神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第50話 出発

翌日朝早くから俺とフィリップはギルドに出かけていた。

「それでどのような処置が取られるのでしょう?」

フィリップが受付嬢に問い掛ける。

「はい、ギルドマスターからの指名依頼ということでソウマさん。あなたに言ってもらいたいということです。」

「やっぱりか、けど俺は別に魔物についてなんて詳しくないぞ?今のところ倒すことぐらいしか出来ないから」

「それがギルドマスターがソウマさんなら大丈夫だって言っていて。」

「はぁ、仕方が無いか。それじゃあフィリップ、出発は10時くらいでいいか?どうせ直ぐに着くからな」

「分かりました。それでは私は準備をしてますね」

そう言ってフィリップはギルドを出ていった。

「済まないがギルドの資料室を借りてもいいか?」

「ソウマさんはSランクの冒険者なので閲覧自由です。場所は分かりますか?」

「いや知らん。案内して欲しい」

「分かりました、こちらへ」

ソウマは資料室に案内してもらった。

「ここがギルドの資料室です。奥の扉の物以外ならば閲覧自由となっていますのでご自由にお使いください」

「分かった。」

「それでは失礼します」

そう言って受付嬢は出ていった。

「それにしてもすごい量だな。っと、その前にまずはアルテミスに連絡しなきゃな」

ソウマは念話を使ってアルテミスに連絡を取ると今日何時に出発するかなどを伝えた。


『それじゃあソウマが来てくれるのね?』

『ああ、それじゃあ時間通りによろしく。それまで俺はギルドにいるからなんかあったら来てくれ』

『わかったわ』

『じゃ』

そう言って念話を切ってソウマは目の前にある本の山に目を向けた。


「さて、詰め込むか」

ソウマは1番上の本から読み始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ソウマが読み始めてから2時間経たない頃ソウマはほとんどの本を読み終わっていた。

「よし、これでいいか。なかなか面白い本多かったな。それにしてもこれだけの量の本を2時間経たずに読み終わっちゃうなんて流石はスキル様々だな」

ソウマは本を読む時いくつかのスキルと魔法を重ねがけすることで反射神経、読む速度などをあげ、さらに瞬間的に記憶できるスキルも使ったので通常よりもとてつもなく早く読み終わったのだった。

「さすがは俺の相棒だ。あれだけのスキルをよく制御出来たもんだな」

『いえ、このような場所で活躍しないと、最近は活躍の場所がないので』

そういったのはソウマのスキルである【叡智覇神】こと、リエルさんである。
最近出番が減ったせいか、少し拗ねていた。

「悪かったよ。そろそろ約束の時間だ。来てるかな?」

『既にフィリップさんもアルテミスさんも来てますよ。』

「お、そうか。それじゃあ俺も行くか」

そしてソウマは資料室を出て受付の方へ戻った。

「2人は・・・と、いたいた」

ソウマは話している2人を見つけて2人の方へ向かった。

「お待たせ、おはようアルテミス」

「あ、ソウマ。おはよう。準備は出来てるの?」

「もちろんだ。2人はどうだ?」

「私は出来てるわ」

「僕もです。」

「よし、それじゃあ行こうか。」

3人はギルドから出て王都の出口に向かった。

「そう言えばシュレイさんはどうしたの?」

「あ・・・・・・」

ソウマは完全にシュレイのことを忘れていた。

「どうすっかな?シフォルの所に預けたまんまだからな。」

「せっかくだから一緒に行きましょうよ。今からパーティでやりますってすると大変だから個人的に連れていくってことで」

「しゃあねぇか。それじゃあ待っててくれ。すぐ連れてくる」

そう言ってソウマが転移してから数分後シュレイを連れてソウマが戻ってきた。

「お待たせ、」

「お待たせなのじゃ。と言っても誰じゃ?」

「そう言えばお前のことを知ってるのはアルテミスだけか。」

確かアルテミスが帰ってきた時にはシュレイは酔っ払って寝てたよな。

「そうね。こんにちはシュレイさん。私はソウマの婚約者・・・のアルテミスです。これから一緒に旅をする仲間ね。よろしく」

何故か婚約者を強調するアルテミス。

「うむ、よろしく頼むぞ。妾は黒皇竜族のシュレイじゃ。名前はソウマに付けてもらった。不束ものじゃがよろしく頼む」

「え、ええ」

シュレイの堂々とした態度に少し詰まるアルテミス。アルテミスはシュレイを自分の恋敵だと思ったのだが、シュレイは全くそんなことを考えてなかった。それもそうである。シュレイは生まれ持った変異性から里で蔑まれ、望んでいたのは自分のことを認めてくれる仲間だ。そしてそこにソウマからの提案が来た。ソウマには感謝と敬意はあれど未だ恋心を持っている訳では無いのだ。

「こっちは一緒に旅に出る訳では無いが、この街で出会った冒険者仲間のフィリップだ。これからフィリップの仲間がいる村に向かう。来るだろ?」

「もちろんなのじゃ!」

シュレイは笑顔で言った。

「さて、昼までにはつかないとな。」

「昼までですか?しかし王都からジル村までは半日かかりますよ?戻ってくる時もアルテミスさんとかなり走ってギリギリで着いたんです」

「そうだよ。どうやって昼までに着くのよ?それにもう1時間半と少しで正午よ?」

「それに関しては大丈夫だ。」

「妾が乗せていこうか?」

と、シュレイが提案した。

「いや、シュレイは仲間であって乗るためのものでは無い。俺はそんなことをするつもりは無いし、これからもするつもりは無い。」

「そ、そうなのか」

「それじゃあどうするの?」

「こうする。」

ソウマは空に向かって大声で叫んだ。


「・・・きん〇う〜〜ん」

すると、空から少し大きめの雲が降りてきた。

「なんかすごく駄目な気がする。」

「安心しろ。これは魔法だ。俺が作ったオリジナルだけどな」

「やっぱり怪しいよ!!」

アルテミスはソウマに対し突っ込む。

「それでこれはどうやって使うんですか?」

フィリップは目の前にある雲を指さしながら質問した。

「こうするのさ」

ソウマはその雲に飛び乗った。
するとソウマはすり抜けることは無く、雲の上にしっかりと立っている。

「す、凄い!そんなことが出来るなんて!」

「いいのかなぁ?」

「アルテミスはこの世には知る必要の無いこともある。」

「いや、そういう問題じゃないと思うんだけど」

「むう、そこまで言うか。ちょっと待ってろ」

(リエル、これはいいと思うか?)

『・・・・・・』

(え?ダメなの?)

『よくはないと思います』

(そ、そうか。)

リエルに否定されたソウマは仕方がなく筋〇雲を空に戻した。

「どうしたのよ?」

突然戻したソウマにアルテミスは不信感を抱く。

「いや、やっぱり良くないんじゃないかと思ってな。」

「どっちなのよ。まあいいわ。それじゃあどうするのよ?」

「ふむ、それじゃあとある魔術師が作った動く城とかどうだ?火の悪魔が住んでるぞ」

『ダメです』

「あ、そうですか。それじゃあ・・・・・・ル〇ラは?」

「なんかいけないと思うのは妾だけか?」

「ほ、僕も思いました」

「えぇ、それじゃあ魔法〇絨毯」

『いい加減にしてください?ちゃんと移動用の魔法は考えてあるでしょう?』

(あ、はい。ごめんなさい)

リエルに怒られソウマは魔法を発動することにした。

「みんな俺の近くに居てくれ」

「?ええ」

ソウマは3人が自分の近くに寄ったのを確認して魔法を発動した。

「風魔法 風海の箱舟」

ソウマ達の足元に風が収束しそれはだんだんと形を成していく。

「すごい・・・」

そしてその風で出来た箱舟はソウマ達4人を乗せても消えること無く空に浮いた。

「さて、これでいいだろ?」

「す、凄いです!どうやってこんな高度な魔法を・・・!」

「それはまた今度な。それじゃあ出発するぞ」

「了解なのじゃ」

「はーい」

「お願いします!」

ソウマ達の乗る箱舟はゆっくりと高度を上げていき直ぐに直線移動に入ってジル村へと向かって行った。


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