神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第54話 シフォルの元へ


街の中を歩いていき冒険者ギルドへと向かう。
扉を開いて受付へ向かうと受付嬢のアリスさんがいた。

「久しぶり、アリスさん。シフォルに会いたいんだけど今大丈夫?」

「少々お待ちください。確認してきますね。リルー、少し代われる?」

「はいっ!任せてください!」

受付の後ろで仕事をしていたリルが交代で入ってくる。

「久しぶりだな。仕事はちゃんとできてるのか?」

「はい。その節は本当に申し訳ございませんでした」

「随分と変わったみたいだな」

「もちろんです!私ももう先輩になったんですからね!」

そう言って新人受付嬢の方を指した。

「そうか。立場が人を成長させるとはよく言ったものだ」

「それよりどうしたんですか?少し深刻そうな顔をしてますが··········」

「んー、まあちょっとな。安心しろ。大丈夫だ」

笑顔で返して置く。
するとアリスさんが降りてきた。

「お待たせしました。直ぐにとの事です。ご案内致します」

アリスさんについて行きシフォルの元へ行く。
部屋に行くとシフォルが天を仰ぐように座っていた。

「···············ソウマ君。ありがとう···············」

「礼を言われるようなことはしてない。」

「それでも、だよ。」

シフォルはすぅっと深呼吸すると真剣な目をして言った。

「さて、話を聞こうか」



ソウマは出発してからのことを話す。



「なるほど·····エルはそんなことを··········」

シフォルがカロナの元へ行くと優しく抱きしめた。

「すまないね。今回の件は僕達の調査不足でもあるし、カロナには怖い思いをさせてしまった。」

「し、師匠·····確かに怖かったですが·····僕は大丈夫です。冒険者は常に死が近くにあります。それに僕はその覚悟をして師匠に弟子入りしたんです。」

「そうか·····そうだったね。シェラ、フィル、カロナ。3人ともお疲れ様だ。そしてよく村を守ってくれた。ギルドマスターとして感謝する」

シフォルは腰を曲げて頭を下げる。

「あ、頭をあげてください!僕達は当然のことをしたまでです!」

「そう。あれは仕事でもあるし、私達の意思でもある。」

「師匠が頭を下げるようなことでは無いですよ。私達は大丈夫ですし」

「ありがとう。それじゃあ次は政治の話をしようか。エルヴィンはS級国家犯罪者だから死刑は確定だ。」

「やっぱり断頭刑でしょうか?」

パーティでも額のあるフィリップがそういった。

「いや、エルヴィンは元S級冒険者だけど貴族じゃないから貴刑法あ適用されないよ。庶刑法でも死刑といったら斬首刑か、絞首刑、薬殺系だね。基本その三つかな。」

(貴刑法?庶刑法?なんだそりゃ)

『貴刑法とは王国の貴族、王族。それに準ずる位を持つ人間が法を犯したときに適用される刑罰法です。庶刑法はそれ以外の人間に適用される刑罰法になります。死刑は庶刑法では上から二つ目の刑罰にあたります。』

リエルがそう教えてくれた。

(サンキュ、リエル。………久しぶり過ぎない?)

『気のせいです。』

(いや、だって……)『気のせいです。』

そう、別に最近出番がなくて寂しかったとか、主人に忘れられて寂しかったとかではないのだ!!!

「ところでさ。エルヴィンって何やらかしたんだ?最上級の国家犯罪者になるなんてなかなかないだろう」

「十年位前かな?もともと僕とエルヴィンは仲があまりよくなくってね。現役のころよくケンカをして他のメンバーに止められてたんだ。金銭問題、女性問題、地位問題……そのたびにケンカしてたんだけど基本的に僕の方が活躍してたし、エルヴィンの好きだった女性と僕が付きあったり、ランクは僕の方が先に上がったりしてたんだ。そこまでで随分と不満がたまってたらしい。その後、僕がこのギルドのギルマス就任が決まって彼の怒りが爆発。このギルドを大破壊の上、彼の好きだった僕の彼女を殺害。それにとどまらず、街を破壊して歩き、王宮にも乗り込んで暴れた末、止めに来た僕たちが撃退したけど捕らえられずに逃亡。すでに国家犯罪者になるような罪を犯した上に不運なことに王族の一人が死亡。完全に国を追われる身になったわけさ。…………あれ?」

シフォルが何かに気づいたらしく首を傾げる。

「もしかしたら………全権剥奪刑になるかも………」

「な、何ですって?!」

「それは驚き……」

「話を聞いてると……そう判断するしか……」

カロナたちがそれぞれの反応を見せる。

(リエル。その全権剥奪刑?ってなんだ?)

『全権剥奪刑とは貴刑法、庶刑法のどちらにも当てはまる最上級の罰です。その文字通り所有権、財産権、市民権、さらに王国内における人権までもを剥奪する刑罰で当然、地位も名誉もありません。要するに生きる死人として王都を追放され、お金を持つことも街に入ることも、服を着ることも、武器を持つことも禁じられることにより、他者から何をされても文句を言うこともできない状況にするのです。そして王都からはその男の捕獲令が出されます。逃げ切り、他国へ亡命すれば生きて行けるかもしれませんが捕まった場合、火によって焼かれます。』

(火?)

『この国ではソティラス教という宗教を国教としています。ソティラス教はこの世界でもっとも広がっている宗教で、燃やされて死んだ者、燃やされた死体は天国へ行くことができず、地獄で永遠に死に続けるといわれているのです。そのため火刑はソティラス教徒の中で最も恐れられている処刑方法とされています。』

(へー。で、実際のところどうなの?地獄に落ちるの?)

『かつてはそうだったらしいですが現在は魂の無駄ということにより廃止されました。結局魂を新たにしたら罪人でも善人でも差はないということです。』

(宗教は結局宗教か。)

ソウマがそう思っているうちにも話は進む。

「師匠はどうするつもりなんですか?」

「どうする…とは?」

カロナは言いづらそうに訪ねた。

「その、助けるとか……?」

シフォルが一瞬ぽかんとすると声を上げて笑い出した。

「ははは。そんなことはしないよ。そんなことしたら僕まで国に追われてしまうからね。それに僕は彼を助ける理由もない。むしろ彼に関してはそれでいいと思うしね」

(そういえば彼女を殺されたとかさっき言ってた気が……)

「け、けど。もともとは仲間じゃ―――」

「カロナ。やめとけ。シフォルにも理由があるんだ。これに関しては俺たちはもう関わる必要はないんじゃないか?それよりも依頼について話をしよう。」

ソウマが強引に話を変えるとシフォルが目で感謝を伝えてきた。

「そうだね。今回の依頼についてだけど。実はフィルが返ってきた時点で『疾風の剣』とアルテミス様の依頼は完了されてたんだ。だから報酬については何の問題もなく渡せるよ。ソウマ君の依頼ももちろん大丈夫さ。下に戻ったら受付で報酬を受け取るといい。」

書類をぺらぺらと捲りながらシフォルはそういった。

「ソウマ君の方には国からの褒美が出るかな。これに関してはアルテミス様に直接聞いた方がいいかな。」

「わかった。ほかには?」

「特にないかな。ソウマ君はできればもっと依頼を受けてほしいかな。今、高ランク冒険者はどこでも不足しててね。依頼は塩漬け併せてたくさん余ってるんだ。」

「人手不足か?王都なら冒険者はたくさん集まりそうだけどな。」

「平時ならもう少しいたんだけどね。」

「何かあったんですか?」

「うん。というか聞いてないかい?北方戦争の話さ」

「ああ!そういえばルーシア帝国とウォーデン王国の戦争のことですね!」

「そう。六年前からその二国を中心に起きている大戦争のことだけど、先日優勢だったルーシア帝国をウォーデン王国が撃退したらしくて戦局がまた荒れるらしいんだ。戦争が起きるとその地の生態系まで変わってしまうことがあるから、冒険者は移動してきた魔物や戦争で功績を上げるためにそっちに行ってしまったんだ。おかげで南部の国は冒険者不足が激しいんだ」

(…………………)

ソウマは黙って聞いていたが何を言っているのか全く分からない。
こんな時は。

(教えて!リエルさん!)

『……かしこまりました。北方戦争とはロディア王国の北側にある超大国ルーシア帝国とパール海を挟んで反対側にあるウォーデン王国によるパール海制海権を掛けた戦争です。ルーシア帝国が国教近辺の町にウォーデン王国が工作し滅ぼしたとして攻め立てるように宣戦布告し始まりました。その後周辺の小中国合わせ約十国を巻き込んだ大戦争となっていて、ロディア王国はアドラシアにおける超大国ということで中立を宣言しています。先月に起こったアルドノアの戦いで劣勢であったウォーデン王国がルーシア帝国を破り、戦局が変化しているようです、』

(なるほど。やっぱり頼りになるな。)

『当たり前です!』






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コメント

  • Chaos2738

    街の中を歩いていき冒険者ギルドへと向かう。
    扉を開いて受付へ向かうと受付嬢のアリスさんがいた。

    「久しぶり、アリスさん。シフォルに会いたいんだけど今大丈夫?」

    「少々お待ちください。確認してきますね。リルー、少し代われる?」

    「はいっ!任せてください!」

    受付の後ろで仕事をしていたリルが交代で入ってくる。

    「久しぶりだな。仕事はちゃんとできてるのか?」

    「はい。その節は本当に申し訳ございませんでした」

    「随分と変わったみたいだな」

    「もちろんです!私ももう先輩になったんですからね!」

    そう言って新人受付嬢の方を指した。

    「そうか。立場が人を成長させるとはよく言ったものだ」

    「それよりどうしたんですか?少し深刻そうな顔をしてますが··········」

    「んー、まあちょっとな。安心しろ。大丈夫だ」

    笑顔で返して置く。
    するとアリスさんが降りてきた。

    「お待たせしました。直ぐにとの事です。ご案内致します」

    アリスさんについて行きシフォルの元へ行く。
    部屋に行くとシフォルが天を仰ぐように座っていた。

    「···············ソウマ君。ありがとう···············」

    「礼を言われるようなことはしてない。」

    「それでも、だよ。」

    シフォルはすぅっと深呼吸すると真剣な目をして言った。

    「さて、話を聞こうか」



    ソウマは出発してからのことを話す。



    「なるほど·····エルはそんなことを··········」

    シフォルがカロナの元へ行くと優しく抱きしめた。

    「すまないね。今回の件は僕達の調査不足でもあるし、カロナには怖い思いをさせてしまった。」

    「し、師匠·····確かに怖かったですが·····僕は大丈夫です。冒険者は常に死が近くにあります。それに僕はその覚悟をして師匠に弟子入りしたんです。」

    「そうか·····そうだったね。シェラ、フィル、カロナ。3人ともお疲れ様だ。そしてよく村を守ってくれた。ギルドマスターとして感謝する」

    シフォルは腰を曲げて頭を下げる。

    「あ、頭をあげてください!僕達は当然のことをしたまでです!」

    「そう。あれは仕事でもあるし、私達の意思でもある。」

    「師匠が頭を下げるようなことでは無いですよ。私達は大丈夫ですし」

    「ありがとう。それじゃあ次は政治の話をしようか。エルヴィンはS級国家犯罪者だから死刑は確定だ。」

    「やっぱり断頭刑でしょうか?」

    パーティでも額のあるフィリップがそういった。

    「いや、エルヴィンは元S級冒険者だけど貴族じゃないから貴刑法あ適用されないよ。庶刑法でも死刑といったら斬首刑か、絞首刑、薬殺系だね。基本その三つかな。」

    (貴刑法?庶刑法?なんだそりゃ)が丸々2回使われてますよ

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