夜に霧散する夢。
夜に霧散する声。
遠くでサイレンの音がする。
赤い光がチラつくのが見えた。
不愉快な音域の音で、
ビリビリと鼓膜が揺れた。
昨日降った雨は足元のひび割れたアスファルトの隙間に僅かに留まっていた。
鼻からすうっと吸い込んだ空気は湿気を帯びている。また数日のうちに雨となるだろう。
ふと誰かに呼ばれた気がしたが、
これはいつも幻聴に違いない。
リアクションすることなく自分の中で自己完結してしまう。
いつも聞こえる。
「ひとりにしないで、」
そんな声、何処からか、何時からか。
ふとした時聞こえてくるようになった。
そう、こんな夜に道を歩いていつ時に、だ。
街灯と街灯の間の暗闇、こんな街中でも目を凝らすとほんの少しだけ星が見える。不思議な気持ちだ。
夜はもっと暗くてもいいのにな、そう思いつつもこの街に住み続ける自分は矛盾しているなと自嘲する。
が、そんな間にも足は休まず動いているので、また次の街灯の灯りに照らされ思考はリセットされた。
まただ、また声がする。
(うるさい、うるさいよ)
目をギュッと瞑る。
「ひとりにしないで、」
なんて物悲しい声。
祈るような、絞り出すような。
思わず立ち止まってしまった。
(誰なんだ、、、)
声には出さずに、そう問うてみる。
自分の中からする声なのかどうかも分からないが、いつも同じ声だ。
ガサゴソと無粋な音を立てるコンビニの袋を下げたサラリーマン風のスーツの男性が前から歩いてきたが、ふとスマートフォンから顔を上げて何かを注視した、が、またすぐ手許に視線を落としスタスタと歩いて行ってしまった。
(なんだったんだ?声に出てたかな、、)
自分の口許に手をやる。
あの声、誰かに似ている気がする。
誰だったろうか、そんな事を思うが結局またすぐ考えるのをやめて足を動かすことにした。
考えても仕方ない事なら考えるのはやめだ。
無駄だ。無意味だ。
合理主義とまではいかないが、
自分は極端な面倒くさがりだと思う。
世の中のどんなフシギもキセキも、自分に直接的に関係がないならその薄皮の一枚ですら剥いて中身を知りたい、などとも思わないのだった。
謎の声の現象に関して言えば、自分に関係があるどころが直接降りかかってすらいるのだが、生活に支障がないという理由で考えることを放棄している。
(ひとりが何だってんだ、ひとりの何が悪い、、)
誰にともなく、否、謎の声に向かってついつい悪態をつきたくなった。
きっと、誰しも一人でいる事が怖いわけではない。
ただ、誰かを何かを、自分以外の存在を欲した瞬間から襲われるあの【孤独感】が怖いのだとある日わかる。
そして、
わかった時にはもうみんなすっかり『オトナ』と言われる年齢に近づいていて、抗うことのできない時の流れというものへの嫌悪感や焦燥感を覚えるも、いつの間にか抗うことすらやめてしまうのではないか。
(お前が、誰だか知らないけど、お前は馬鹿だよ。)
「わたしは、一人でも平気だもの」
肌にまとわりつくような夜の空気が気道に沿って肺を満たすのがわかる。
湿気を帯びた空気が振動する。
鼓膜を揺らす。
遠く、サイレンの不愉快な音域に交じって、聞きなれた自分の声がした。
街灯と、街灯の間の暗闇。
(ひとりにしないで)
弱弱しい、声。
あぁ、またあの声。
そうか、私の声に似ているのか。
不意に気付いてしまった。
雨粒のような水滴が零れ落ち、足元のアスファルトへ1つ小さな染みをつくった。
心もとなく間延びした自分の影が、一瞬ゆらりと揺れた気がした。
「君がいればそれでいいよ。」
その声が、何処からしたのか分からなかった。
自分が発したのだろうか?
それとも、、、
その声は、霧状になって夜の闇に消えていった。
赤い光がチラつくのが見えた。
不愉快な音域の音で、
ビリビリと鼓膜が揺れた。
昨日降った雨は足元のひび割れたアスファルトの隙間に僅かに留まっていた。
鼻からすうっと吸い込んだ空気は湿気を帯びている。また数日のうちに雨となるだろう。
ふと誰かに呼ばれた気がしたが、
これはいつも幻聴に違いない。
リアクションすることなく自分の中で自己完結してしまう。
いつも聞こえる。
「ひとりにしないで、」
そんな声、何処からか、何時からか。
ふとした時聞こえてくるようになった。
そう、こんな夜に道を歩いていつ時に、だ。
街灯と街灯の間の暗闇、こんな街中でも目を凝らすとほんの少しだけ星が見える。不思議な気持ちだ。
夜はもっと暗くてもいいのにな、そう思いつつもこの街に住み続ける自分は矛盾しているなと自嘲する。
が、そんな間にも足は休まず動いているので、また次の街灯の灯りに照らされ思考はリセットされた。
まただ、また声がする。
(うるさい、うるさいよ)
目をギュッと瞑る。
「ひとりにしないで、」
なんて物悲しい声。
祈るような、絞り出すような。
思わず立ち止まってしまった。
(誰なんだ、、、)
声には出さずに、そう問うてみる。
自分の中からする声なのかどうかも分からないが、いつも同じ声だ。
ガサゴソと無粋な音を立てるコンビニの袋を下げたサラリーマン風のスーツの男性が前から歩いてきたが、ふとスマートフォンから顔を上げて何かを注視した、が、またすぐ手許に視線を落としスタスタと歩いて行ってしまった。
(なんだったんだ?声に出てたかな、、)
自分の口許に手をやる。
あの声、誰かに似ている気がする。
誰だったろうか、そんな事を思うが結局またすぐ考えるのをやめて足を動かすことにした。
考えても仕方ない事なら考えるのはやめだ。
無駄だ。無意味だ。
合理主義とまではいかないが、
自分は極端な面倒くさがりだと思う。
世の中のどんなフシギもキセキも、自分に直接的に関係がないならその薄皮の一枚ですら剥いて中身を知りたい、などとも思わないのだった。
謎の声の現象に関して言えば、自分に関係があるどころが直接降りかかってすらいるのだが、生活に支障がないという理由で考えることを放棄している。
(ひとりが何だってんだ、ひとりの何が悪い、、)
誰にともなく、否、謎の声に向かってついつい悪態をつきたくなった。
きっと、誰しも一人でいる事が怖いわけではない。
ただ、誰かを何かを、自分以外の存在を欲した瞬間から襲われるあの【孤独感】が怖いのだとある日わかる。
そして、
わかった時にはもうみんなすっかり『オトナ』と言われる年齢に近づいていて、抗うことのできない時の流れというものへの嫌悪感や焦燥感を覚えるも、いつの間にか抗うことすらやめてしまうのではないか。
(お前が、誰だか知らないけど、お前は馬鹿だよ。)
「わたしは、一人でも平気だもの」
肌にまとわりつくような夜の空気が気道に沿って肺を満たすのがわかる。
湿気を帯びた空気が振動する。
鼓膜を揺らす。
遠く、サイレンの不愉快な音域に交じって、聞きなれた自分の声がした。
街灯と、街灯の間の暗闇。
(ひとりにしないで)
弱弱しい、声。
あぁ、またあの声。
そうか、私の声に似ているのか。
不意に気付いてしまった。
雨粒のような水滴が零れ落ち、足元のアスファルトへ1つ小さな染みをつくった。
心もとなく間延びした自分の影が、一瞬ゆらりと揺れた気がした。
「君がいればそれでいいよ。」
その声が、何処からしたのか分からなかった。
自分が発したのだろうか?
それとも、、、
その声は、霧状になって夜の闇に消えていった。
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