モブキャラな私が孫子の兵法を手にしたら♪

seabolt

第5話 【イベント】 彼を知って己を知れば百戦危うからず

 しかし、イベントはまだ続いていた。


 せっかく1週間かけて作ったヒールポーションが、孫子の兵法書と書かれた一冊の本とは、そのとてつもないショックに、ただ呆然とするしかなかった。しかも、今週は、1週間で5つという新記録だっただけに、そのショックの大きさは、計り知れない。目の前にヒール草を見つけたんだけど、それすら手に付かない状態だった。しかし、イベントは許してくれなかった。か・・・体が勝手に・・・と言うわけで、何故か、孫子の兵法書を手にしてしまった。そこには


 彼を知って己を知れば百戦危うからず。
  彼を知らずして己を知れば一度は勝ち、一度は負く。
   彼を知らずして己を知らざれば、戦うごとに必ず危し。


 こう書かれていた。


 ははは・・・


 全然、わかんない。こうして、私はこの不可解なイベントに1週間も拘束されることになった。だいたい、こういう時は、さっきまでいた諸葛亮が教えてくれるはずなのに、その諸葛亮は既にどこかに消えていない。かと言って、これをどうすればいいのかもわからない。特に最悪なことに、現在、イベント中という文字が出ていて、目の前にあるヒール草を手に取ろうにも体は全く動けない状態だった。
 そこへ、なすびのような顔にアフロヘアをして、赤い蝶ネクタイに赤いスーツに黒いYシャツを着て、赤渕のサングラスをかけた怪しい人物が立っていた。そして、中低位域の渋い声を高らかと上げた。


「さぁ~チャレンジタイムの始まりだ。君はわかったかな~彼を知って己を知れば百戦危うからず。彼を知らずして己を知れば一度は勝ち、一度は負く。彼を知らずして己を知らざれば、戦うごとに必ず危し。をこれからチャレンジをしてもらう。」


 目の前の変な奴がべらべらとしゃべってくれているんだけど、聞いているだけで頭痛がするのだが手すら動かない、イベント拘束ってやつで私は直立不動にされていた。


「それでは、レッスン~ワン!!」


 目の前が一旦暗くなったかと思ったら、画面が切り替わり、とんでもないモンスターが出てきた。頭が3つもあるドラゴンがそこに立っていた。しかも、トリプルドラゴンという名前が書いてあってた。


 LV??????


パラメータは、全て??????となっていた。  


 こうしていきなり戦闘画面が始まったのだった。いつもの10×10のマップが画面上にでて、その真ん中にトリプルドラゴンが、私はトリプルドラゴンの真下のマップの隅にいた。そして、何故か、ターンは私からになっていた。当然、選択は移動と待機しかないって?普通はここに逃げるがあるはずなんだけど、ない・・ない・・・どこにもない・・そして、あることに気付いた。自分のパラメータも全て??????となっていたのだった。ど・・・どういうこと?ひょっとして、ありがちな小説のチートな能力でも備わったのかななどと思っていると時間だけが過ぎていく、ターンの時間が無くなってきてしまった。こうして、何もできないまま、時間が過ぎて敵のターンになってしまった。すると、そのトリプルドラゴンは、いきなり距離を縮めてきて、私に襲い掛かってきた。
 するとなぜか私は、その攻撃をひょいとよけることができのだ。これは、本当にチートな能力が付いたのでは、そう思った私は、自分のターンでトリプルドラゴンを攻撃


バキバキ!!


 20万というダメージを与えた。これはいけると思った矢先、敵のターン、トリプルドラゴンの攻撃、全てのドラゴンの頭から業火が降り注ぎ、私は、真っ黒に・・・そして、GAME OVERの文字が出た。すると画面が切り替わりあの変な奴が立っていた。


「まともに攻撃を食らって、ほぼ即死でしたね。チャレンジタイムだからいいようだけど、実践ではあなたは死んでいましたよ。と言うわけで、何も知りもしないで戦ってはダメと言うことが解ったでしょう。今日はここまで、次は明日から」


 こうして、イベントが中断になった私なんだけど、確かに調子こいたのは悪かった。とりあえず、何もわからないまま、特攻するのはよくないとよくわかった。
 しかし、このゲームには領地という制度がある。つまり、今自分がいる10×10のマス目が自分の領地なのである。だから、負けるとこの地を去らなければいけないのだ、だから、直ぐに、逃げるという選択肢は難しいのだった。
 こうして、2日目以降は、己を知った場合の戦闘を体験させられ、勝つことがあっても負けることもあることを実感した。そして、逃げることの大切さもだ。
 さらに続くこと6日目、総仕上げと言ことで、敵を知り己を知れば百戦危うからずの実践となった。特に索敵を使用して、敵の能力を判断、その場で、逃げるか戦うかを決定し、戦った分に関しては、ほぼ勝つことが出来た。逆に、最初から逃げてことで、全ての戦いで、自分が死ぬということはなかった。


 そうか、これが孫子の兵法書の力か~


 感動している私がそこにいた。こうして、訓練をした結果私のパラメータはやや上昇した。LV2、ライフ50、HP50、MP100、知力80
 しかし、ヒールポーションがない、食料も尽きた。明日からどうしたらいいのだろうか。



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