物資は輸送に頼ってる。直ぐに補給できる向こうとは違う。それに遠征続きで兵たちも士気をおとしてる。次だ……次でここを突破して街を落とし、そこを拠点としなければ撤退しかない。
だが我らセルラテント師団に敗北などあってはならない。それは絶対だ。
「隊長! 例のぶつが届きました! これで獣人共を蹴散らせます!!」
「来たか!」
新米兵士がそう報告してくる。ようやく本国からアレが届いた。これで勝てる。私は思わず不気味な笑いを出さずにはいられない。
物資も届き、再び再戦の時は来た。整列する我らに大隊長殿が激励をくれる。
「良いか貴様ら! 今日こそ奴等獣人共を蹂躙する! なあにこっちには『アンティカ』が三機ある。気負わずとも勝てるさ。なにせこれまでの戦争を変える代物だ!」
「「「おおおおおおおおーー!!」」」
下がってた指揮が一気に高まる。それもそのはず、アンティカが投入された戦場は必ずこちらに勝利がもたらされてる。それを知ってるからこそ、興奮せずにはいられない。三機のアンティカはその姿をまだ見せてないが、多分あのデカイコンテナの中にあるんだろう。一体どんな奴が乗ってるのか。アンティカの存在は大々的に公開されてるが、それがどういう技術の元に製造されたのかは秘匿事項。
誰が乗ってるのかさえわからない。だが軍ではそういうのはよくあることだ。私達はただ上の命令に従って動く。それだけでいい。
「我らの役目は敵の本陣を誘い出すこと。そうすればアンティカが後はやってくれる。それまで死なないようにしてろ! 以上!! 配置につけ!」
そんな大隊長の適当な演説と指示で我らは動く。我らはそれぞれがタンクと呼ばれる四輪駆動の機械に乗る。このタンクを常用的に使える様にしたのはひとえにセルラテントの技術力あってのこと。これで我らは獣人共にも負けない機動力を手にした。屋根もなく、座り心地も良いとは言えないが、贅沢はいえない。小隊一つが丸々移動できて、そして速いんだ。
そんなタンクがここには百はある。だが問題もある。これは煩い。そして土埃があがる。隠密行動には全く向いてないことだな。そんなタンクが一斉に唸りだし、轟音となる。その瞬間少しの気だるさが襲う。これも問題だ。タンクは小隊全員の魔力で動かしてる。運転するのは一人だが、四人いないと動かない。いや、強大な魔力を持つエルフとかの種族なら、一人でも動かせるんだろうが、人種の魔力は脆弱だ。だから四人でようやく動かせる。
だが一度動かしてしまえば、しばらく魔力供給はいらない。そこは技術部が頑張ってくれたらしい。でもそれはそうだろう。そうしないと戦場についたらヘトヘトとか目も当てられない惨状だ。魔力切れは相当の気だるさが襲う。身体を動かすのも億劫な程だ。過剰に魔力を吸われれば命を失う。それは魔力がマナだからだ。マナは生命の源。
それを消費し尽したら死ぬのは当然の事。だからこの仕様は当然だろう。これがクリア出来なかったら配備なんてされてないとさえ言える。そう思ってると、後方の一際大きいタンク、いやあれは『コング3』と呼ばれてる重装備タンクだ。外郭を強固な装甲と魔力障壁でおおい、更に強力な一撃を撃てる砲身を備えたまさに進む要塞みたいな感じ。
あれには大隊長が乗ってる。そんなコング3から通信が入り、一斉に進軍を開始する。
戦闘は直ぐに始まった。こちらの進軍は分かりやすいからいつものこと。こちらは編隊を組み、タンク参に一人の隊長が指揮をし、連携を取ってる。ライザップの軍の獣僧兵団は獣の如く動き回る。その武器も接近戦を意識したものが多い。個々の能力が高いから出来ることだ。まあだからと言って連携が取れてないのか? というとそうでもないのが獣僧兵団のやっかいな所。
こう何度も戦ってるとわかる。こいつらは練度も高い。そこらの小さな獣人の国なら、それこそ個でしかなかった。だがこいつらはやっぱり団なのだ。だからこそこうも攻めあぐねる。タンクから遠距離武器である銃を構える。こちらの装備は基本これの『ダン式02』だ。魔力を後方のテスラ光石に事前に溜めておいてそれを使うことで連射できる。さらに銃身を組み替えれば、様々な状況に対応できる万能な相棒だ。
「撃て!!」
その号令と共に、獣僧兵団の一団に光が走る。だが奴等はそれを跳んで交わした。けどそれは予測済み。残しておいた一両に支持して跳んだ先に銃弾を叩き込む。だが倒れたのは数人……そのまま空中を蹴った何匹かが、タンクに取り付いて来た。右側を走ってたタンクの運転手が潰される。こいつらわかってきてる。
「散開!!」
そう支持して、一旦距離をとる。アンティカはまだか? そう思ってると、こちらに熊が向かってきてる。完全にここに狙いを定めてる。ダン式02を撃つがデカイ盾をもつその熊は構わず進んでくる。ヤバイ、組み替えてる間もないぞ。
「我は獣僧兵団兵長ベア! 貴様たちの命を頂きに参った!!」
そう言って、そのまま盾を向けてきやがる。押しつぶすきか? あれは不味い!
「回避!」
「間に合いません!!」
デカイ盾が迫る。死……それが見えた瞬間、風が吹き抜けた。その瞬間、ベアとか言ってた奴が真っ二つになってた。
「アレが……アンティカ」
空を高速で飛ぶ、黄金の天使? それは一機で獣僧兵団を蹂躙してる。後二機は? そう思ってると、空から大量の光が降り注ぐ。太陽の中に居るのは黄金の機体よりもなんだがずんぐりしてる? 青く見えるその機体は再び光を出して獣僧兵団を消していく。
「大規模魔法の発生を観測!」
「なに!?」
どうやら向こうも切り札を出してきたようだ。空に大きな魔法陣が輝いてる。ヤバイ、ここら一帯消し飛ばす気か? そう思ってると、赤く細い、女性的に見える最後のアンティカが魔法陣に突っ込んでいく。そしてそのままその魔法陣を叩き壊した。
「すげえ……」
素直にそう思った。これはもう勝ち確だろ。獣僧兵団は慌ただしく引いていく。私達はアンティカの強さを目の当たりにして、勝ちどきを上げた。するとそんな勝ちどきの中に魔法陣が現れる。けどそれはさっきの大きな奴じゃない。小さい魔法陣は人が一人乗れる程度。そこに何かが現れる。そしてそれを目にした瞬間、この場の誰もが息を飲んだ。
何故ならそこに天使が現れたからだ。薄紅色よりももっと優しげな色の髪と瞳。肌は透き通る様に白く、足元まである髪は輝いてみえる。小さく華奢な身体は子供そのものだが、全てが美しいと思える。
こんな少女は見たことがない。幻覚? ライザップが送り込んできたにしては人種に見えるが?
『みんな目を覚ませ! あれはライザップの生体兵器だ!!』
通信に入る若い声。次の瞬間黄金のアンティカがその少女に剣を振るってた。だが――
ガキン!!
――そんな音を立てて剣が折れた。更に今度は空から光が少女に降り注ぐ。今度こそ……と思ったが、光が消えた時、少女は大きな欠伸をしてた。更には赤い機体が近づいて、両肩を開いて結界みたいなのを作ってた。だが少女は動じない。その動き全てが美しいと思える少女は何かを言った? 次の瞬間、戦場に光が走った。そして私は……いや、私たちは死んだ。
それなのにこれまでに落とせないとは予想外。こちらの想定以上に奴等の力は上だったということだろう。このままではこちらが不利。なにせこちらは物資は輸送に頼ってる。直ぐに補給できる向こうとは違う。それに遠征続きで兵たちも士気をおとしてる。次だ……次でここを突破して街を落とし、そこを拠点としなければ撤退しかない。
だが我らセルラテント師団に敗北などあってはならない。それは絶対だ。
「隊長! 例のぶつが届きました! これで獣人共を蹴散らせます!!」
「来たか!」
新米兵士がそう報告してくる。ようやく本国からアレが届いた。これで勝てる。私は思わず不気味な笑いを出さずにはいられない。
物資も届き、再び再戦の時は来た。整列する我らに大隊長殿が激励をくれる。
「良いか貴様ら! 今日こそ奴等獣人共を蹂躙する! なあにこっちには『アンティカ』が三機ある。気負わずとも勝てるさ。なにせこれまでの戦争を変える代物だ!」
「「「おおおおおおおおーー!!」」」
下がってた指揮が一気に高まる。それもそのはず、アンティカが投入された戦場は必ずこちらに勝利がもたらされてる。それを知ってるからこそ、興奮せずにはいられない。三機のアンティカはその姿をまだ見せてないが、多分あのデカイコンテナの中にあるんだろう。一体どんな奴が乗ってるのか。アンティカの存在は大々的に公開されてるが、それがどういう技術の元に製造されたのかは秘匿事項。
誰が乗ってるのかさえわからない。だが軍ではそういうのはよくあることだ。私達はただ上の命令に従って動く。それだけでいい。
「我らの役目は敵の本陣を誘い出すこと。そうすればアンティカが後はやってくれる。それまで死なないようにしてろ! 以上!! 配置につけ!」
そんな大隊長の適当な演説と指示で我らは動く。我らはそれぞれがタンクと呼ばれる四輪駆動の機械に乗る。このタンクを常用的に使える様にしたのはひとえにセルラテントの技術力あってのこと。これで我らは獣人共にも負けない機動力を手にした。屋根もなく、座り心地も良いとは言えないが、贅沢はいえない。小隊一つが丸々移動できて、そして速いんだ。
そんなタンクがここには百はある。だが問題もある。これは煩い。そして土埃があがる。隠密行動には全く向いてないことだな。そんなタンクが一斉に唸りだし、轟音となる。その瞬間少しの気だるさが襲う。これも問題だ。タンクは小隊全員の魔力で動かしてる。運転するのは一人だが、四人いないと動かない。いや、強大な魔力を持つエルフとかの種族なら、一人でも動かせるんだろうが、人種の魔力は脆弱だ。だから四人でようやく動かせる。
だが一度動かしてしまえば、しばらく魔力供給はいらない。そこは技術部が頑張ってくれたらしい。でもそれはそうだろう。そうしないと戦場についたらヘトヘトとか目も当てられない惨状だ。魔力切れは相当の気だるさが襲う。身体を動かすのも億劫な程だ。過剰に魔力を吸われれば命を失う。それは魔力がマナだからだ。マナは生命の源。
それを消費し尽したら死ぬのは当然の事。だからこの仕様は当然だろう。これがクリア出来なかったら配備なんてされてないとさえ言える。そう思ってると、後方の一際大きいタンク、いやあれは『コング3』と呼ばれてる重装備タンクだ。外郭を強固な装甲と魔力障壁でおおい、更に強力な一撃を撃てる砲身を備えたまさに進む要塞みたいな感じ。
あれには大隊長が乗ってる。そんなコング3から通信が入り、一斉に進軍を開始する。
戦闘は直ぐに始まった。こちらの進軍は分かりやすいからいつものこと。こちらは編隊を組み、タンク参に一人の隊長が指揮をし、連携を取ってる。ライザップの軍の獣僧兵団は獣の如く動き回る。その武器も接近戦を意識したものが多い。個々の能力が高いから出来ることだ。まあだからと言って連携が取れてないのか? というとそうでもないのが獣僧兵団のやっかいな所。
こう何度も戦ってるとわかる。こいつらは練度も高い。そこらの小さな獣人の国なら、それこそ個でしかなかった。だがこいつらはやっぱり団なのだ。だからこそこうも攻めあぐねる。タンクから遠距離武器である銃を構える。こちらの装備は基本これの『ダン式02』だ。魔力を後方のテスラ光石に事前に溜めておいてそれを使うことで連射できる。さらに銃身を組み替えれば、様々な状況に対応できる万能な相棒だ。
「撃て!!」
その号令と共に、獣僧兵団の一団に光が走る。だが奴等はそれを跳んで交わした。けどそれは予測済み。残しておいた一両に支持して跳んだ先に銃弾を叩き込む。だが倒れたのは数人……そのまま空中を蹴った何匹かが、タンクに取り付いて来た。右側を走ってたタンクの運転手が潰される。こいつらわかってきてる。
「散開!!」
そう支持して、一旦距離をとる。アンティカはまだか? そう思ってると、こちらに熊が向かってきてる。完全にここに狙いを定めてる。ダン式02を撃つがデカイ盾をもつその熊は構わず進んでくる。ヤバイ、組み替えてる間もないぞ。
「我は獣僧兵団兵長ベア! 貴様たちの命を頂きに参った!!」
そう言って、そのまま盾を向けてきやがる。押しつぶすきか? あれは不味い!
「回避!」
「間に合いません!!」
デカイ盾が迫る。死……それが見えた瞬間、風が吹き抜けた。その瞬間、ベアとか言ってた奴が真っ二つになってた。
「アレが……アンティカ」
空を高速で飛ぶ、黄金の天使? それは一機で獣僧兵団を蹂躙してる。後二機は? そう思ってると、空から大量の光が降り注ぐ。太陽の中に居るのは黄金の機体よりもなんだがずんぐりしてる? 青く見えるその機体は再び光を出して獣僧兵団を消していく。
「大規模魔法の発生を観測!」
「なに!?」
どうやら向こうも切り札を出してきたようだ。空に大きな魔法陣が輝いてる。ヤバイ、ここら一帯消し飛ばす気か? そう思ってると、赤く細い、女性的に見える最後のアンティカが魔法陣に突っ込んでいく。そしてそのままその魔法陣を叩き壊した。
「すげえ……」
素直にそう思った。これはもう勝ち確だろ。獣僧兵団は慌ただしく引いていく。私達はアンティカの強さを目の当たりにして、勝ちどきを上げた。するとそんな勝ちどきの中に魔法陣が現れる。けどそれはさっきの大きな奴じゃない。小さい魔法陣は人が一人乗れる程度。そこに何かが現れる。そしてそれを目にした瞬間、この場の誰もが息を飲んだ。
何故ならそこに天使が現れたからだ。薄紅色よりももっと優しげな色の髪と瞳。肌は透き通る様に白く、足元まである髪は輝いてみえる。小さく華奢な身体は子供そのものだが、全てが美しいと思える。
こんな少女は見たことがない。幻覚? ライザップが送り込んできたにしては人種に見えるが?
『みんな目を覚ませ! あれはライザップの生体兵器だ!!』
通信に入る若い声。次の瞬間黄金のアンティカがその少女に剣を振るってた。だが――
ガキン!!
――そんな音を立てて剣が折れた。更に今度は空から光が少女に降り注ぐ。今度こそ……と思ったが、光が消えた時、少女は大きな欠伸をしてた。更には赤い機体が近づいて、両肩を開いて結界みたいなのを作ってた。だが少女は動じない。その動き全てが美しいと思える少女は何かを言った? 次の瞬間、戦場に光が走った。そして私は……いや、私たちは死んだ。
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