神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第56話 仕事



「ただいま~」

「きゅ~~~ッ」

「おわっ!!」

俺達が屋敷へ戻るといきなり小さな生物が飛びついてきた。

「ハク!?ちょ!いた痛いって!」

「きゅっ!きゅっ!」

飛びついてきたのは白銀の子龍ハクだ。ハクは俺の頭にしがみ付いて顔にパクパクと噛みつく。

「ど、どうしたんだ!?」

なんとかハクを引きはがし、離れさせる。

「きゅぅ!!きゅぅ!!」

「どうやら最近外に連れて行ってくれなかったのを怒ってるみたいね」

「そうなのか?」

『その意味であっています。』

リエルに聞くより早くアルテミスに答えられた。
そんなスキルも持ってたっけ?

「きゅぅ!きゅきゅぅ!!」

「わかったわかった。明日、一緒に依頼でも受けに行こう!な?」

「きゅ~」

そういうとハクは落ち着いてソウマの頭に乗った。
そしてあたりを見回してシュレイを見ると………

「きゅ!?きゅきゅ!?!?」

とても驚いてソウマの頭を引っ掻き回す。

「いたい!痛いから!禿げる!!」

ソウマが悲鳴を上げるのもお構いなしにひっかくのでアルテミスが仕方が無く抱き上げる。

「ハク、この女性はシュレイ。私達の新しい仲間よ。」

「きゅぅ?」

「そう仲間。シュレイも龍族だからお姉さんになるのかな?」

「ハクというのか?また可愛い小龍じゃのぉ。よろしくじゃ」

「きゅぅ……」

ハクはシュレイをしばらく見るとアルテミスの腕から抜け出してシュレイの胸元に飛び込んだ。

「おっとっと、む?この感じ……神龍様のような?」

「ああ、ハクは神龍の子供だ。」

「ほほう!あの神龍様の子供か!話には聞いておったがこんなところにおったとは」

「しっているのか?」

「もつろんじゃ。黒皇竜族は竜族の中でも最高位の竜族じゃ。神龍様がたまに遊びに来ておったのじゃ。」

「神龍も遊ぶんだな。ハクもシュレイに懐いたみたいだし、クラウスさんに頼んでシュレイの部屋も準備してもらわないとな。」

その後、クラウスさんにお願いしてシュレイの部屋を準備してもらった。

「ソウマ様、この後お仕事をお願いしたいのですが」

「仕事?わかりました。俺の部屋にお願いします。」

そういわれたので俺は執務室で待つことにした。
ちなみにこの屋敷の敷地は広いので商館と第一本館、第二本館、別館の四つの建物が立つ予定だ。第一本館はもともとあった屋敷を少し改造したもので、現在、商館と第二本館を建設中だ。別館はもともとは元使用人の住むところとなっている。商業を開始したら従業員の屋敷となる。

俺の部屋は生活用の部屋があってその隣に執務室がつながっている。一応商会長だからこういうものも必要らしい。クラウスさんにそういったものを全部任せていたらこうなった。

「おまたせしました。」

「はーい。それで仕事とは?」

「商会のことでございます。まず商店のことから。現在、今いる第一本館と別館のリフォームは終了しており、私たち使用人は別館での生活をしております。」

「そうですね。この屋敷は俺たちが使っていいんですよね?」

「はい、元公爵邸は外部含め、ソウマ様やアルテミス様のご要望通りにリフォームさせていただきました。木造の湯舟などもリエル様のお力もお借りして再現いたしました。」

そう、クラウスさんにはリエルの能力を使えるようにしておいた。これからはクラウスさんにもたくさんの仕事をしてもらわないといけないからな。

「続いて第二本館と商館についてなのですが」

「ああ、それなら俺がやります。」

改造は業者にやってもらったのにどうして第二本館と商館は自分で建てるのかというと、単純に時間がもったいないからだ。金に困っていないものの商店はできるだけ早いうちに開始しておきたい。

「かしこまりました。次に商品についてなのですが」

「それなぁ……」

店を始めるにあたって商品がなければ話にならない。
だが、今のところ仕入れ先はないし、売るものがない。
暫くは俺のほうで賄ったほうがいいか?

『ひとまず、マスターで作成できるものを売るしかないですね。その後、マスターの冒険者稼業で作ったコネや得た資源を使っていくのが適切かと。また、工場を作ることを提案します。』

「工場?」

なぜ工場が必要なんだ?

「確かに工場はあってもいいかもしれませんね」

「どうしてですか?」

「通常商会はすでに加工されたものを業者から購入し、販売します。しかし、大手の商会や実力を持っている商会は大きくも小さくも加工するための工場を持っていることがあります。その分、値段を安くすることができますからね」

「なるほど。」

要するにネクサス商会オリジナル商品を作ろうってことか。

「冒険者ギルドから直接卸せばほぼ原価で買えるし、俺が直接卸してもいいですしね」

「けどどこに作りますか?敷地はほぼないですし」

「それですね、工場計画をしていなかったから敷地はもうないですし」

「新たに買うわけにもいきませんしね」

『地下に作ることを提案します』

「地下……ですか。」

「地下作れるのか?」

『可能です。この敷地の地下に妨げとなる施設や存在がないことは検証済みです』

「いつの間に」

どうやらうちのリエルさんは知らないうちにいろいろやってるみたいだ。
結局、敷地の地下に大規模地下施設を建設することになった。
どんな構造にするかはリエルに任せるとして、俺たちは次の話に戻る。

「続きまして多数の貴族から招待状が届いております。」

「招待状?」

どうして貴族から?特に関係のある貴族なんていないが。
しかも何の紹介状だ?

「殆どがパーティの招待になります。突然現れた王女殿下の婚約者、さらに短期間でSランク冒険者になるほどの実力を持つソウマ様と縁を築いておきたい貴族は多いのでしょう。そのためにパーティへ招待しているのかと思います」

「なるほどね。そういうことだったか。」

「またはソウマ様に娘を嫁がせようと考えている貴族もいるとおもいます」

「は?娘を嫁がせる?」

「はい、いわゆる政略結婚に近いものになります。ソウマ様と娘や血縁者を結婚させて親密な関係を持ち、有事の際や権力の後ろ盾として使うこともできますし、他貴族へのけん制にもなります」

「うわぁ……貴族って面倒ですね」

そんなのは絶対嫌だし、利用される女の子もかわいそうだ。

「ちなみに申しますと今ソウマ様は貴族の子女からも貴族からも注目の的です。貴族ではないので招待に応じる義務はありませんが、人脈を作るという面でこのようなパーティは絶好の機会です。どういたしますか?」

「確かにそうですね。けどマナーとか挨拶とか全然わかりませんよ?」

「それなら問題ありません。リエル様もございますし、何よりそのような場所に行くことが多かった方がいるではありませんか」

「?? だれだ?」

クラウスさんは笑顔でその人物をいった。

「アルテミス王女ですよ」


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