間違いで始まる物語

seabolt

第38話 「勇気」

恭介の携帯がなった。


「もしもし?」


「フランの勇気だけど・・・」


「あっ・・こんばんわ・・」


「ちょっと、今晩あいてるか?返すものもあるし」


「ええ・・まぁ」


呼び出されて喫茶店に恭介が行くと、


そこには


勇気がいて、ある紙袋を差し出した。


「これ・・」


「これは・・・」


「この間の服。」


「あっ・・・忘れてた・・・すっかり」


浮かない顔をする恭介、


そして


袋見てため息をついた。


「勇気さん・・・ありがとう。持ってきてくれて・・言ってくれれば、取りに行ったのに・・・」


少し懲らしめてやろうと思っていた勇気は、恭介の表情を見て、本当に二股かけてるんだろうか?と疑問を抱いた。


「店までか?」


「ああ・・・」


「また、女装をしにか?」


「いや・・・そこまで」


そう話しかけた恭介は再びため息をついた。


そして


「女装・・・・か・・・」


言葉を漏らしうむついてしまった。


「えらく元気ないな。」


「そうか・・」


「なにか、あったんか?」


それまでうつむいていた恭介は、


しばらく


勇気の顔を見て、両手をソファーの上に置き、天を仰いだ。


「ふられたよ・・・すっぱりと」


「ふられた・・・・って誰に?」


「誰でも、いいだろ」


恭介はコーヒーに手をつけた


「ひょっとして・・・はるかさん?」


そういう勇気の言葉に恭介の動きが止まる。


コーヒーカップを置いて恭介は、


「かなわないな~ 勇気さんには・・・」


「でも、合コンの後、感じよかったじゃん」


「そうなんだけど・・・よくわからん」


「本気なのか・・・」


「ああ・・・でも、あきらめないといけないかも」


「なぜ?」


「元々、元彼が近づかないようにと付き合ってるふりをしていたから・・それが終わったんで。」


「付き合っているふり・・・がいつの間にか本気に?」


「まあ・・・でも、彼女は違うみたいだ。」


またため息をついた恭介


その様子を見て勇気は、


「二股なんかかけてないよな。」


「そんなことしてない。しかも、」


「しかもって?」


「告白されたんだけと、その娘には断ったんだ・・・」


勇気は、かくっとなった


山本との話が違うからだ。


「もう・・・いいだろう。」


話をやめたそうな恭介に


「本気なんだろう・・・」


「しかし・・・」


「好きなんだろう・・・まだ・・・」


その言葉に恭介は大きく息を吸い込み、


そして


その息をはいた。


「もう!ふられたんだよ!」


「ちゃんと、その思い伝えたんか?」


「いや・・・」


「じゃぁ、やってみろよ・・・駄目もとで」



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