神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第45話 初依頼(2)〜新たな仲間〜

ソウマはアルテミス達と別れてから1分ほどでアレトニウス山の麓に着いた。

「にしても高いな。」

アレトニウス山は標高約10,000メートル。エベレストよりも高いのだ。
しかも山の中だけで天候が変わって、嵐や台風、落雷や雹が降る場所様々である。だから、頂上は全く見えない。

「てか、どこで暴れてるんだ?聞いとけばよかったな。とりあえず、登るか」


ソウマはアレトニウス山に足を踏み入れて行った。


ソウマがアレトニウス山に入ってから30分以上が経った。

「これは・・・凄いな。」

最初の頃は弱い魔物が集団で襲ってきたりなかなかに強い魔物が1匹で襲ってきたりするだけだったが、登っていくにつれて毒霧でできた竜巻だとか、Aランク指定魔物以上の魔物が集団を組んで襲ってきたり凶悪な魔物の変異種だとかかなり凶悪な山だった。

「これはタイラントドラゴンどころじゃないだろ」


今襲ってきたのはオークエンペラー。オークキングをも凌駕するSSランクモンスターである。それはタイラントドラゴンと同等の強さ他も言われている。

しかもこいつは他のオークを統べる能力も持っているので、オークエンペラーを王とする軍勢が出来てしまう。実際それによって滅びた国もある。

ソウマはオークエンペラーを斬羽で首を飛ばして進もうとするが、首が瞬時に再生して再び攻撃してきた。

「ちっ!絶対死んでただろ!」

『恐らくスキル超速再生だと思われます』

「ちっ!面倒な能力持ちやがって!」

その間にもオークエンペラーはソウマに攻撃してくる。
本来ならば超速再生を持っていてもソウマならば倒せるのだが、ソウマが昇華してからまだ力が馴染み切って居ないので少してこずっているのだ。

どうしたものかとソウマは考え斬羽に炎を纏わせた。

「これなら再生出来ないだろ?!」

それで再び首を跳ねてその首と体を通常の炎よりも強い黒い炎で燃やし尽くした。

「ったく。別にタイラントドラゴンじゃなくてこいつでもいいんじゃないのか?ん?」

オークエンペラーの隣で愚痴っているとソウマは何かを感じ取った。

「やっとこさ見つけたか?」

『魔力反応、生体反応、微かに聞こえた鳴き声からタイラントドラゴンだと思います。しかしこれは・・・』

「戦闘中ってか?他の魔物かなぁ?めんどくせ。まあ、行ってみるか」

ソウマはタイラントドラゴンと思わしき気配がある方に歩き出して行った。

少し歩いた頃ソウマの前には2体の竜が戦っていた。

1匹はソウマが探していたタイラントドラゴン。凶悪な面をしていて鋭い爪と牙を持つ暴虐の化身。

もう一体はタイラントドラゴンより一回り大きく、漆黒の鱗に覆われた美しいドラゴンだった。

「なんだ?あのドラゴン」

『肉体的特徴から黒皇竜と思われます。世界的に数少ない希少種です。さらに、戦闘で使用しているスキルと左右に2つずつある翼より変異種だと思われます』

「希少種の変異種ね。にしても・・・かっこいなぁ・・・」

黒皇竜の変異種はどうやらタイラントドラゴンに苦戦しているようだ。
なんと言っても相手は暴虐の化身だ。
そう簡単に叶う相手ではない。

「あれ?けど普通竜がドラゴン相手に苦戦するなんてないよな?」

『足の付け根を見てください。負傷しています。タイラントドラゴンでは無い他の存在に付けられたものだと推測されます。そしてそのせいで苦戦しているのでしょう。』

「なるほど。よし、決めた。あの竜従魔にするぞ。」

ソウマはタイラントドラゴンと黒皇竜の間に割り込んで行った。

「もしもーし。ちょっといいですか?」

『なっ!人間だと?!何故人間がこんな所に?!そこを退け!死にたいのか?!』

「はは、黒皇竜は優しいんだな。まあ、見ててくれよ。怪我してるんだろ?」

そう言いながら、ソウマはタイラントドラゴンに突っ込んでいく。
そして斬羽に魔力を纏わせて上段から思いっきり振り下ろした。

斬羽の刃は堅いタイラントドラゴンの鱗を易々と切り裂きタイラントドラゴンを真っ二つにした。

「この力にもだいぶ慣れてきたな。さて、黒皇竜さんよ?」

『な、なんじゃ?我をどうするつもりじゃ?殺して素材にするのか!』

どうやらタイラントドラゴンを瞬殺した事で怯えさせてしまったようだ。

「そんなことしねぇよ。助けたのにわざわざそんなことするかよ。」

『じゃあなんのようじゃ?そもそも何故人間がこんな所にいる?ここは人間なんかが耐えれるような場所では無いはずじゃ』

「まあ、ついこの前人間やめちゃってね。それはいいとしてその怪我大丈夫か?」

『う、うむ。じきに治る』

「まあ、治しておいてやるよ。ほれ、《パーフェクトヒール》」

ソウマが魔法を唱えると黒皇竜の傷がすぐに治った。

『パーフェクトヒールをそう易々と使えるじゃと?!』

「あ〜、ちょっといいか?お前なんでこんな所にいるんだ?黒皇竜ってこんな所にいるもんなのか?しかも、変異種だよな?」

『そう、我は変異種なのじゃ。そのせいで里から追い出され彷徨っていた所さっきのドラゴンに急に襲われてな。怪我をして苦戦してしまったのじゃ』

「そうか。辛かったな。じゃあこれからどうするつもりなんだ?」

『これから里に戻ったところでどうにもならんし、戻る場所はない。適当に旅でもするつもりじゃ』

「そうか。じゃあ頼みがあるんだが・・・」

『ん?なんじゃ?こちらは助けられた身じゃ。出来ることならやってやるぞ?』

「お前、俺の従魔にならないか?」

『へ?我がお主のか?』

「ああ、お前綺麗だし、良い奴みたいだしな。どうせ世界を旅するなら俺と一緒に旅しないか?まあ、もう1人と1匹はいるんだけどな」

『なるほど、分かった。我はお主と契約しよう』

「いいのか?何か試練とかなくて」

『別に先程の力を見れば文句はない。よろしく頼む』

「そうか。じゃああの死体を回収してから街に戻るんだが、街の中でその姿だとなぁ」

『む?そうか。さすがに驚かせてしまうか。ちょっと待っておれ』

すると黒皇竜の身体が光だしその姿はだんだんと人間の姿になって行った。
光が収まった時そこに居たのは鱗と同じような真っ黒な髪の毛を腰まで伸ばした女性だった。

「これで良いかの?」

「・・・あ、ああ。それよりも何故裸?」

「む、人間には服を着る習慣があるのじゃったの。ちょっと待っておれ」

次は黒皇竜が身体の周りに魔力を纏わせるとそれによって服が出来た。
できた服は黒い和服を来た美女だった。
しかも超ナイスボディなので和服を押しのける2つの双丘がかなり目を引く。

『マスターは変態ですね。』

「うっせ。てか、この世界にも和服ってあるんだな?」

「わらわの里ではよく着られている服だったぞ?」

「そうなのか。それと黒皇竜って毎回呼んでると面倒だな。名前ってあるのか?」

「いや、特にないのじゃ。主様が付けてくれるとと嬉しいのじゃ」

そう言って近くまでやってくる。

「あ、主様?」

「まあ、いいでは無いか。それよりも名前を付けて欲しいのじゃ」

「そうだな。じゃあ・・・シュレイなんてどうだ?」

「シュレイか。いいのじゃ!ありがとうなのじゃ!」

「ああ、じゃあ回収してから街に戻るから少し待っててくれ。」

ソウマら真っ二つになったタイラントドラゴンを無限収納に回収してマシロの元に戻ってきた。

「じゃあ戻るぞ」

「どうやって戻るのじゃ?わらわが乗せて行こうか?」

「いや、さすがに街の奴らが驚いちゃうから違う方法で戻るよ。俺に触れててくれるか?」

「む、わかったのじゃ。」

シュレイはソウマの右腕を掴んだ。

「よし、じゃあ《転移》!」


ソウマとシュレイの姿はアレトニウス山から消えたのだった。




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