最弱が世界を救う。

しにん。

今始まる終焉の時。

目を覚ますと、見慣れた天井があった。
エインガルドの王宮の天井だ。


「今回の試練で解放された記憶は……」


一つ目は、レインの仮説通りの第三勢力の正体。
薄々感じ取っていたが、エクスは既に答えにたどり着いていたため、自分の解答が正解だと確信する。


「やっぱ、真の敵は――ゼウス、貴様か。それじゃ、俺らはあいつの手の中で踊らされていたってことか?いや、今はどうでもいい。次の記憶は……」


最後の記憶は、ゼウスのいる場所。


「あいつの居場所……ヤツを倒せば世界は救われる、だよな?」


ソロモンズリングを眺め、問いかける。
今は亡きソロモンへと。


「さて、目が覚めたって報告しないと――」


エクスは起き上がり、扉を開けると目の前には地獄があった。
見間違いだと思い目を擦り再度確認するが、目の前の光景に言葉が出ない。
扉を開けると廊下があったはずだが、そこにはなく崖が代わりにあった。
王宮はこの部屋を残し全壊、街は火の海に。


「何が、どうなって――」


「あ、エクス……さん。やっと、目が覚めたんです……ね」


セレネは扉の近くで必死になって部屋を守っていた。
固有結界で、エクスが眠りについていた部屋全てを覆い敵からの攻撃を防いでくれていたらしい。


「一体何があった、敵は!」


「世界を、みんなを守って――」


セレネはバタりと倒れ込んだ。
急いで息を確認すると、微かにだが息をしていた。
恐らくは魔力枯渇による失神。
セレネの安全のため、エクスが寝ていたベッドに寝かす。


「見る限り、何かが攻めてきた。しかも恐らくだが俺を殺しに……」


辺りを再確認すると未だに戦闘が繰り広げられていた。
少し遠くで視認は出来ないが、ゴロゴロと雷の音がするので誰だかすぐにわかる。
第一、攻めてきてどれ位時間が経ったのか分からないが、まだ戦えるほどの力があるといえばアイツしか居ない。


「よし、一気に飛ぶぞお前らッ!!」


龍達から魔力を貰い、炎と水の翼を生やす。


「ワシらが受けていた試練の最中になんて事になっとるんじゃ。これは少しヤバいかもしれんの」


「ゴチャゴチャ言っている場合じゃないぞ。油断は禁物だ、エクス」


戦闘中のゼノの近くへ転移すると、途方もない数の敵と戦っていた。
人の形に似た何かは、一瞬悪魔にも見えたが明らかに違う。
敵全てが同じ見た目で、同じような動きをしている。


「雷鳴よ、聞け!!天を揺るがす覇天の霹靂へきれき!!」


ゼノは敵全てに向けて広範囲に雷を落とし、敵をダウンさせていた。


「ゼノ、これは一体何がどうなってる」


「やっと目覚めたか。突然、コイツらが攻め込んできたんだ。悪魔でも無ければ人間でもない……それに倒しても倒しても起き上がってくる。倒すには、心臓となる部分を壊さないとダメみたいだ」


見てみると、先ほど倒れた敵たちは何事も無かったように立ち上がっていた。
敵の数はざっと数えても数万はくだらない。
それら全てを一人で相手していたゼノの体力は既に消耗しきっていた。


「すまない、エクスくん。私はそろそろ体力と魔力の限界だ。やはり、私は弱いままだ」


「違う、お前は強い!!後のことは任せろ」


「しかし、あの量の敵は流石にさばききれないぞ。どうするつもりだ?」


「レインの力を借りる。心臓となる部分を壊さないと行けないみたいだから、広範囲に尚且なおかつそれを破壊する威力が必要だ、頼めるか?」


「なるほど、お嬢の魔法ならそれが可能というわけか。了解した、殲滅する」


敵はぞろぞろと、敵と判断したゼノの方へと進軍する。
それを利用し、エクスは敵を一箇所に集める。


「ごめんなゼノ。お前を餌に使って」


「構わないよ、私に出来る事であれば何でもするさ」


「それじゃ、安全な所に飛ばすぞ」


転移魔法を使い、セレネのいる部屋へとゼノを飛ばす。
ゼノからエクスへと、敵は標的を変える。
しかし、空を飛んでいるエクスに攻撃は届かない。


「これでどれだけやれるかが、今後の魔力の消費にも繋がるよな……」


「そう恐れるな、お前ならやれさ」


龍達からの励ましで、エクスは拳に力を込める。
ギュッと握りしめた拳を点に掲げ広げる。
空には大きな火の玉が生成され、敵全てがなす術なく二つ目の太陽を眺めていた。


「サンバースト!!」


勢いよく手を振りかざすと同時に太陽が地面へと向かい落ちていく。
やがて地面へぶつかると、辺り一帯を焼き払い巨大な穴を作り上げる。


「どれほどやれた?」


「見事だ、二体を残しほぼ全滅。しかし、その二体なかなかの強者と見れるな。あの攻撃を受けてなお立っている」


龍の言葉通り、数万といた敵は跡形もなく消滅していた。
焼け野原となった大地に立っている二体を除いて。


「やっぱりアイツらか……何処と無く感じたことのある魔力だとは思ったけど」


すると、地上から大きな声で呼ばれる。
勿論、エクスの知っている人物だった――


「お久しぶりです、エクスくん。お迎えにあがりましたよ?」


「迎の割には派手じゃないのか?ファントムさんよ」


地上に立っていた一人は仮面で顔を隠していたファントム。
その隣に居る人物は見たことのない人だった。
フードで頭を隠し、正体は不明。


「それで、迎えということはゼウスの場所へ連れてってでもくれるのか?」


「いえいえ、私共が連れていく場所は――地獄です」


エクスの背後から鋭い刃物が飛んでくる。
間一髪で気づき、紙一重で避ける。
後ろを振り返るとファントムの隣にいた知らない人物。


「二人か……あまり得意じゃないんだけどな、一対多ってのは」


再度攻撃を仕掛けてきたフードの人物の腕を掴み、一気に転移魔法を使い地面へと叩きつける。


「ガハッ――」


「お前は、誰だ!!」


「いやはや、英雄くんがここまで強いとは……おじさんもキツイんですよね。はぁ――全く、人間ってのは相も変わらずムカつきますね、ファントムさん」


叩きつけたはずのフードの人物は、一瞬で受身うけみを取りダメージはあまり受けていなかった。
それどころか軽くストレッチを始め、今の攻撃は効いていないとでも言っているようだった。


「お前は――」


フードを取ると、男の素顔が明らかになる。
メガネをはめ、どこか頼りない男。
エクスに魔力を作り出すことを不可能とさせる呪いをかけた張本人――ケイルだった。


「お久しぶりです、英雄。えーっと、あぁ、確か《憤怒》の悪魔の時以来ですかね?そこまで最近じゃありませんでした、失敬失敬」


「ケイル、お前に一つ聞きたいことがあるんだが」


「皆まで言わなくとも分かりますとも。呪いのことですね?あれは私を殺したところで無駄です。呪いを解くためには貴方の心が強くないとダメですよ」


「それは一体どういう――」


「お喋りはここまでです、さぁ処刑のお時間です。今宵は、華麗な踊りで朽ち果てていただきます」


瞬間、景色が変わる。
辺りを見渡し状況を把握する。
どうやらファントムが作り出した固有結界の中へ引きずり込まれた様だ。


「イッツショータイム!!」


パチンッと音と同時に、四方八方からナイフが飛んでくる。
ケイルが仕掛けた罠を発動させ、エクスを動かしているようにも思えた。


「小僧、逃げ回っては相手の思うつぼだ!早くなにか手をうて!!」


「わかってるっつーの!!」


全身から炎を溢れ出し、飛んでくるナイフどころか仕掛けられた罠全てを燃やし尽くす。
その行動を見てケイルは接近戦へ持ち込んできた。


「私の苦手な戦いをこうも作り上げるとは、君は私の苦手なものでも知っているのかい?」


「知らないね、俺はお前の事なんて何も知らない」


小太刀を両手に、高速な斬撃で攻め込んでくるケイルを軽く避けファントムへの警戒レベルを上げる。


「見え見えだ!!」


わずかに生まれた死角からの拳に、エクスは素手で受け止め防御する。


「いやはや、二人がかりで圧倒的力の差で抑えることが出来ないとは……英雄くんやりますね」


「まぁ、仕方ないぞケイル。これはシナリオ通りだ」


訳の分からない事を話している二人に、エクスは決定打を決めに行く。


「英雄くんまさか――」


ケイルの背後に回り込んだエクスは、そのまま遥か上空へ転移する。
空中で身動きのできないケイルは、何も出来ずに地面へと落下していく。


「ははは、あるじのシナリオ通り……か。どうにか変えれるかな、と思ったんですが……」


防御一つまともに出来ないケイルに、斬り掛かる。
何度も何度も転移魔法を使い、攻撃しては転移しを繰り返し反撃の隙を与えない。


「これで、終わりだッ!!」


最後の一撃に全力を込め斬りつける。
ケイルの体は真っ二つに引き裂かれ、やがて砂へと姿を変える。
サラサラと風に流され、やがて跡形も無く消え去る。


「次はお前だ、ファントム」


「くっくっ……ハッハッハッハー、面白い、面白いぞエクスくん。まんまとあるじのシナリオ通りに動くとは……シナリオから外れた私達まで強制的に同じレールに引きずり込むなんて……」


ファントムは理解できない言葉を次々と述べ、更には力なく笑い始める。
最後にこう告げた。


「神は今降臨なさる……さぁ、存分に絶望しろ……くははははっ!!」


「黙れファントム!!」


勢いよく走り出すと、ファントムは膝から崩れ落ちた。
突然のことにエクスは足を止める。
先程同様に、ファントムの体は砂へと変わり風に流されていく。


「さっきから何なんだこいつら……人間じゃ無かったのか?いや、その事は後でいい。今は、ファントムが言っていた神がどうてらって……」


背後から近づいてくる気配一つ。
そのことに気づき、エクスは振り返る。
すると、パチパチと拍手をしている男がいた。


「私が作ったシナリオから逃げたと思えば、君がきちんと処理してくれるとはね。私は心の底から嬉しいよ、エクス」


男を見た瞬間、エクスは固まる。
ずっと探していた敵、ずっと追いかけていた敵。
その姿が目の前にあった。
幼き頃、姿を消した父親――


「ゼクス――!!」


「元気そうで何よりだ、エクス。いや、今は人間の王だったかな?」


「貴様には話がある……ちょっと話に付き合ってくれないかな?」


「ほう、親に向かってその態度。成長したというのか、ヤンチャになったというのか。まぁどちらでも構わないか……それで話とは?」


「お前が……全ての黒幕だったんだな?」


「記憶は取り戻しているはずだ、それが正解だ。それで他には何が聞きたい?」


「お前の目的は何だ、何のために悪魔と人間を襲った!!」


「決まっている――お遊びだ」


ゼクスが放った言葉に、エクスの堪忍袋の緒が切れる。
龍達の魔力を使い、さらに加速し音速を超える。


「なってない」


エクスの背中から炎と水の翼は消え、制御不能になったエクスはそのまま転がり回る。


「羽を失った鳥は、無様に死ぬだけだ」


「クソッ!」


体勢を立て直し、握る力を強め再度ゼクスへと立ち向かう――

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