最弱が世界を救う。

しにん。

終焉の幕開け。

三人は試練の部屋で立ち尽くしていた。
レインが考えていた試練では、エクスに圧倒的不利で平等な立場での戦いとはいえない。


「試練はどうするんだ?試練無しでは俺はここから出られないんだけど」


「そう……だよね。戦って負けて、綺麗にエクスくんを送り出したかったのに。思い通りにならないねぇ」


「人生なんて思い通りになることの方が少ないさ。何が起こるか分からない、それが人生ってヤツさ」


二人は話し合い、結論には至らなかった。
ずっと頭をひねらせていた二人に突然声がかけられる。


「俺様を置いて話すとは何事だ、雑魚どもが」


仁王立ちし、胸を張り腕を組みこちらを見下す存在。
二人同時の試練のため始めから居たが、レインからの指示で動かなかった《憤怒》の悪魔、サタン。


「どうした?」


「試練についてだが、あまり時間をかけてっとそいつここから永遠と出れずに死ねなくなるぞ。それでもいいんなら、さっきみたいに永遠と考え続けろ。俺様は知らん」


堂々とした態度は、攻撃性なものではないが的を得た発言だった。
以前、試練に時間をかけすぎムシュに同じことを言われた。
明確な制限はないものの、時間をかけてもいいことは何一つない。


「確かにそうだが、そうは言っても簡単に思いつく訳がないだろ?」


ニコリと笑い指を立て、自慢げな表情に変わるサタン。


「そこでお前らに俺様から超特別な提案があるんだが。どうする?」


「それはお前を信用して、お前に全てを任せろとでも?」


「そうだ。少しばかり俺様からのお願いを聞いてもらうだけって試練だ、どうだ?」


二人はしばらく考え、ひとつの答えにたどり着く。


「一応話だけ聞いて、決めるってことでいいか?」


「私はそれでも構わないよ」


レインは頷き、サタンへ視線を送る。
目線で察してサタンは話し始める。


「俺様からの頼みってのは――」


サタンの姿に、誰しもが唖然としていた。
プライドが高いサタンが自ら頭を下げ、大声で叫んだ。


「悪魔と人間、同盟を結んでくれ!悪魔はそりゃあ悪い奴らかもしれねぇが、俺様だって王だ。今は悪魔の王だ。民草を見殺しになんてさせたくない。頼む、人間と悪魔間での争いごとを止めさせてくれ……」


エクス達が七大悪魔を倒したことにより、悪魔の勢力は風前の灯に近い。
このまま人間側が一方的に悪魔を倒すとなると、文明は全滅せざるを得なくなる。
そのため、サタンは悪魔の王として人間の王であるエクスへと――


「俺ら人間になんのメリットがあってそれを言うんだ?悪魔は俺ら人間にとっちゃ、恐怖であり怨みのある存在だ。お前達が一体何人の人間を殺してきた」


「黙れ、それは貴様ら人間も同じだろうが。俺様達悪魔からしたら、人間だって怖いし怨みだってある。それの何が違うんだ?」


その質問をもらった時、エクスは過去に一度同じことを聞かれたことを思い出す。
喧嘩両成敗と言えば、解決なのだがこればかりは命が関わっている。
そう簡単に答えなんて出せるはずがなかった。


「確かに、俺は何個もの命を奪ってきた。命の重みも理解している。大事な人の死や仲間の死、嫌という程思い知らされた。だからこそ、俺らは誰も死なせないために悪魔を倒してきた」


「正義ヅラしてんじゃねぇぞ、偽善者。貴様のやっていることの何が正しいんだ、俺様達だって貴様ら人間と同じ理由で人間を殺してきた!!」


全く同じ内容を返され、戸惑う。
人間が悪魔を殺す理由は、悪魔が攻めてきたから。
そのせいで何人もの死者が出て、嘆き悲しむ人が急増した。
今でも心の傷が治らない者だって少なくはない。
しかし、それは悪魔も同じだと言う。


「ま、待て。それじゃあ俺達人間が先に仕掛けたみたいな事を言ってるではないか。俺らはお前達が先に攻めてきたから――」


「何を言っている、貴様ら人間が先に攻めてきたんだ」


二人の話は噛み合わない。
互いの主張は平行線で、正反対。
人間は悪魔が攻めてきたから、悪魔は人間が攻めてきたからと矛盾していた。


「それって、いつの話だ」


「そうだな、ちょうど六年ほど前になるんじゃねぇか?あん時の人間は恐ろしく強く、七つの大罪の俺らでさえ抵抗出来なかったな」


「六年……前だと?」


エクスが悪魔と戦うため、旅に出て二年。
悪魔が本格的に攻めてきて人類が衰退したのが、エクスが旅に出る四年前。
悪魔と人間が攻められた日は一致する。


「有り得ない……人間と悪魔が攻め込まれてきた日が同じ……?」


「はぁ?本当に同じ日なのか?」


二人の会話を聞き、レインはずっと目をつむり考え込んでいた。
心の中で様々な疑問が浮かび上がりはすぐさま思考を巡らせ、答えへと急いでいる。


――攻められた日が同じということは、時間が違う?どちらか先に攻めたと言う事ならば先に攻めた方が悪。いやしかし、両者の主張は敵が攻めてきたからそれに応えたと言っている。なら、先に攻めたと言うことはない。なら、どうして――


「レイン、どうしたんだ?」


「ちょっと考えててね。二人共確認するんだけど、相手が攻めてきたから仕方なく反撃した、でいいんだね?」


両者頷きレインの話を真剣な顔で聞く。
そして、その話に驚き確信する。


「なら、これは仮説だけど第三者がいるという可能性は?」


それだ、と。


「第三者の誰かが、両方へ攻め込んだと言うことならば話は通ると思うんだ」


「確かに、それだと色々と筋が通ってるな。同じ日に同じような怒りや憎しみを産ませる……そうなりゃ、互いに敵だと決めつけ争いになる」




レインの仮説は、次々と不可解な問題が解決されていく。
だからこそ今出せる答えは一つだった。


「それじゃ、悪魔と人間での争いは今後禁止し共に助け合う。もし、それが破られた時はきちんと話し合いで罰を決めるって感じでいいか?」


サタンはコクリと頷き、一歩前へ。
互いに手を差し伸ばして握手を交わす。


「いいぜ、お前の寛大さに惚れちまいそうだぜ」


その言葉を聞き、レインはバッと前へ飛び出して二人の間に割り込む。


「ダメ!エクスくんは私のだから誰にも渡さない!!」


「分かってるって、冗談だ冗談。ったく、俺様と同じ感性を持つお前だから、お前の考えなんて大体わかんだよ」


再度手を差し伸べてきたので、エクスは無言でその手を握る。
握手をするとばかり思っていたので、急に手を引かれバランスを崩しサタンの方へ倒れ込む。


「おっと――」


倒れ込むエクスを抑え、サタンは必死に背を伸ばし唇と唇を。


「な、何やってんの!」


「何って、キスだが?好きなやつにキスするのは当たり前だろ?」


「ち、違う、いや違わないけど違う!!」


ジタバタ暴れるレインを、サタンは横目で流す。


「それじゃ、残された悪魔達のこと頼んだぞ人間の王よ」


「全くお前は面白い奴だな。あぁ、俺に任せろ。人間も悪魔も全部守ってやる!」


「任せた!!」


こうしてエクスの最後の試練に幕が閉じた。
試練の最中、世界中はパニックになっていることを知らずに――

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