間違いで始まる物語

seabolt

第7話 「小さい宴会」

山本は、今日の渡辺の行動を気にしていた。


「ところで、あんた達、あたしのことどう思ってんの?」


「なぜ?」


「だって、さっきの子もそうだったでしょ。あんなに顔色を変えなくても・・・」


山本はビールを一口飲んだ。


「うーん」としばらく黙り込む、恭介を見て


「怒らないから・・・正直、言ってよ・・・」


恭介に近づき、肩にひじをおいて、耳元でささやいだ・・・


「う~む・・・実は、」


「実は・・・」


「美人でスタイル抜群で仕事ができて・・・・」


「できて?」


「・・・・・」


「で?・・・・なに?」


「きつくて怖い・・・とうわさが流れてたんです。」


それを聞くと山本は


「えっ」と恭介の肩においていた肘をはずし、離れて、ストンと座った。


「きつく・・・・て・・・こわ・・い?・・・か」


うつむいてぼそりとつぶやいた。


「すみません・・・」


恭介が謝ると・・・


「いいのよ・・・そっか・・怖いか・・・」


山本は少しなみだ目で恭介を見た。


恭介はその顔にドキッとした。


そして


慌てて


「でも、山本さんは、美人だし・・」と言い出すと


「やめて・・・そんなに気を遣わないで・・・」


「すみません・・・」


あやまる恭介・・・・


「で、久保君はどう思ったの・・・」


「最初は、怖いと思ったけど、実は、やさしいんだと・・・」


「またまた・・・」


「本当に困っているときは、ちゃんと助けてくれましたし・・」


「ありがとうね・・」


ようやく山本に笑顔が戻った。


「けど・・・」


「けど・・・」


「女装には、参ったけどね・・・」


「あ~・・そんなこと言うと、ばらすわよ・・・特にるみちゃんに・・・」


「それだけはかんべんを・・・」


そして、二人は笑った。


しばらくして、


「ところで、今日のキス・・・」


恭介は思わず言ってしまった。


「気にしないで・・・・大丈夫だから・・・」


と山本は答え


「ところで、あなたはどうだったの?」


逆に恭介に聞き返した。


「だ・・い・・丈夫・・・でした・・・」と恭介は少し目をそらした


それを見た山本は、恭介に目を合わせるように動き


「本当に?」と聞くと


恭介は、首を少し動かし目をそらし・・・


そして


「ふん・・」とうつむいた。


「ほんとう?」と再び聞かれると


「参りました。・・・」と恭介は頭を下げた。


「なんだ・・・よかった。・・・」


「よかった・・・って?」


「そうでしょ。なんとも思われてないなんて・・・」


「すみません。本当は、どきどきしてました。」


「正直でよろしい。私もひさしぶりだから・・・」


山本は恭介の頭を軽くたたいた。


そして


ため息を吐いた。


「ひさりぶりって、彼氏は」


「そんなこと聞くの?」


「あぁぁ、いぇ、すみません。・・・」


「いいのよ、別れたの3ヶ月前に・・・」


山本はビールを一口飲んだ。


そして


「2年も遠距離だったの・・・だから、耐えられなくって・・」


とうつむいた。


「大丈夫ですよ・・」


「ありがとう。・・・」


山本はにこやかにいった。


「そういえば・・野村さんは?」


山本が話題をふると


「えっ・・・まだ、わからないですよ。」


「なんで・・」


「今日は、何も言う暇もない。合コンで・・」


「あっそうか・・」


そう言った時、山本の携帯がなった。


山本が携帯を見た瞬間、


それまでの笑顔が・・・


やがて暗くなり・・・


悲しみの表情が出てきた・・・


そして


携帯を放置した。


「いいんですか?・・・」


「なにを・・」


「携帯・・・」


「別れた彼から・・・」


「だったら・・・」


「いいのよ・・・あんな浮気もの・・」


やがて携帯の着信音は消えた・・・


「さぁ・・・もういっぱい飲もうか」


「え~っ」


「なに・・?」


「はい。飲まさせていただきます・・・」


宴会は、深夜まで続いた。



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