神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第55話 次の目的地


「つまりその北方戦争のせいで冒険者が足りてないと。」

「そういうことだね。」

(俺たちは南に行くからあんまり関係ないな。何かあったら戻ってくればいいし)

「それじゃあ俺はアルテミスの所に戻るわ。何かあったら連絡してくれ。クラウスさんの所に行けば大抵の連絡は俺のところ来るから」

「わかったよ。」

そう言って冒険者ギルドを後にする。

「次はどこへ行くのじゃ?」

「城。アルテミスもそっちに行ってるはずだ」

大通りをまっすぐ突き進むとすぐに王城に着く。門番と話をしてすぐにアルテミス達の元へ案内された。

「ただいま。」

「おかえり、ソウマ。シフォルさんはどうだった?」

「大丈夫だろ。そっちはどうだ?」

「騎士団が保護してくれるし、大丈夫だと思う」

「そうか。これで一安心・・・って訳でもないんだろうな」

「そう?とりあえず依頼もクリアしたし、村人も国が保護する。S級犯罪者も捕まえたんだし、とりあえず一件落着じゃないの?」

「まあな?けどなぁ」

俺の勘ではまだ何かあると思う。
リエルはどう思う?

『ほぼ確実にエルヴィンの他に犯人がいると考えられます』

マジで?

『エルヴィンはテイマーのスキルを所有していません。他の盗賊にも魔物を従えることの可能なスキルは存在しませんでした』

じゃあどうして魔物はあいつらに従ってたんだ?

『周囲に村人やマスター、盗賊以外の魔力反応はありませんでしたが、魔物からはあの場にいた人以外の魔力が検出されています。』

じゃあ、他に犯人がいるってことか?


『その可能性が高いかと思われます。さらにエルヴィンが今日村を襲った動機がありません。』

確かになんであいつは村を襲ったんだ?
あいつ自身が襲った理由も分からないし、魔物に畑を襲わせていた理由も分からない。
盗賊に身を落としたから食糧が尽きていた?
それだったらもっと効率的なやり方があるはずだ。それにSランク冒険者であったエルヴィンが王都のすぐ近くでこんなことをするか?
そう考えると第三者の線が強くなってくるな。

『エルヴィンが洗脳、もしくは思考誘導されていた可能性があります。』

思考誘導?一体誰に?
ってそれが第三者なんだろうな。

『少なくとも元Sランク冒険者を捨て駒レベルで扱うことの出来る者ということになります』

確かにそう言っても過言では無いかもしれない。Sランク冒険者は大陸の中でも数少ない準英雄級の実力の持ち主だ。もしエルヴィンがSランクの中でも低いレベルだったとしてもとんでもない実力の持ち主には変わりない。
そんな人物をいとも簡単に洗脳し、捨て駒のように使うとしたら確実に冒険者ランクでSS、SSS級の力を持つ可能性があるな。

『マスターの力はEXなど超えておりますが、その魔力感知でも反応しないのは異常です。』

リエルの言っていることが異常ではあるが、確かに俺の化け物ステータスを以てしても見つけられないのはおかしいな。

『神、もしくは亜神の類であるか、神器を使っている可能性があります』

そうなるとかなり厄介だ。俺の武器も神器だからその強さはよく知っている。それが敵の手にあるとするとかなり面倒だ。
しかももしかしたら神かもしれないとか、まじ冗談はよして欲しい。

「それでソーマ、どうするの?」

「ん?何が?」

アルテミスが可愛い顔で聞いてくるので少し顔がにやけてしまう。

「何ニヤけてるの?だからこれからどうするの
?旅に出るんでしょ?南の方に行くって聞いたけど」

「そんなこと言ってたっけ?けどそうだな、今の情勢を聞いてると南の方に行った方が良さそうだな」

「そうだね、冒険者ギルドは基本戦争には介入しないけど、巻き込まれると面倒だからね」

「南の方だと・・・・・・」

リエル、どんな国がある?

『ロディア王国の南には多数の国家が存在しますが、最大の国家はエレネシア教皇国です。海を楽しみたいのであれば海洋都市国家アクエリアス、アマゾネスの治めるジュラス大森林などがあります』

「エレネシア教皇国か海洋都市国家アクエリアス、あとはジュラス大森林とかか?」

「今の情勢的にはエレネシアは少し危険かな?」

危険?どういうことだ?

「エレネシアは今教皇選定の儀のまっ最中よ。」

「なら警備も厳しくなっておるのではないか?」

「確かにそうなんだけど、次期教皇選に備えて大司教達が演説をしているからその勧誘に巻き込まれると面倒だし、大司教達が外に出てるってことはいくら警備が厳しくなる反面、逆に暗殺の機会が増えることにもなる。もし暗殺が成功したら私達もしばらくは街から出れないかもしれないわ」

「それは・・・・・・やだな。面倒事に巻き込まれるのは避けたい」

『マスターは常に台風の目ですけれど』

リエルは黙らっしゃい。
さて、そうなると残りはアクエリアスかジュラス大森林だな。

「それにジュラス大森林は反対」

「なんで?」

「ジュラス大森林と言えばアマゾネスが支配する領域でしょ?あそこは国家ではないけれど、アマゾネスの部族同士が常に争いあってるの。ソーマなら絶対に巻き込まれるし、ソーマが狙われる可能性があるわ」

「俺が狙われる?基本誰にも負けるつもりはないけど」

「力の話じゃないわ。アマゾネスは男児が産まれる確率がとても低いの。だから他所から男が来たら種馬になることもある。」

「そっちか〜」

「ソーマが種馬じゃと?それは阻止せねばならんな」

さすがに種馬になるのは嫌だな。

『安心してください。マスターならば返り討ちにしてアマゾネスの頂点に立つことも可能です』

しねぇよ?!立ちたくないよ!

「じゃあ海洋都市国家アクエリアスか。」

「うーん、あそこもなかなかに複雑だけどソーマが提示した3つの中だったら一番マシかな?」

「どういう国なのじゃ?」

「この大陸には合計12個の海洋都市が存在しているわ。それらが集まってできたのが『黄道海洋都市共和国連邦』よ。そして『南方海洋都市共和国アクエリアス』が正式名称なの。このロディア王国は海に面して制海権を有しているけど、その他の海はほとんどが連邦が制海権を有しているほど強力な組織なの。」

「それはまたすごいな。」

ほとんどの制海権を有しているということは貿易面でも軍事面でも強大な力を持っていることになる。それは戦争において非常に有利になるし、国家同士の交渉においても有利になる。

「けど意外と不安定な国でもあるの。12個ある海洋都市だけど連邦派と都市派で意見がばらけてるし、商業で栄えた国が多いからとっても金にうるさいのよ」

連邦派と都市派というのはおそらく連邦政府が強い権力を持つか、都市政府が強い権力を持つか、みたいな派閥のことだろう。金にうるさいのは商人なら仕方がないと思うな。


「よし!俺たちの次の目的地は海洋都市アクエリアスだ!」




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